偽女オーガ騒動2
今日も書くぜー!
オーカが偽女オーガのクエストを受けた次の日の昼、オーカはしっかりと予定されている時間に集合場所に来ていた
もう季節は冬である、この辺りは雪も降っているのでそろそろギガンティックグリズリーが冬眠に入るギリギリといったところであろうか
冬の日の冒険者はその見た目からでも裕福さや強さが分かると言われている
寒いのに薄着だったら寒さをしのぐ為の装備にお金を使えているという事になるので一つの指標になるのだ
オーカの格好はいつもの鎧姿である
雪の中でも半袖なのは寒さ対策の装備を持っているからである
集まった冒険者の中で薄着なのは半々と言った所だろうか
それだけを考えればこのクエストを受ける冒険者の中でも上位の強さと言える
もちろんこの噂を知っていて寒さ対策の装飾品を武器なんかよりも先に買って見栄を張っている冒険者なんかもいるにはいるので指標の一つにしかならないのだが
中には寒くてもやせ我慢している冒険者なんかもいたりする
そんな中1番の薄着はやはり偽女オーガだろう
今日もチューブトップを着ていて肩とお腹を全面にだしていた
マントは羽織っているがあれだけでは大して寒さもしのげまい
「お前らよく集まった!これから移動を開始する!」
偽女オーガの一声で冒険者達は移動を開始した
全員が徒歩だ、オーカは機馬に乗りたい気持ちを抑えてそれに従う
と思ったら街のはずれで機馬が引いている馬車が合流した
「その馬車は?」
オーカが質問を投げかける
「これだけの人数がいるんだから熊の野郎を何匹も狩るだろ?その熊の死体をそのまま放置していくのか?」
なんて事を言われた
なるほど、マジックボックスよりは機馬が引いた馬車の方が安いのだ
大勢で狩りに行くならそういった気配りはして当然であろう
その馬車には偽女オーガと例の呼びかけをしたお付きの男が搭乗した
それについては誰も文句は言わない、この2人が手配したのだろう、文句を言う道理はない
「どのくらいで目的地に着くんだ?」
他の冒険者から声があがる
「今日は野宿して明日の昼にはつくはずだ」
それを聞いた冒険者達は黙々と歩き始めた
雪の中を歩くのだ、普段より体力を使うのは目に見えている、途中で置き去りにでもされたら報酬がもらえないどころか命だって危ない
しっかりと周りのペースに合わせてついていく事も冒険者には重要な事なのかもしれない
雪の中を歩いて数時間、太陽が沈みかけてきた
道中で何匹か狼に襲われそうになったが流石にベテランぞろいなのか大して問題はなかった
この時点でもはやオーカに対して実力を疑うような視線はなかった
お付きの男も納得しているようだ
「よし、お前ら今日はここで休憩だ、明日は朝早くでるからな、不寝番を決めるぞ」
不寝番はパーティ事にという事でオーカとマックは最初の不寝番に決まった
なんだかんだ女には甘いのかもしれない
もちろんやる事はしっかりやらなければいけないという前提はあるが
雪の中の不寝番はオーカにとっては初めての経験だった
冬は生命の動きを止め、雪は全ての音を吸収する
星空は綺麗だったらこんなにも静かな夜は初めてだった
「ねぇマック、あの人結構装備にはお金かけてるみたいだったね」
他の誰にも聞こえないような声でマックに話しかける
「そう、だな、武器も見た感じではマジック等級に見える」
もちろん偽女オーガの事である
最初の集まりの時に1番最後に登場してさっさと馬車の中に乗ってしまったので詳しくは見てないがなかなか見事な金棒だった
あれを振り回すとなると相当な筋力が必要だろう
「そうね、だとしたら私の見る目がなかったのかな」
「ハルはどうしたいんだ?」
「どうって、なにが?」
「名前、取り戻したいのか?」
「あー、どうだろう、確かに最初はサブウエエの皆が私に着けてくれた名前なのに!って思ってたけどあれだけ名前と見た目がぴったりだからね、別にいいかな、って感じ、まあ、ただ噂ではオーガヒーローを倒した事になってるみたいだけど倒してないからね、代わりにあの人が襲われたらどうしよう、ってちょっと心配かな」
「じゃあ倒しにいきますか?オーガヒーロー」
「ん-、それもどうかな、その時はその時でしょ、運が良ければ私の方に来る、悪ければあっちにいく、それだけだよ」
「そうっすか、じゃあとりあえずこのクエストは普通に終わらせる感じでよさそうっすね」
「ほか、口調!油断したらダメだよ!まあ、そんな感じ、案外ラッキーだよ、マックの防具の素材になりそうだし」
「ハルの防具はどうすんだ?」
「私?私の装備?私のはドロップ運次第かな」
「?どういうことだ?」
「まあ、どうせマックとは旅続けるしそのうちわかるよ、ドロップ運次第でね」
「よくわからないな」
「まあまあ、いい素材を取って良い防具作ろうね、あとは対策系の装備だよねぇ」
オーカは半袖姿だがマックは厚着をしている
このままでは女に貢いでる冒険者と噂をされてしまうかもしれない、早急に2人の装備格差をなんとかする必要がある
「まあ、まさかこんな寒い所まで狩りに来るとは思ってなかったからなぁ・・・」
対策系の装備は色々あるしオーカも常々考えていた
だが欲しいので買います!と言って手に入れられるほど大して普及している訳ではない
恒久的に対策ができるような装備だとやはり高くなる
魔石を消費するカイロのようなものもあるがそれだとやはり効果は薄い
「どの辺だったらそういった装備いっぱい売ってると思う?」
