女オーガ騒動
3連休最後なので書きました
大剣デュラハンは大剣を構えオーカの方へと直進してくる
お互いが間合いにはいる大剣デュラハンの振り下ろしをオーカが薙ぎ払い丸で受ける
ガキィン!
金属同士がぶつかる甲高い音
今までの片手剣の時と比べその衝撃ははるかに増していた
だが
「うん、受けれないほどじゃなさそう、これなら問題ないかな」
武器が大きいので威力は強い、だがその分大振りで動きが読みやすい
そしてその攻撃は受けきる事が出来る、これなら対処はできるだろう
一つだけ懸念があるとすればそれはスキルだ
大剣デュラハンが盾を持ってない以上シールドバッシュは使ってこないだろう
となるとやはり使ってくるスキルは大剣での攻撃力を上げる為のスキルだろう
なんにせよ早めに倒した方がよさそうだ
大剣をはじき返され少し姿勢を崩した大剣デュラハンだったらすぐに体勢を立て直し大剣を構えた
その攻撃は鋭い
避けるべき攻撃、受けるべき攻撃を見極めないとやられる可能性は十分にある
何度目かの攻撃のあとオーカは大剣デュラハンの攻撃をまた弾き返した
大剣デュラハンの足元がぐらつく、ここが攻撃時と考えたオーカは薙ぎ払い丸を振り上げる
しかし、その時大剣デュラハンの身体から赤い光が発せられた
ガアァン!!
大剣と薙ぎ払い丸がぶつかる
さっきの音よりも更に大きくなる
今度はオーカの攻撃が止められた
体勢を崩されるところまでは行かなかったが大剣に込められている力は強くなっていて弾き返す事はできなくなっている
「強化スキルの方だったみたいね」
オーカが歯を食いしばりながら言う
赤い光はスキルを発動したからでたものだろう
大剣デュラハンのスキルは多分時間制限などがあるタイプのスキルなのでこのままいけばきっと切れるだろう
オーカのスキルは常時発動型なので切れる心配はない
だがこれで終わりという保証もないので早く倒すに越したことはない
大剣と薙ぎ払い丸で押し合う1人と1体の魔物
オーカが全身を使いなんとか大剣デュラハンを押す事に成功する
だがオーカは最後に感じ取った、大剣デュラハンが最後に力を抜き自分から後ろに飛びのいた事を
(くる!)
オーカの力を使いながら自ら後ろに飛んだ大剣デュラハンは大剣の切っ先をオーカに向けた
その切っ先に魔動力が集まっているのが見えた
そして大剣デュラハンはオーカの心臓を狙い駆けだした
大剣デュラハンはスキル名を叫びながら攻撃をしたりはしてこなかったがこれはスキルによる攻撃である
スキル名は「スティング」
簡単に言えば手にした武器で突きを行うスキル、だがその攻撃力や速さはスキルを使わずに同じように攻撃をした時は格段に上昇している
刺突剣や槍なんかを持っている冒険者や魔物が良く使うスキルだがまさか大剣デュラハンが使うとはオーカは思ってもいなかった
目の前に迫る大剣、オーカはそこから視線を外さなかった
激しく薙ぎ払い丸を振るう必要もその突きを止める必要もない
その切っ先に合わせ、力を込める
真っすぐに進もうとする力は横から来る力には弱いものだ
横からぐっと力を入れると大剣の切っ先は少しずつずれていく
完全に切っ先がオーカの身体の外を向いた時オーカは薙ぎ払い丸を手元に引きよせた後に下から上に切り上げるように振るいすれ違う大剣デュラハンの左足を切った
突撃してきた所に足に攻撃をされたのだ
大剣デュラハンの身体は一瞬宙に浮きそして倒れこむ
「うおおおおおお!!!」
倒れた無防備な背中にマックが自身の武器、両手斧「薪割」にて攻撃を加える
しっかりと体重の乗せられた一撃を背中に受けた大剣デュラハンの手足がなんがか苦しそうにしている
だがここで見逃すわけにはいかない
オーカは薙ぎ払い丸の柄の部分を両手で握った
