洞窟は抜けるまでが洞窟です
感謝の極み
ストーンアント、言ってしまえばでかい蟻である
名前の通り石の様な殻で覆われている
種類も豊富で色々な石だったり鉱石だったりあるいは宝石で覆われていて大体が覆われている物の名前が頭につく
大体食べているものが身体を覆っていくのでこの辺には宝石や鉱物などはないのだろう
「ヨシヤーノさん、この辺ってストーンアントの報告例ってありました?」
「いや、ないな、俺は何年もこの演習をやっているがこいつらがいるなんて知らなかった」
「そうですか・・・」
(だとすると地下に魔動力溜まりでもあったのかな?外に出なければそこまで被害はなさそうだけど・・・)
「しかしこうなると問題はあれだな」
「ええ、そうですね・・・まあ、それも進んで確かめてみるしかなさそうです」
オーカ達はさらに奥へと足を進める
途中横穴なども確認しながらなので足取りはだいぶ遅い
なにか手がかりが欲しいが腕や足などが落ちていてもそれはそれで困る
なんとか早く合流できればいいのだが・・・
奥の方へ進んでいくとストーンアントに会敵する事も増えていった
それによりある疑問が産まれてくる
オーカ達ですら戦闘音はするのにオーカ達よりも実力がない3人が音を出さずに敵と戦えるのだろうか?
「この道じゃなさそうですね」
「そうだな、奥はどんな感じだ?」
「音と気配から考えると結構な数のストーンアントがいます」
「うむ・・・しかしそうなるとどの道なのか・・・」
「どうしましょう・・・今から1回戻って少し声をかけながら探してみるのは、暗がりにいる魔物なので音には敏感だと思いますけど囲まれなければココチを守りながら戦う事は出来ると思います」
「そうだな、それしかなさそうだな」
「・・・ぅゎぁ~・・・」
その時聴力強化をフルに使ったオーカの耳にここにいる3人のものではない声が届く
「しっ!ちょっと静かに!」
3人が少しも音を出さないようにと止まってくれる
オーカは耳に手を当て今の声がどこから来たのかを探る
ダメだ、聞こえない
それでも必死になり耳の感覚を研ぎ澄ます
その時自分の中でなにかが強くなった感覚がした
(ここにきて聴力向上のレベルアップ!ナイス!)
さっきまで聞こえなかった音が聞こえてくる
呼吸音、心臓の鼓動、この音は周りにいる3人のだ
それを無視してもっと小さい音へと集中する
「・・・すけてくれぇ・・・」
「あっち!」
オーカは走り出した、それに呼応するように動き出す2人とちょっと出遅れるココチ
「声が離れて行ってます!」
「そうか!マック、お前がココチを守れ、ココチ、あまり前に出すぎるなよ」
「へいっ!」
「はいっ!」
オーカと横並びになるヨシヤーノ
途中出会うストーンアントは2人が即座に息の根を止める
声が大きくなる
今ではヨシヤーノ達ですらしっかりと聞こえているほどだ
「マック!あんた達は中にはいらないでいいから後ろからストーンアントが来たら倒してね、ヨシヤーノさん、周りの敵お願いします」
「おう、奴は魔法も使うぞ、気をつけろ」
「安心してください、師匠、背中預かります!」
「ココチ、あんたも頼んだわよ、でも無理はしないようにね」
「はいっ!頑張ります!」
オーカは走る
そして広い部屋と入った
「アースグレイブ!」
部屋にはいるとすぐにオーカは魔法を発動させた
狙いはデニス達を背中に乗せたストーンアントだ
本当は使いたくはなかったが仕方がない、あとで説明しよう、信じてくれるかはどうかは賭けである
地面から伸びたトゲがストーンアントを貫き足を止めさせる
ストーンアントから解放されたデニス達はオーカの方へと走り出した
オーカとヨシヤーノは前にで、そしてすれ違う
「あんた達!できる事をやりなさい!ただし無理はするな!」
走っていく背中へは視線を送れない
あとはマックやココチがなんとかしてくれるだろう
「さて・・・目の前で子供を殺されたから流石に戦闘態勢に入るわよね」
オーカの視線の先にはひと際大きなストーンアントが身体を震わせていた
「マザー型か、しかも結構でかいな」
マザー型、昆虫型の魔物の巣などを叩くと大体出会う魔物である
他の魔物と1番違う点は子供を産む事だろう
しかしそれは繁殖の為ではない、自分を守る為、そして敵を倒す為だ
マザー型が大きく口を開けた
「ギィヤアァァァァ!!!」
その大きな声は自分の子供を殺された恨みだろうか、それとも人間に対する殺意からくるものか
声に反応して周りにある卵にヒビがはいる
そしてそこから産まれ落ちた子供達が一斉にオーカ達へと襲い掛かってきた
「アイススピア!」
産まれてきたストーンアントへと氷のツララが飛んでいく
ヨシヤーノは氷魔法の名手だ
スネークソードと氷魔法を搔い潜りヨシヤーノに近づくのは至難の業だろう
ストーンアントは遠距離攻撃を持っていない
近づき、そして噛むだけだ
「行け!」
「はい!」
オーカは次々と襲い掛かってくるストーンアントを無視してマザー型に近づいていく
マザー型はその間にも卵を産み続ける
これがマザー型の魔物が嫌われる理由の1つだ
他にも理由はある
まずでかい、そして大体暗い所にいるので戦いづらい、子供を産み続けるので乱戦は免れない、子供を産む時に魔動力を消費するので倒した後の魔石にそこまで残ってないので旨味が少ない
ざっと上げればこんなところだ
しかも「ストーン」アントのマザーである
倒しても後に残るのは石だけだ
ちなみにストーンアントは偏食家と前述したがストーンアントが食べるのはマザー型の糞のみである
つまりマザー型が何を食べるかによって周りの子供達の強さが変わってくるのだ
マザー型は雑食だから人間も食べたであろう、今回はたまたま珍しいものを見たストーンアントがマザー型に献上しようとしてただけかもしれないが
向かってくる産まれたてのストーンアントをぶん殴り君と叩き割りちゃんで葬り去る
ぶん殴り君がストーンアントに当たった時に音は大きい
どうやらその音がマザー型をさらに苛立たせているようだ
マザー型が薄くキラキラとした翅を広げる
「今更威嚇したって無駄だけどね!」
オーカは今まさに叩き割りちゃんで身体と別れたばかりのストーンアントの頭を掴みマザー型へと投げつける
大した攻撃力はないかもしれない、だがそれでもかなりヘイトは稼げるはずだ
「ギィヤアァァァァ!!」
マザー型がさっきよりも大きな声をあげる
(そう、それでいい、お前の視線の先は私だけでいい!)
