足元から固めていこう
今日も書きたくなったので書きました
詰所に通されると木で作られた素朴な椅子へ座るように促されたのでそこへ座る
「とりあえず話を聞かせてくれ」
もっと偉い人でも呼ぶのかと思ったが門番が向かいの椅子に腰かけ話を聞きたがる
もちろん異世界転生をしたらなんて事は言わないで森の中の獲物を追いかけていったら亡骸を見つけた異にしておいた若干の怪しさはあるがそこに触れられることはなかった
そして元の剣の持ち主である「キース」について色々と話を聞いた
彼は優秀な人だったみたいで将来をかなり期待されていた人物だったらしい
それがどうして1人で弱いとはいえ魔物がでるような森になんていたのかと言えば一言で言ってしまえば功を焦っての深追いである
結婚間近だとか親を楽させたいとか友人の代わりにだとか色々なフラグを立てたその上で今より上の地位になる為に自分の命をベットし、そしてその賭けに負けた
(この世界では賭けに負けた人間は命を落とす事になる・・・)
私はこの世界での命の軽さを痛感した
「それが1年と少し前の事か・・・どれだけ強くても、準備をしていても足を滑らせただけで死ぬ事があるのがこの世界であり魔物との戦闘ってもんだ、お嬢さんはこれからそんな世界に足を踏み入れる事になる訳だが・・・今なら引き返せるんだぜ?器量だっていいし文字も読めるくらいには教養がある、お嬢さんが強いのは何となくだがわかる、だがそれでいてどこか緊張感がないというか・・・抜けている所があるというかそんな感じがするんだ、悪いことは言わない、どうしてもというなら傭兵ギルドにはいってそこで認められて軍騎士団や軍に入った方がいいんじゃないか?その方がまだ安全だ」
そういうと門番は自分で言った事に対して何か気づいたようで
「あー・・・1人で死んでいった騎士団の剣を届けてくれた人に言っても何を言ってるんだって感じするよな、だがこれはあくまでも特例中の特例だ、色んな不幸が重なっただけのな」
「心配してくれるのは嬉しいですけど私もやりたい事があるのですいません、話を戻しますけどその剣は私はどうすればいいですか?」
門番がそうか、と寂しそうな顔になり呟く
(うーん、この顔はモテるだろうな、この世界の美醜の条件がまだわからないけど多分元の世界で今の顔を見せられたら落ちる女性は多いだろう)
「よし、わかった、じゃあもうこの話はなしにしてそっちの話をしよう」
その後色々な人に今の話を繰り返し話、剣とドックタグを形見として渡す事で多少の金銭を貰うという事で話に決着がついた
剣自体は使おうとは思ってなかったし売れるといいなくらいで持ってきていたので臨時収入である
最初から金銭を得る為に亡くなった方の近くに転生させてもらった身としては少しモヤっとした感情も芽生えてはいるがそこは心の中で祈りながら目を瞑る事にした
適当な挨拶を済ませると私は詰所を後にし私はまず宿屋を探す事にした
お風呂がありベッドがふかふかなら文句はない
いや、やっぱりご飯は美味しい所がいいかな?
何てことを考えながら町の中心の方へと歩いていく
詰所で何軒かオススメの宿を聞いていて中でもお風呂が自慢(有料)の宿があるというので最初くらいはと思いその宿に飛び込む事にした
そこからはもうすんなりだ
チェックインを済ませ宿泊費とお風呂代を払いお風呂にダッシュ
久しぶりに見るお風呂に我を忘れ飛び込もうと思ったがそこは我慢
壁にもしっかりと「まず身体を洗ってから湯舟にはいってください」と書いてある
これが書かれているという事は識字率は結構高いのかな?でも詰所で文字が読めるのが教養とも言われてたしそうでもないのかな?他の宿より高いから読めるくらいの人しか入りにこれないのかもしれない
考えても答えなんて降ってこない事をダラダラと考えながら旅の垢を落としていく
(それにしても・・・やっぱり10歳以上若返ると肌の質感が全然違うわね・・・)
久しぶりの感覚にニヤけるその顔は傍から見たらちょっとやばい奴だったかもしれない
その後十分にお風呂を堪能しこちらの世界での風呂後の定番と言われている柑橘系の果汁がはいったジュースを一気飲みし、ご飯を食べ部屋に戻りふかふかの布団へ飛び込んだ
(明日はどうしようか、まずはギルドに言って登録して・・・さて、テンプレな展開は巻き起こるのかしら・・・)
かなり疲れていたようだ、横になってからそれだけしか考えていないのにこの部屋からは寝息以外の音は無くなっていた
寝たと思ったらすぐに朝である
本当に夜はあったのだろうかと思ってしまうくらいすぐに朝は来た
(あれだけ疲れてたのに一晩寝たら回復するなんてやっぱり若い身体って凄いわ、これなら出かけられそうだけど・・・一応まだお金もあるしもう1日くらいならここに泊まっていいかな)
そうと決まれば出かける準備だ
あれだけ高い塀が囲っている街だ、別に武装はしなくてもいいだろう
鎧はアイテムボックスの中にいれたまま私は部屋からでると受付に挨拶をして外へ出ようとする
「お客さんそんな格好で街にでるんですか?」
「え?ダメ?」
受付にいる今の私よりちょっと若い女の子にそんな事を言われた
「ダメって訳じゃないですけど・・・」
何もおかしい所はないはずだ、スカートが下着に挟まって後ろから見えているとかそんな事は一切ない、昨日この宿屋に入った時は全身にゴツい鎧を着てたからそう言われたんだろう
「街の外にでないから大丈夫よ、心配してくれてありがとう、今日も泊まるからまたあとでね」
「はい・・・お気をつけて・・・」
だが確かに少しおかしい
この世界は前の世界よりも人が少ないのだが前の世界にいた時よりも視線を感じる
(まあ前の世界は他人と関わりがあまり無かったからってのもあるけど・・・それとも可愛くしすぎたかな?なんて、まあ別に見られるくらいならどうでもいいか)
頭の中にお花畑を作りつつ歩いていく
数分で目的地である冒険者ギルドについた、ちゃんと場所を聞いていた自分に拍手である
西部劇でみるような木で作られた扉を開け中に入ると中にいた人間全員から見られているのではないかというほどの視線を感じる
(受付はどこかな?)