そしてそれを力の限り最上段から振り下ろす
いつも以上に遠心力の加わったその力は大剣デュラハンの活動を停止させるには十分な力があった
「ふー・・・ナイスタイミングね、マック」
「へいっ!師匠の攻撃があってこそっす」
「うーん、流石に魔法攻撃をしてくるガーゴイルは私がやってるけどデュアハンくらいだったらマックもソロで出来るかもしれないわね」
「いやー、どうなんすかね、俺は師匠みたいに相手の攻撃を捌くのが上手じゃないんで」
「ん-、そうか、じゃあ今度からそのあたりの特訓もうちょっと強化していきましょうか」
「へいっ!お願いします!」
「あ、そうだ、ドロップはどうだったかな?」
オーカが大剣デュラハンの居た場所に目を向ける
するとそこには
「ん-、片手剣か、なんだ大剣が落ちると思ったのに」
「そうっすね、ちょっと残念っすね」
「まあ、とりあえず確認か」
オーカが地面に落ちている片手剣を拾い上げる
武器のステータスを確認するとどうやらマジック階級の片手剣のようだ
「マジック階級みたいだけど、どうする?いる?」
「俺は剣は使わないっすね」
「そうよね、私も解体の時にナイフを使うくらいなのよね・・・まあ、いいか、片手剣は世界で最も売れてる武器と言っても過言ではないわ、マジック階級なら結構高く売れるでしょ」
「そうっすね、じゃあアイアンゴーレム狩り再開しますか」
それから2週間後、やっとの思いでアイアンゴーレムの魔心珠を手に入れる
あれからもデュラハンを狩り続けたが再度レア種が現れる事はなく、武器のドロップすらなかった
「やっとでたわね、アイアンゴーレムの魔心珠」
「そうっすね!おめでとうございます!」
「でもいいの?私が使っちゃって」
「いいんすよ、その為に籠ってたんじゃないっすか」
「マックにも防御力は必要だと思うんだけどね」
「まあ、そこは否定しないっす、でも俺の理想の魔心珠セットには防御力系ははいってないんで!」
「それもどうかと思うけどね、まあありがたく使わせてもらうわ」
そしてオーカはアイアンゴーレムの魔心珠をセットする
セットした途端なんだか肌が硬くなったような印象を受けた
でも触ってみても特に違いを感じ取る事ができない
「本当にこれで防御力あがってるのかしらね・・・まあ、ステータスを見ればあがってるんだろうけど・・・よし、とりあえずさっさと帰りましょ、美味しいもの食べたいわ」
「へいっ!そうしましょう!」
オーカ達はビクドン遺跡ダンジョンの7階層に別れを告げた
食堂でご飯を食べている時にいつものメンバーに声をかけられたのでやっと手に入ったからそろそろここを去る事を伝えた
「お!やっとでなすったか!いやー、あんたらも7階層に籠ってもうすぐ3か月になろうって所だったよな、実力があるのに運がないって皆嘆いてたよ、いやー、でも出てよかったよかった」
「そうだな、他の奴らならいざ知らずあんたらに出たなら俺らも嬉しいよ」
そういって周りの冒険者達は歓迎してくれた
全然ドロップがでないと嘆いてるオーカ達の事をいつの頃からか2,3階層にいる冒険者達は応援していたのだ
「ん-、やっぱり私達運悪いのかしらね、マックが持ってるこの斧もドロップさせるのに1か月かかったんですよ」
「おー、そうなのか、だが根性はあるな、まあ、今日は俺達の奢りだ!酒は2人とも飲みそうな顔をしてるが飲んでる所を見た事がないな・・・よし、腹一杯食ってくれ!なぁ!」
「あはは、ありがとうございます、じゃあお言葉に甘えて!」
オーカとマックはいつも以上に食べた
言い食べっぷりだったという事で言い出しっぺの冒険者が周りにいる冒険者達にカンパを募りそれを食事代にあててくれた
そして最後に飲まなくてもいいから乾杯の音頭だけ、とオーカが頼まれた
