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偽女オーガ騒動3

有給なんで書きます!

首を一撃で落とす

文字で言えば簡単であるが実際にやろうとするとこれがかなり難しい


腕力や剣を振るう速度、角度などの力量、切る物質の硬さなど色々と条件をクリアしてようやくできるいわば芸術なのだ


それをオーカはやってのけた


見るからに細腕の女性が、装備自体はよさそうな片手剣を装備しているとはいえ、冬眠していたギガンティックグリズリーの皮を切り裂き、そして太い首の骨を一撃で斬り捨てる


目の前で行われたとはいえなかなか信じられない光景であった


「「「「おおおーーー!」」」


「お嬢ちゃんすげぇな!」


「こんな事やった奴初めて見たぜ!」


「体に一切傷がねぇ!この皮はかなり高値で売れると思うぜ!」


絶賛の嵐だ


「いやいや、夢中になって振り下ろしただけのただのクリティカルですよ」


「運だろうがなんだろうがやってのけたのは事実だ!これは良いもんが見れた、今日の酒は旨いぞ!」


「ばかやろう!お前はいつも旨そうに酒飲んでるじゃねぇか!」


「ちげぇねぇや!」


「「「ガハハハハハ」」」


オーカの周りに冒険者が集まり笑いあう

臨時で集まったとはいえいいメンバーに恵まれているようだ


(あれ、でもあの2人見えないな)


周りを探しても偽女オーガとそのお付きの男が見えない


「さ、お嬢ちゃん、さっさとその熊公を馬車に積んできな」


「あ、でも血抜きとかはどうするんでしたっけ?」


「あー、その辺はあの男がやってくれるらしいぞ、女オーガ様の横にいて馬車に乗ってた奴」


どうやらお付きの男は馬車に残っているらしい


「そうなんですね、じゃあ渡してきます」


オーカは倒したばかりのギガンティックグリズリーの頭を左手で拾い上げる

そして右手で胸元あたりを掴むと・・・


「じゃあ俺が足の方を持つから・・・」


ぐっと力をいれ肩に担ぎあげた

ギガンティックグリズリーは大きいので足が地面についている


「ん?手伝ってくれるんですか?」


「あ・・・いや・・・手伝いはいらなそうだな・・・」


「そうですね、これくらいなら1人で持てますので」


「あ、ああ、転ばないように気をつけてな」


その顔は引きつっていた

周りの冒険者はオーカの見た目と装備からして速さ重視の、某竜を倒すゲームでわかりやすく例えれば戦士ではなく盗賊のような素早さと手数で戦うスタイルという認識だった


それがギガンティックグリズリーの首を一撃で落とすわ、400キロは超えているであろうその体を片手で担ぐわとその力強さに圧倒された


「あの子・・・なんつー怪力だよ・・・女オーガかよ・・・」


そんな言葉が冒険者の口から出たがその声は冬の風にかき消され誰の耳にも届かなかった


オーカが馬車に行くと馬車の中には偽女オーガとお付きの男が2人揃っていた


「あれ、女オーガさんもここにいたんですね」


「あ、ああ、ギガンティックグリズリーの数も大した事なさそうだから他のメンバーに譲ってやろうと思ってな、それに一番襲われやすいのは帰り道だからな」


「そうなんですね、あ、外にギガンティックグリズリー置いておくんで血抜きお願いしますね、ところでこんな場所で血抜きってどうやるんですか?」


「ああ、俺が水属性の魔法のエキスパートだからな、血だって水分だろ、だから魔法で抜くんだよ、どれどれ、さっきのは皮がそんなに硬くなってなかったからな、次はどうだ?」


お付きの男が馬車の奥からこちらに向かってくる

オーカは先ほど地面に置いたギガンティックグリズリーを指差した


「あれです」


「おお!これはでかいな!それに、首以外に傷がない!?これは誰が倒したんだ?」


「私ですよ」


「なに?そうなのか、よくやったな!これなら相当高値で売れるぞ!」


「そうですね、じゃああとよろしくお願いしますね」


オーカはそれだけ言うと馬車に背を向け冒険者の方へと歩き出した


(一応保険かけておくか・・・)


