帰路、そして
3連休最後なので書きました
その場にとどまり続ける事は危険だ
ウッドゴーレムの根が地面から襲い掛かってくる
オーカとマックは動き続けた
増え続ける根
時間をかければかけるだけ増えていくだろう
徐々にウッドゴーレムとの距離が離れていく
それだけ攻撃が苛烈なのだ地面から生えては潜り生えては潜る
その根を切り落とした所で本体へのダメージはないだろう
元来ゴーレムと言うものは核になっている魔石を壊すか身体から取り除くかしなければ動きを止める事はないのだ
「攻撃頻度が高すぎるわね!」
「そうっすね、こっちの攻撃は前々できる気配がないっす」
「めんどくさいわね、倒すだけなら胸らへんにストーンバレットを連打すればなんとかなるかもしれないってのに」
オーカとマックは喋りながらも手も足も止める事はない
止めたらさらに劣勢に追い込まれるからだ
少しでも根を減らす為に斬り、攻撃を避ける為に動き続ける
(まずいわね・・・このままじゃジリ貧・・・)
オーカがそう思った時ふと1つの事に気が付いた
「ねぇ、マック!ウッドゴーレムってあの場所から動いた記憶ある?」
「え?あー、いや、ないっす、動いてないっす!」
つまりウッドゴーレムは動くことをやめ根による攻撃だけにシフトしたのである
腕がまた生えたら動き回るだろうがそれはもう少し時間がかかるようだ
「なんだ、簡単な事じゃない、マック!私がウッドゴーレムの根っこを止めるから胸に所にあるだろう魔石を探して壊しなさい!壊したらお金にならないけど今はそれどころじゃないわ!」
「へいっ!じゃあ突っ込みます!」
マックの言葉に全幅の信頼を感じる
オーカはそれが嬉しかった
そしてそれにはしっかりと答えなければならないとも感じた
薙ぎ払い丸をしまいオーカもウッドゴーレムへと走る
全ての根が地面に潜りオーカを狙おうとしたその瞬間
オーカは両手を地面につけた
「アースクリエイト!!」
オーカは地面を硬くした
それにより根が自由に動けないようにしたのだ
遠くからやるとどうしても魔法の出力が落ちる、だからなるべく近づいたのだ
「ふん・・・うぎぎぎ・・・結構強い、そんなには持たないわ!マック!お願い!」
「へいっ!」
硬くなった地面の中でも自由に動き回ろうと根が暴れている
オーカはなんとかそれを抑え込んでいた
だが自然の力とでもいうのだろうかウッドゴーレムの力は強く押さえつけるの事ですらギリギリだ
「うぅぅ・・・はやくぅ!!」
オーカが必死に押さえつけている
マックがウッドゴーレムに近づいた
相手は動かない、そして攻撃手段も封じられている
今ならいける
防御を捨てた渾身の一撃を叩きこむためにマックは手に持った両手斧を振り上げた
「うおおおお!!!!」
狙うはウッドゴーレムの胴体
この世界に存在している魔物はすべて魔王が創造したもの、なので大体魔石の場所は同じである
この世にいる冒険者なら大体その場所はわかっている
そこを目掛けて両手斧を振り下ろす
だがウッドゴーレムも命の危機を感じているようだ
身体から鋭く尖った枝を生やしマックへと攻撃を仕掛けている
「やらせる訳ないでしょうが!」
オーカが地面を操る
土でできた無数の手がその枝を叩き折る
そしてマックの攻撃がウッドゴーレムへと命中する
キィィィーン
マックが振り下ろした斧が木に当たった時に鳴った音とは完全に別の音を立てる
根の動きが完全に止まったのをオーカは感じた
「ナイス!1発でそこまで深く切り込みを入れるなんてやるじゃない!」
「ミノタウロスの魔心珠と斧攻撃補正のスキルのお陰っす!」
「よし、じゃあ花をもらってさっさと帰るわよ」
「へいっ!」
動いてないウッドゴーレムの頭から花を採るのは簡単だ
一応根っこまでついていた方がいいだろうという事でウッドゴーレムの頭が下についた状態で採取しておいた
これならすぐに悪くなるという事もないだろう
「師匠、あとは何か持っていきますか?」
「ん-・・・魔石は壊しちゃったしね、特にないかしら・・・一応両腕だけもらっておきましょうかね、ちょっと持ってくるわ」
「へいっ!フェアリーはどうします?」
「あー、全然気にしないで攻撃してるから何も残ってないと思うわ」
「わかりました、じゃあウッドゴーレムの腕だけ持って帰りましょう」
マックとオーカはさっさと切り落とした腕を回収し森の方へと向かう
機馬を埋めた場所までいってそれに乗り込みさっさとサブウエエの街へと走り出した
そしてそれから二日目の夜
ようやく森を抜けセブンレブンの砦が見えるくらいまでやってきた
「あー、やっと砦が見えたわね、じゃあちゃんと旗立てないと」
オーカは機馬に緊急クエスト中を知らせる旗を立てた
「ん-、もう少しで終わるとなると気分がいいわね!」
機馬の上で軽く伸びをする
「っ!」
オーカはその時サブウエエの街の格納庫から出た時に感じた違和感を思い出した
いや、思い出したというよりは同じ違和感を感じたのだ
(間違いないわ、見られている・・・それもあの鳥に!)