「うーん、やっぱり王都か・・・あるいはブラックマーケットがある所かな、中でも商人の街って呼ばれてるサーカオは裏表合わせたら手に入らないものはないって言われてるくらいだ」
「じゃあ次の旅はそこに向けてかな、道中受けれそうな依頼探していきましょ」
「ああ、そうしよう」
装備の話と次に行く街の話をしていると交代する時間が来たようだ
次の冒険者に声をかけオーカとマックは自分たちのテントにはいる
明日は早いという事なのでさっさと眠る事にした
そして次の日の朝
冒険者達は朝から元気いっぱいだ
まだ寝ていたいとか下が硬いと寝た気がしないとかなんとか口にはしているが行動は早い
本当にベテランぞろいなのだろう
ここまでベテランなのに個別に狩りにいかずに集団を選んだとなるとよっぽど邪魔する奴が多いのだろう
だがそれはそれだけギガンティックグリズリーの皮が高価だという意味なのかもしれない
今日も偽女オーガは朝に少しだけ顔を出しただけですぐに馬車に乗り込んだ
もしかしたら寒さ対策の装備は低級でそこまで寒さに強くないのかもしれない
いや、あんだけお腹までだしていたらそりゃ寒いか
「そういや機馬って雪道もいけるんだね」
「そうみたいだな」
「何か特別なオプションとかあるのかな?」
「いや、それは聞いてないっす、いや、聞いてないな」
「あいつに相談してみようかな」
「2時間コース確定だな」
道中話をしているのはオーカ達くらいなものだ
方や疲れるという事を知らない化け物で方やその化け物に鍛えられた化け物に足を踏み入れたものである、体力が違うのだ
ここまで来るとオーカ達に向けられている視線は信頼と期待が入り混じるようになってきていた
「よし、この辺りだ、この辺りでギガンティックグリズリーの目撃情報が良く見られる、複数で当たってもいいがなるべく綺麗に倒せ、皮を傷つけると値段が下がるからな。あと火属性の魔法は使うなよ、皮が燃える」
「うーん、なるほど、倒し方にも指定が入る訳ね、慣れないけど片手剣で頑張ってみますか!」
とりあえずオーカは周囲の気配を探ってみた
だが周りが雪の状態でやるのは初めてなのでどうにもうまくいかない
いるようないないような、そんな気配しか掴めない
「うーん・・・この辺にいる気がするんだけど・・・」
だがそこには雪しかない
いくら探してもギガンティックグリズリーの影は見えない
「おかしいなぁ」
そう考えている時いきなりぼんやりと感じていた気配が急に濃くなった
バッ!とそちらの方へ視線を向けてみると他の冒険者がギガンティックグリズリーと戦っているのが見えた
(やっぱりいるんだ、つまり相手は私のスキルで強化された感覚くらいじゃちゃんとはわからないくらいうまく隠れている・・・まるで死んでるような気配・・・あっ!)
オーカの顔が急に明るくなる
そして若干の気配を感じている場所に向かって深々と剣を刺してみる振りをしながらアースクリエイトを発動させた
「やっぱり!」
なにか硬いものに当たった感覚がする
だがそれは石などの硬さではなく例えるなら硬いゴムのようなものに触った時のような感覚だ
「いたのか?」
「ええ、まだ冬眠してないのもいるけどもうしっかりと餌を食べて冬眠しているのもいるのよ、寝ているとなるとそりゃ気配も感じなるなるはずだわ」
しっかりと食べ冬眠を始めたという事は皮がしっかり硬くなっている証拠である
起きているギガンティックグリズリーは湧いた直後の可能性だってある
それを考えたら寝ているギガンティックグリズリーを倒すのは理に適っている
(とすればあとはどうやってこの熊を外に出すかね、ん-、まああとは周りに合わせて2,3体狩ればいいかな、それだけ倒せばマック1人分の装備には使えるでしょ、最悪足りなそうなら買い取ってもいいし)
「マック、ここを思いっきり攻撃して、地中で寝てるから」
「へい!わかりました!」
完全に口調が戻っているが周りには聞かれていないようだ
なら問題ないか
ズドーン!
マックが薪割を大きく振りかぶり地面に突き立てた
その衝撃は安眠していたギガンティックグリズリーを起こすには十分だったようだ
寝ているのを急に起こされたギガンティックグリズリーは完全に怒り目の前にいたマックに襲い掛かる
キーン!
ギガンティックグリズリーの爪を受け止めたのにまるで鉄と鉄がぶつかったような音がする
どうやら爪もなにかの素材に使えそうなくらいだ
怒ったギガンティックグリズリーは狂ったようにマックに連続攻撃をしかける
だがそれもオーカとの2か月の訓練を終えたマックなら対処できるレベルである
もちろん命がけなのでマックは真剣そのもの、いい訓練になりそうだからもう少し続けさせてもいいかな、とオーカは思ったのだが周りの冒険者達が助け舟を出そうとこちらに向かってくる姿も見える
今回は全員で戦うというのがルールなのだ
それなら見てるだけでいるのはまずかろう
マックに向けなおも爪を振り続けるギガンティックグリズリー
怒りでオーカの事など見えていないようだ
オーカは右手に持っている片手剣を構える
足に力を入れぐっと駆け寄る
どうにも細く見える片手剣に力をどれだけ込めて平気なのかもわからない
だがちゃんとした攻撃をしなければ周りが納得しないだろう
オーカはギガンティックグリズリーの首目掛けて片手剣を振り下ろした
スパッ
見事な一撃にギガンティックグリズリーの首が落ちる
そして遅れて倒れこむ身体
周りの冒険者達の足が止まる
その顔は驚きの顔をしていた
「あれ?私もしかしてなんか・・・いや、このセリフはやめておこうかな」
明日も書くぜー!