ちらと後ろに目をやると2人で馬車の中にギガンティックグリズリーを運んでいる様子が見えた

そのタイミングでオーカは靴を結んでいるようにうずくまり


「アースクリエイト」


アースクリエイトで馬車の車輪が動かないように土で車輪止めを作っておいた


(なんとなくだけど信用できないのよね・・・)


まあ、これなら時間は稼げるだろう、マックと合流した時に馬車が動かないかどうかだけ意識はしておいてね、とこっそりと念を押した


「やっぱり師匠も怪しいと睨んでるんですか?」


「そうね・・・やっぱり前線に出てこないって言うのがひっかかるわ、確かに今いる人たちならなんとななると思うし帰り道に襲われるかもっていうのもわからなくはないんだけどね・・・」


「そうっすね、ちょっと不自然っすよね」


「まあ、最終的に持ち逃げしないでちゃんと分配すればそれでいいわ、さっさと次のを探しましょ、今度は首を一撃で落とすようなことはしない方がいいかもしれないわね」


「確かに目立ってましたね、でもその方が高く売れるならそうした方がいいんじゃないっすか?」


「うーん、難しい問題ね・・・」


確かに目立つは目立つ、しかしもう目立った後だ、隠す為にわざわざ商品となる部分を傷つけるのも確かに馬鹿らしい


「あ、そうだ!」


オーカはあまり目立たないで尚且つそこまで傷をつけないいい方法を考え付いた


「よし!次の得物、探すわよ!」


「へい!」


オーカが再度あたりの気配を探る

ぼんやりとした気配の為なかなか神経を使う

周りでは他の冒険者達が好き勝手やっている為それも集中できない理由の一因である


「うーん、皆で分配するならこのさい皆にも協力してもらおうかな、おーい、皆集まってー!!」


パーティ同士で大きな臨時パーティを組む事はよくあるが全体が協力して行動する事はなかなかない

連携というものはシビアな所があるので各々のパーティがばらばらに動いていて何かあったら軽く手助けするというのが今の状況だ


ただオーカの言う協力はなにも戦闘面の協力ではない、ギガンティックグリズリーの居場所を全パーティに教えるからとりあえず静かにしていろ、というだけである


「という訳で、私が寝てるギガンティックグリズリーの気配を探るからちょっと待っててくれる?」


「おいおい、お嬢ちゃんが強いのは確かにさっき見させてもらった、だがそんな事できるのか?」


「出来るから言ってるのよ、信じられないなら別にいいわよ?そしたら時間はかかるかもしれないけど全部独占してやるからね」


「まあ、文句を言うな、やみくもに探してもなかなか会敵しない状況だ、その話に乗るのもいいだろう」


文句を言った冒険者と別の冒険者が賛同する

するとさっきの冒険者が


「いや、文句を言った訳じゃねぇけどな・・・見つけられるならこれほどありがたい話はない、だがどうするんだ?全員で戦うのか?」


「その辺はそれぞれで戦った方がいいでしょ、その方が不満でにくいし、お前が横から割り込んだから傷ができたんだー、とか言われたくないでしょ?」


「それは確かに・・・いざこざの元か・・・」


「ああ、さっき私が倒した時に駆け付けようとしてくれたのは嬉しかったわよ、そりゃまあ、私の見た目じゃ不安もあるだろうからね」


そういうと周りの冒険者は苦笑いをした


「いやぁ、まさかこんなに強いとはなぁ」


「佇まいとか装備である程度は強いかな、とは思ってたがまさか1撃でなぁ」


マック以外の冒険者達が一斉に頷く

その時1人の冒険者が手を挙げた


「なあ、俺達は金目的ってより素材目的でこの依頼に志願したんだ、さっきみたいに首を一撃で落とせるような力量も技術も俺達にはない、傷が増えるとその分装備にした時の仕上がりに差が出るから出来るだけ綺麗な物が欲しい、だから俺達の分の熊をお前が倒してくれないか?もちろん報酬は出す、皮の買取の値段の3割でどうだ?」