「えー、なんか恥ずかしいですね、えっと今回私達は運悪く目的のものを入手するのに2か月以上かかってしまいました!でもやっとの思いで念願の物を手に入れ、ビクドン山から帰る事ができます!今まで仲良くしてくれてありがとうございました!皆さんも謎の機械が早く手に入れられるように私も願っています!大丈夫です!謎の機械はレアな事には変わりないけどドロップ率がそんなに悪いものではありません!現に私達は何個かドロップしています!皆さんもきっとドロップさせる事が出来るはずです!それでは本当に今までありがとうございました!カンパーイ!」
「カンパーイ!」
「「「「・・・か、カンパーイ・・・?」」」」
乾杯にタイミングがあったのはマックだけだった
他の冒険者達とはなんだか少しタイミングが合わなかった
オーカはこれに少しだけあれ?と思ったが自分が間違えたのかな、と思った
乾杯の音頭なんてそれほど経験をした記憶がない
話が長かったのか短かったのか、それともありがとうと2回言ったからダメだったのか、そんな事を考えていた
オーカとマックは今日だけはと禁酒を破り1杯だけ酒を飲んだ
「ぷはー!じゃあ私達はこれで行きますね!ご飯ごちそうさまでした!また会いましょう!それじゃあ!」
そう言って食堂を後にした
冒険者達は口々に別れの挨拶をしてくれる、オーカはそれが嬉しかった
2か月半ほど籠ったのは少しきつかったけどそれももはやいい思い出になった
「さあ、謎の機械も手に入ったしアイアンゴーレムのお陰で鉄も手に入った、あとはこの鉄を鋼鉄に変えれば準備オッケーよ!」
「じゃあとりあえず鍛冶場がある街に行く感じっすかね」
「うーん、トヨタックがある街だって鍛冶場くらいはあると思うからそこでいいかなとも思うけど
なんなら鋼鉄を直接ドロップする敵を倒しに行くのでもいいわよ」
「それもありますけどどうなんです?強さ的には」
「あいつに聞いたけど別に変らないみたい」
「じゃあトヨタックに向かってよさそうっすね」
「それもそうね、じゃあアイツチの街までいきましょう!」
オーカ達が次の目的地を決めた一方その頃ビクドン山ダンジョン付近にあるとある食堂ではある騒ぎが起きていた
「おい!どういう事だ!?」
「あの2人は謎の機械が欲しくてここに来てたんじゃないのか!?」
詰められているのはオーカ達に奢ってやろうと最初に言った冒険者だ
「いや、そうだとばかり思っていたが・・・というかお前らだってそう思って疑ってなかっただろう!?なんで俺だけ攻められなきゃいけないんだ!」
「俺達は謎の機械を何個も持ってる奴に飯を奢ったって事かよ!」
「俺なんか1か月前からここで狩りをしてるぞ!」
「俺だってそうだ!全然でないから最近飯の量だって減らしてるんだぞ!」
「お前が奢ってやろうなんて言わなかったら金は出さなかった!」
あーだのこーだの騒いでる、多分もうすぐ殴り合いが始まるだろう
だが冒険者達は本気でそんな事を言っているのだろうか?
いや、それはきっと違う
なんだかんだと騒いでいるが皆笑顔だった
もちろん羨ましいと思う気持ちはここにいる冒険者達の全員が持っているだろう
だがそれよりもオーカ達が目的のアイテムをドロップさせたというのが嬉しかったのだ
だがそれはそれである、とりあえず殴りたいのだ、これは嫉妬である!
「しかし7階層に2か月半も籠ってなにを狙っていたんだ?」
ぽつりと1人の冒険者が言う
その言葉で全員が喧嘩をやめた
そこからは少しの間議論が続き・・・そしてまた殴り合いが始まる
そして最後には
「あの2人にカンパーイ!」
「「「カンパーイ!」」」
酒で占める、この日明け方までこの騒ぎが収まる事はなかった
もっと休みたい