そんな視線は放っておいて私もちらちらと左右を見る
扉からはいって右手の方は壁に紙が色々貼られている
きっとあれは仕事の案内だろう、この作りはよくある話
左手の方は前の世界で妄想していた頃にはある訳がないと思っていた酒場があるようだ
冒険者ギルドで酒場ってよくある話だけどありえないでしょ!私はそう思っていたがこの世界は私の想像を超えていた
だがそんなものよりも驚く光景があった
酒場にあるテーブルを囲みながら座ってる人の頭の上に
「ダンジョンアタック、前衛募集」
や
「オーク狩り、遠距離職のみ、妥協なし」
など例のスキルウインドウと同じ感じに浮かんでいるのである
(臨時募集でパーティ探しする人の為の酒場って事か・・・なるほど)
よく見ると頭にウインドウを出している人のテーブルにはジョッキは置かれていないようだ
ジョッキが置かれているテーブルの所には臨時募集じゃないパーティの誘いや何日か後に冒険にでるからその為の募集といった感じでウインドウがでている
(それならあっても不思議じゃないわね)
納得をした所で本来の目的である受付の元へと歩いていった
「あのすいません、私ここで」
と言ったか言ってないかの所でバタンッと後ろから大きな音が聞こえた
扉を思いっきり蹴り飛ばし男が3人中に入ってきたのだ
そして私に視線を向けると
「おう、姉ちゃん、仕事を頼みにきたのか?その仕事受けてやろうか?報酬はそのまま金でもいいし身体でもいいぞ、今日狩りでたっぷり稼いだから一晩だけじゃなく連日抱いてやってもいいぜ」
私は後ろを振り向く、しかし私の後ろには女性はいない
もう一度前を向く
先ほど変な事を言った男と目があう
どうやらこいつは私に向かってさっきの発言をしたらしい
何を言っているんだ?という顔をしていたら周りから笑いが起きた
「ガハハハハ!おい、悪童の!お前が金を持っているとは思わねぇってよ!」
「そんな綺麗な黒髪をしている女だ!お前がいくら狩りを成功させても買えねぇよ!」
「俺に買わせろー!一晩いくらだー!」
「姉ちゃんそんなに足を見せて誘ってんのか?初めて見る顔だが知らない街だからってサービスしてんのか?サイコーだぜ!」
その場にいた男は笑いそんな男に対して女は冷たい視線を送る
いや、その冷たい視線は私にも向けられているらしい
宿屋を出る時に言われた言葉の意味がやっとわかった
10代に戻れたという喜びと街の中だという安心感でちょっとスカートを巻き上げすぎたらしい
やってしまった・・・冒険者ギルドで絡まれるとしてもその細腕で剣を触れるのか?とか女が冒険者なんかできるのか?とかその手の絡まれ方をされるかな?と思ったがまさかそんな勘違いをされるとは・・・
完全にやらかしである
この空気は多分私が何を言っても変わらないだろう
仕方ない・・・こうなったらやるしかない
この場にいる誰をも黙らす事ができるあの技を
「あー、勘違いしてるようだけど私は身体を売ってる訳でもここに仕事をお願いしに来た訳でもないよ、冒険者として登録しにきたんだ、名前はオーカだ、よろしく」
「あぁん!?そんなナリしてる癖に何言ってるんだ!?」
周りから悪童のと呼ばれていた男は周りから笑われたにもあって完全に頭に血が上っているようだ
ここで「ああ、そうだったんだ、ごめんね」と言ってくれればよかったのだが最初からそんな言葉が返ってくると期待はしていなかった
「格好については好きだからやってるんだけどね、可愛いだろ?まあ私が冒険者になりたくてここまで来たって事を信用できないっていうんなら・・・」
そう言うと私は悪童のと呼ばれている男が小脇に抱えた多分鉄で出来ている兜をひったくった
「てめぇ!なにすん「これで信用できるか?」
ボキッ!
バスケットボールを両手で持つかのように兜を持ち私は力を入れそれを潰した
唖然とする顔、息をのむ音、あたりは静寂に包まれた
そして
「あいつ・・・さっき名前・・・オーガって言ったか?」
これが女オーガと呼ばれる事になっていく最初の所以である
これをしたかったから主人公の名前がすんなり決まったんですねー