私の名前は
作者にネーミングセンスはない、いいね?
「行くわよ・・・薙ぎ払い丸・・・」
手にした武器は黒一色のハルバード
もらった時にお酒がはいった神様がかっこいい横文字の名前を自慢げに語っていたような気もするがそんなものは覚えていない、ならばと自分で考えてみたがこれで精いっぱいであった
黒一色のハルバードに脅威を感じたのか生き残った1匹のゴブリンは腰がひけている
多分今大声を出したら腰を抜かすか一目散に逃げ出すかのどちらかだろう
右足に力を籠め一気に距離を詰める
ゴブリンはたまらずといった感じで剣を前に出すがその勢いは最初に比べると天と地の差だ
完全に目が怯えている
その目を見て若干心が折れそうになる
(でもダメ、私はこの世界で行きていくんだ)
振り下ろされた薙ぎ払い丸はゴブリンの身体をいともたやすく2つに分けた
「う・・・うぷっ・・・臭い・・・」
どうやら近づきすぎたようでゴブリンの返り血をもろに浴びてしまった
また吐き気が胃袋を殴りだす
たまらず鎧を付けたまま川へ飛び込んだ
「ああ・・・ひどい臭い・・・これからはもっと距離とかそういうのも考えて戦わないとダメみたい・・・」
この場合距離がどうのというよりただ単にやりすぎただけという感じが否めないがなにせ魔物相手の初陣である、お粗末な結果になるのも仕方ないだろう
「鎧外さないと・・・」
そう呟き念じると身体がすっと軽くなる
このアイテムボックスは出す時は袋の中に手を入れないと出せないのだがしまう時は念じるだけで中に収納できるようになっている
「ふふ・・・可愛いと思ったんだけどそれがひどい顔になったわね」
神様に年齢を若くし外見を少々いじってもらい無邪気にはしゃいでいた時とは大違いだ
まだこの世界にきて1時間も経っていないというのに痩せてしまったかもしれない
顔色も青いというよりもはや灰色か茶色にでもなるんじゃないかというくらいに悪くなっている
それでも・・・
「まあ、胸のサイズはちょっとおまけしてもらえたのはよかったかな」
無理やりにでも明るい事を考えて精神を保とうとする
「さて血も落ちた事だし多分匂いが原因でバレたと思うしさっさとここを何とかして人がいる方を目指すとしますか」
川からあがり無属性に分類される濡れた物を乾かしていく魔法で水気をなくす
そしてまた襲われるとも限らないので鎧を着込んだ
喉が渇いたので水を飲もうとしたがこれから待っている作業の事を考えて水を飲む事を後回しにする
そう、臭い臭いゴブリンの亡骸から魔石を回収しないといけないのだ
『魔王が作り出した魔物には必ず魔石がある、大体心臓の近くだからどんな魔物でも胸あたりだろう、大きさは魔物によってバラバラだ、こっちの世界では魔石を燃料に使ったりもしているがなんとか再利用しようとしている人間やエルフもいるみたいだ、だが魔動力というものを認識していないで魔物も魔力を使っていると考えている以上無理だろうな、2つの力は似通ってはいるが絶対に交わらない相反する存在だ、同じように使おうとする事自体が間違っている』
私は匂いをなるべく嗅がないようにしながらゴブリンの胸にナイフをいれ魔石を探した
途中何度も吐きそうになっていたが最後に倒したゴブリンの時が1番ひどかった
「ああ・・・終わった・・・やっと終わったよぉ・・・」
ゴブリンの亡骸を集め地属性の魔法で穴を掘り埋めた
血痕の上にも土をかければ匂いは治まるだろう
「これで一応この世界で生きていく上での戦闘のチュートリアルは終了って所ね、じゃあ次のチュートリアルへ進みましょう、生きていく為の土台作りを!」
森の中を駆け巡りはしたが人がいる場所についてはちゃんと把握している
その辺は酔った頭でもしっかりと神様に聞いてきた
川の話もその時に聞いていたので狼を探しながら川を見つけた時は一気に目標に近づいていた事になる
川下の方へまっすぐ行けば大きな塀に囲まれた街がある
魔物の住処に近いがために堅牢にせざるをえなかった街が
どれくらい歩いただろうか、やはり長年生きている存在と精々100年しか生きない人間のちょっとと言うのは同じ言葉でも意味合いが変わってくるらしい
川の流れに従いながら歩いているのに景色は全く変わらずまだまだ森が続いている
「神様って・・・スケールがでっかいんだろうな・・・」
結局森を抜け大きな塀で囲まれた街につくまでに2日ほどかかりその頃には戦闘も少し慣れてきていた
「せめて・・・もうちょっとご飯を持ってきてればよかったわ・・・ちょっとって言葉じゃなくてちゃんと数字で距離を聞いておくべきだった!!」
袋の中には酒盛りで余った料理をいれてきたがそれも残し少なくなってきていた
終わりが見えない恐怖からなるべく温存しながら食べていたのでお腹がすいている
大きな塀を見つけた瞬間にお腹の虫が鳴ったのはきっとその恐怖感から解放された安堵もあっての事だろう
緊張しながら硬い地面の上で寝ていたので疲れはたまる一方だ
この辺の事にも慣れていかなければこの世界でたくましく生きていく事は難しいだろう
疲れた体に鞭をいれ街の入り口を目指す
すると大きな塀に似合う大きな扉が解放されている場所を見つけた
(まずは宿を探して・・・お風呂入りたいな、この世界は一応お風呂の文化はあるみたいだし、入らない人も結構いるみたいだけど娯楽として育っているっていう話だし・・・あとは柔らかい布団で眠りたい!!)