「ふむ・・・」


オーカが顎に指を付け悩む


「それなら俺達だって頼みてぇ!もちろん値段は同じでいい!金儲けで参加したがあれだけ綺麗に倒せるなら話は別だ、装備に使いてぇ!」


「確かにあれだけ綺麗に素材として使えるならいい装備ができるな、うちの所も頼みます!」


そこにいる全員がオーカに熊の首を一撃で落としてほしいと言い出した


「うーん、まあ私達も素材欲しいしお金も欲しいから構わないけど・・・じゃあ皆協力してくれる?」


「「「「おおーーー!!!」」」


話はまとまった

思わぬ臨時収入にオーカの口角も上がりっぱなしだ


「じゃあとりあえず順番にいくわよ、もちろんダンジョンと違って個体差があるからそこは文句を言わないようにね」


全員がしっかりと頷くのを確認した所でオーカは再度寝ているギガンティックグリズリーの気配を探り出す

今は全員が静かにしてくれているのでやりやすい


目を閉じ耳に手を当てて少しの気配も逃さないようにと集中した

その真剣なオーカに周りの人間はごくりと生唾を飲む

その音ですら煩わしい

周りの冒険者もそれを感じたようで少しの音を出さないようにと協力してくれた


「おい、お前らなにやってんだ!働かないなら報酬はねぇぞ!?」


後ろから大声をかけられた


「はぁ・・・」


オーカは溜息をついた


「お前ら」


お付きの男が口に出した瞬間


「うるせぇぞ!こっちは真剣にやってんだ!」


「そうだそうだ!なにも知らねぇ奴が口出すんじゃねぇ!」


「さっさと馬車に戻れ!音を立てるんじゃねぇぞ!!」


周りの冒険者から怒声が飛んだ

慌てて馬車へと引き返すお付きの男

なんというか見ていて滑稽だった


「さ、これで邪魔はなくなったんで!続きよろしくお願いします!」


オーカは苦笑いした

だが確かに邪魔する奴はいなくなったようだ

オーカはまた集中する


「見つけた、あそこだ」


そこにあるのは木と雪だけだ、だが


「あそこの下で寝てる」


「「「「おぉぉ~」」」」


「じゃあ雪をゆっくりどかしてね、熊が起きたらマックは攻撃ね、斬っちゃだめだよ、斧の面で殴って」


「へいっ!」


「そしたら皆は離れてね、ヘイトがばらけると狙いにくくなるから」


「「「「へいっ!」」」」


もうオーカはマックの口調に対して何も言わなかった

ここまでやってしまった以上隠す必要なんかなさそうだからだ


皆で雪をどかし地面にまでだどりつく、マックがそこを斧を横にして叩きつけた


「グアアアア!!!」


冬眠を邪魔されたギガンティックグリズリーが起こり飛び起きる


「おい、本当にいたぞ」


「マジだったんだ・・・」


「これで俺達も念願のギガンティックグリズリーの装備を手にする事が出来るぞ」


周りにいる冒険者は口々に感想を述べる

だがその間にもマックは攻撃を見極め凌いでいる


「マック!321で右に全力で飛んで!0は言わないわよ!1で飛ぶの!」


「へいっ!」


「3!2!1!」


ギガンティックグリズリーが腕を振り上げた瞬間を狙いオーカが支持をだす

その腕は虚空に振り下ろされる

そこにオーカが片手剣を手にし前にでる


首を落とさずに敵を屠るやり方、それは


「「「「おおおーーーー!!!」」」」


心臓に剣を刺す、だ


オーカは片手剣が心臓を貫いた瞬間にギガンティックグリズリーに蹴りをいれ後ろに飛んだ

心臓を貫かれたからと言ってすぐに死ぬわけではない

反撃をされる可能性だってある


だから離れた


ギガンティックグリズリーは狂ったように暴れまわる

だがそれも束の間の事

3センチほどの傷だけを残しギガンティックグリズリーは息の根を引き取った

思ったより長くなってきてるぞ?

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