マザー型の声に誘われてオーカ達が通ってきた穴からもストーンアントがぞくぞくと集まっているようだ
マック達の声や戦闘音も聞こえてくる
だが振り向かない、出来る事は無事を祈るだけ
(私の視線の先もお前だけだ!いくぞ!)
マザー型が大きな脚をオーカに向け叩きつけてくる
それを左手にもったぶん殴り君で受け止める
身体が大きい分かなり重たい
前進する勢いが完全に止められてしまう
だが手の動きは止める事が出来たし後ろに弾かれる事もなかった
オーカは右手に持つ叩き割りちゃんで大きな右手を切りつける
ガキィィィン!
金属と金属がぶつかったような音がする
子供であるストーンアントも堅かったが切れない訳ではなかった
それでも手に残る衝撃の事を考えて関節を狙っていた
しかし目の前にいるマザーの大きさはストーンアントの縦だけでも5倍はあろうか?
脚の太さはまるで木だ
関節を狙いたいがなかなか遠くて狙えない
それに
「流石叩き割りちゃん、切れ味抜群ね!」
マザー型の殻を切り裂くことには成功している
しかし浅い、マザー型の大きさや痛みを感じていないだろう動きを見る分にかなり浅い
これでは相手の命を奪うことができない
オーカは薙ぎ払い丸を取り出そうかと考える、しかしそれもできない
オーカを狙うストーンアントの数は多くヨシヤーノが数を減らしてくれているとは言え大振りのハルバードでは広くをカバーできないのだ
これでやるしかない
オーカは長期戦の覚悟を決める
覚悟を決めたらあとはやるだけだ
左右から襲い掛かる巨大な脚を受け止め、あるいはかわしながら懐にはいろうとする
しかしマザー型も必死だ
近寄ろうとすると後ろに下がりながら魔法を放ってくる
「ギィヤアァァァァ!」
マザー型が叫ぶと地面からトゲが生える
アースグレイブだ
オーカは魔法が発動する前にジャンプをしそれを躱す
「その魔法知ってるのよね!」
オーカはなおも近づこうとする
「ギィヤアァァァァ!」
さらに放たれる魔法、先ほどと同じくジャンプし空中へと逃げる
だが空中にいるオーカに向かってくる影がそこにはあった
「オーカ!」
ヨシヤーノが叫ぶ
「甘いわっ!」
前から飛んでくる岩に向かって両手を振り下ろす
その反動を使いまるで空中で跳び箱をするかのように岩を後方へと受け流す
それと同時にオーカはマザー型へと近づいた
更に後ろへ逃げようとするマザー型
だがしかしそこはもう行き止まりだ
「どんだけ私が位置を変えながらあんたを後ろに追い詰めてたと思ってるの、もうちょっと狭い部屋だったらもっと簡単だったのにね」
いつの間にかオーカの手には薙ぎ払い丸が握られていた
「とりあえず食らっときなさい!」
オーカは渾身の力を籠め薙ぎ払い丸を振り下ろした
その黒き刃は受け止めようとしたマザー型の両脚をいとも簡単に斬り落としマザー型の眼に深々と傷をつける
「ったく昆虫型はタフだし痛みを感じない馬鹿だから人気がないって言うのは本当ね、流石先人の知恵だわ」
オーカは愚痴ると薙ぎ払い丸を横に構えぐぐぐっと後ろへ持っていく
隙を見せたと言わんばかりにマザー型がその強靭な顎で襲い掛かろうとする
しかしガクンっと身体を震わせマザー型はその場に倒れこんだ
よく見れば切り落とされた2本の脚以外が凍り付いて地面に固定されている
「さっさと浄化してもらうように軍に申請しなきゃね、じゃあさよなら」
オーカは横にした薙ぎ払い丸をありったけの力で左右一直線に振りぬく
その攻撃の勢いはマザー型の顔にとどまらず身体をも切り裂いた
蟻の色が金色じゃなくてよかったね!