見られている事を気付いているとバレないようにオーカは伸びを続け不自然な事がないように努めた
(でもなんで・・・?なんであの鳥からは魔動力が見えるの!?)
オーカが伸びをした時に1羽の鳥が木に止まっていた
そこまでは自然、なにも問題がない
だが魔動力の有無を視認できるようになったオーカからしたらその鳥は不自然の塊だった
鳥型の魔物はいる、それは事実
だがその魔物がたった1人の冒険者をじっと見つめてその場で動かずにいるか?
今この場所で初めて見た鳥だったらそれもあるかもしれない
だがその鳥はサブウエエの街の中で見かけたあの時の鳥なのだ
魔物が人が住んでいる街に入ったとしてそれがずっとじっとしているか?
そんな事はありえない
つまり考えられる事は1つ、その鳥はどこかの誰かに操られているのだ
(あの鳥は私達を見ている・・・それを感じたのはこの依頼を受けてから・・・依頼主は病気の娘を治したいからという目的でこの花を求めている・・・)
そこに思い出されるスミスの言葉
(病気じゃない・・・これはその子は完全に呪われている!この花を届けただけじゃ解決にならない!)
あくまでもオーカは感情を表情には出さない
盗み見がバレる事で依頼主の娘の呪いが解けたとしても呪いをかけた張本人を逃がしては意味がないのだ
何が目的なのかはわからないが同じ事が別の人相手に繰り返されるだけだろう
(でも目的はなに・・・?というか呪いをかけたのはどっちだ・・・?)
呪いをかけたのはどちらなのか
人間か?それとも魔物か?
どちらにしても大きな問題だ
前者なら人間の中に魔動力を操る存在がいると言う事、これはそのうち人間を相手にする可能性があるという事だ
後者も後者で問題だ、そこまで知恵が回る魔物が人間の近くにいる事になる、今は遊んでいる所なのか?本気を出せばどの程度の規模で呪いをばらまけるのか?
(まずいわね・・・なんとかこの話、早めに片付けた方がよさそうね)
頭の中で考えがぐるぐると駆け抜けていく
今後オーカはどう動くべきなのか、しかしいくら考えても答えがでるはずもない
「っしっ!」
オーカは両手を力強く頬に当てる
「師匠!?どうしたんすか?」
「ん、やっと帰れると思ったら嬉しくてね、ちょっと気が抜けてたから入れ直しただけよ」
「気を抜いて落馬しないようにしてくださいよ!」
「あはは!そん時は拾ってね!」
「ははは!わかってまさ!」
今はマックには言えない、見られているだけかもしれないがそれに確信が持てないからだ
相手が読唇術を持っていたらそこからバレるかもしれないし音も聞こえるような高性能な魔法かもしれない
それにマックの表情が変わったり周りをきょろきょろしただけでも相手に不信感を抱かせるかもしれない
今はとにかく早めにこの花を届ける、それ以外は考えても仕方がない
オーカは機馬のアクセルを最大にした
「マック!ここからは休みなしよ!ついてこれなかったとしても行先はサブウエエの街の冒険者ギルド!迷子になんかならないわよね!?」
「へいっ!当然でさ!」
「よし、死ぬ気でついてきなさい!」
「へいっ!」
セブンレブンの砦からサブウエエの街まで約半日
オーカは休憩を捨てた
どちらに転んでも人類というものに危機になりかねないこの問題
自分だけの心に閉まっておくには荷が重い
はやくスミスにでも伝えたい
そう思うと止まっていられる時間なんかなかった
緊急クエスト中の旗をはためかせながらオーカは走る
サブウエエの街についた頃にはもう日が完全に落ちていた
「門番!緊急クエストを依頼されてるオーカが帰ってきた!通るわよ!」
門が完全に閉められる時間より前に帰ってきたので口頭だけの挨拶でいい
返事を待つのすら惜しむオーカは急いで中に入った
「今のオーカだよな?副ギルド長の話だと明日か明後日くらいって言ってなかったか?」
「そう聞いているな、所でオーカが帰ってきたって事はマックも帰ってくるんだろ?どうする?開けておくか?」
「うーん・・・それっぽい影は見えないな、まあ、あいつの顔なら誰が門番してても知ってるからはいれないで問題になるって事はないだろ、閉めとけ」
「そうだな、それにしてもマックの奴急にモテ始めたって噂だぜ、やっぱり筋肉なのか?安定した給料より筋肉を選ぶのか?」
「そうだなぁ、一緒にいるのがオーカだから諦めてるって女もいるみたいだけどオーカ自身は絶対マックに興味ないだろ」
「あの女オーガ様は恋愛興味なさそうだもんな」
「まあ、でもマックがいいって言ってる女には教えてやらないけどな」
「はっはっは!そうさ、兄弟、そんな事を教えても得するのはマックだけだ、言うこたぁねぇ」
「はっはっは!よし、さっさと門を閉めよう!そんであいつが帰ってきてもちょっとだけ入れるの遅らせたれ」
「奇遇だな、俺も同じ事を考えていたんだ」
オーカを懐にいれたサブウエエの街の門は閉ざされた
この1時間後に到着したマックは中にはいるのに30分は待たされたという
だがオーカはそんな事を気にしている余裕はなく
この騒動は意外な結末を迎える事になっていく
本当に意外な結末迎えてくれるのかなぁ?