その一心で私は扉を目指す
途中まで杖代わりに使っていた薙ぎ払い丸は流石に手に持っていたら不味いかと思い閉まっている
よくよく周りを見れば槍だのを持って歩いている人もいるのだがここに来るまで人に会わなかったのでどう思われるかわからないから念の為だ
(そういえば大体こういう時って魔物に襲われてる女性を助けたりするのがベタな流れだけどそういうのはなかったわね、私が女だからかしら?男性を助けて始まる恋なんてなかなか見ないし仕方ないか)
ちょっと前まではそんなことを考える余裕もなかったのだがゴールが見えると元気づくものだ
これから何をしようか、今まで見てきたゲームや小説等を思い浮かべながら歩いてようやく私は扉の目の前についた
「お嬢さん見ない顔だな、この街は門戸は開かれてはいるが誰でも自由にはいれるって訳じゃない、話を聞かせてもらっていいかな?何目的でここに来たとかあるなら話してくれないか」
(うん、ここはテンプレだ!)
「初めまして、私の名前は桜花、オーカよ、15歳になったから村から出てきた、お父さんもお母さんもそうしてきたらしいわ、ここは大きな街だから冒険者のギルドがあると思ってきたんだけどないなら1泊くらいして出ていくつもりよ」
本当はここに冒険者ギルドがある事は知っている
転生先を決める時に神様に出した条件の中にはいっているからだ
「そうかい、死にたがりには見えないけどな・・・村から出てきたって言ったけどなにか身分を証明するようなものはあるのかい?」
なんとなくだが私は疑われている気がした
門番という仕事なのだから当然と言えば当然なのだが目の前に立っている門番は私が近づいてきた時から少しも油断していないし武器を持つ手の力を緩めてもいない
「私自身を証明するものとかはないけど・・・そういえばこれを森の中で見つけたんだけど見覚えある?」
ちなみにこの世界に戸籍やマイナンバーカード的なものがあるのかを神様に聞いた所貴族にはあるが流石にマイナンバーカードはないと笑われた
冒険者ギルドや傭兵ギルド、建築ギルドなどに登録すると作られるものはあるらしい
「そうか、田舎から出てきたばっかりか・・・で、何を見つけたって?ドッグタグか・・・誰のだ・・・これは!?」
「ちょっと擦れてるけどキースさん?って人のみたい」
「おお、お嬢さんは文字が読めるのか、ってそんな事はどうでもいい、このドッグタグは俺たちの上司に当たる騎士団のものだ、しかもこのキースって御仁は結構有名な人でな、これをどこで見つけた?」
私は先ほどまで自分がいた森を指さす
「そうか・・・やはり亡くなっていたか・・・他にもなにか持ち物とかは持ってきてないか?いや、死んだ人間の物は見つけた本人の物になるというのはわかっている、だがもっとなにかあると残された家族が喜ぶんだが」
最初に出会った亡骸はどうやら結構有名でそれなりに身分があった人であったらしい、どおりであの剣は朽ちずに綺麗なままで残っていたのだろう
だがまずい、あるにはあるが袋の中だ
しかも見た目的に袋は剣が入るほどの大きさではない
だが目の前いる門番からはさっきの緊張を感じられない、ここは恩を売っておくべきか・・・
「あの・・・誰にも言わないって約束してくれるなら・・・」
「あ、ああ・・・わかった、約束する」
私はその言葉を聞き袋に手を入れる
その行動が門番に疑問と緊張が芽生えされたのがわかった
「これ、キースさんの剣です」
「・・・あっ!言わないでほしいって言ったのは袋の事か!」
「声が大きすぎます!」
「すまない、確かにそうだな、お嬢さんみたいな若い子が持ってるのが不思議なくらい高価なものだもんな」
「旅に出る選別に父と母がくれたんです」
「そうか・・・ちょっとこの剣抜いてみてもいいかい?」
私はこくんと頷いて了承した
「ああ、この剣は確かに騎士団のものだ、そして鞘から抜いた時にあふれるこの魔力はキースさんが使っていたものだ!」
そんな話をしていると周りから遠巻きに注目されている気配がした
(しまった、こんなに人がいる所でアイテムボックスから剣だしちゃったのか・・・)
「ちょっと話があるから詰所に来てくれないか、詳しい話を聞きたい、ああ、その代わり街に入る入場料は免除するしこの剣の事で謝礼金がでるかもしれない、来てくれるかい、お嬢さん」
「行くのは構わないですけど私の名前、オーカです」
「ああ、じゃあこっちに来てくれ、お嬢さん!」
この門番女好きキャラか?この世界じゃ刃物をもっていても不思議じゃないし背中から刺されないといいね、そんな事を考えながらオーカは前を歩いていく門番についていった
主人公の名前はなんとかひねり出せた、あとはライブ感