騒動もほどほどに
今日も書きたくなりました
女オーガ、オーガを下す
そのニュースはすぐさまサブウエエの街を駆け巡る
オーガが泣いて謝った、そのオーガは流暢に喋っていたのでヒーローだった、オーガの身長は3mはあった、などなど噂とは尾ひれをつけながら加速する
「あーあ、こりゃ面倒な事になりそうだわ」
いつもの食堂でオーカは溜息と共に愚痴をもらす
周りではちらちらとオーカの方に視線を送る人だらけだ
本人からその話を聞きたい!と思いこの食堂に通う人が増えた為厨房は大忙しだ
まあ、それもそのうち無くなるだろう
ちなみに客が増えたので食堂からサービスとしていつもより皿に乗っている肉が増えていた
それだけ長時間いてほしいとでも言いたいのだろうか、ありがたくいただきはするがこちらとしては何も語る気はない
「でも師匠、名前が広がるっての言うのはいい事なんじゃないんですか?」
「ん-、半々って所かしら、もちろんそれで得られる恩恵はあると思うわ、でもそれに伴って責任とかも増えてきたりするでしょ、私はそういう面倒な事が増えるのがいやなのよ、やりたい事だってある訳だしいちいち構ってられないわ」
「ん-、そんなもんですかねぇ、俺なんかは少しでも名前を売ろうと色々やってきたんで師匠の名前が世に広まって嬉しいと思いますけどね」
「あはは、ありがと、でもそのうち厄介ごとに巻き込まれるわよ、そうしたら逃げてもいいのよ」
「そんな!師匠の元から逃げるなんて考えていないっすよ!」
「さて、どーなるかしらね」
いつもより多めの食事を平らげ話を聞きたがっている他の客を尻目に料金を支払おうと店員のもとに向かう、するとそこに
「オーカさん!やっぱりここだった!探しました!」
勢いよく扉が開く、オーカを見つけて喜びと同時に声をだしたのはあの時の受付嬢、名前はサティ
「おや、サティさん私を探してたというのは?」
めんどくさそうな顔を見せないように必死に取り繕いながら話を促す
「ああ、支払いを済ませたらでるからちょっとだけ待っていてくださいね」
ギルドの人気受付嬢がわざわざオーカに会いに来た、その理由を聞きたがっていた周りにいる客はさっさと呼んでいる理由を話してほしそうな顔をしていたのでけん制しておく
この世界には娯楽と呼べるものは少ない、よってこういった話を聞きたがり、そして自慢げに語りたがるのだ
喋っている間はヒーローになれる、それがよりセンセーショナルな内容だったらタダ酒にありつける可能性だってあるのだ
だがそんなもの知った事ではない、心の中でベロを出しながらサティとマックを引き連れオーカは食堂から出ていった
途端にざわつき始める店内の様子だけがオーカの耳に届いた
「さて、話を聞きましょうか」
オーカは食堂から少し離れた所まで歩くと立ち止まりサティに話しかける
「え、ここでですか?てっきりギルドの方まで行くものかと」
「それだと私がこの話を了承したと思われちゃうので」
「そうですか、副ギルド長が呼んでいるんですけど、例のオーガの話を聞きたいって」
「話を聞きたいってあの日に報告はちゃんとしたはずですよ?それはサティさんだって知ってますよね?あの日副ギルド長の部屋にお茶を持ってきてくれたのはサティさんでしたし」
「それはそうですけど話の内容までは聞いてないので、それに私も一従業員なので上司からそう言われたらそれを伝えるしかないですし・・・」
(あー、もしかしてサティさんって結構ポジション上の方の人なのかな?ただの受付って感じじゃないんだよなぁ・・・今の返答も文句があるなら直接副ギルド長に言えって言ってるようなもんだし)
「そうですね、サティさんの立場があるのはわかります、その上でこの前話をした事が全てでこれ以上新たに話す事はなにもありません、とお伝えください、私達はこれからダンジョンアタックに行く為の準備をしないといけないのであまり時間がないんです」
「あら、ダンジョンに向かうんですか?」
「ええ、そうです、ダンジョンドロップでほしいものがあるので」
「ちなみに何狙いなんですか?」
「そろそろもっと遠くまで行こうと思ってるのでね、徒歩じゃ時間がかかるから機馬でも買おうかなと、それの為にゴーレム退治して材料集めようと思ってるんです」
「そうですか、わかりました、じゃあそのように副ギルド長に伝えますね」
「はい、全部伝えてください」
やはりサティは頭がいいようだ
こちらの発言の裏の意味までしっかりと理解してくれたらしい
サティを見送り後ろ姿も見えなくなったあたりでマックが口を開く
「師匠、じゃあ次はビクドン山のダンジョンですか?」
マックは私が他の人と仕事絡みの話をしている時は口を挟まない
計画は私が立てるものだと思っている節もあるがそれだけではなく胡散臭い話を持ってくる人間もいるので表情を変えないで黙っていてほしいと頼んでいるからだ
もちろん今言った話はとっさに考えた事でそんな計画は全くしていなかった
「まあ、機馬が欲しいのは確かだしね、あそこのゴーレムの素材もっていけば材料費の分はその分安くなるでしょ、私は魔力持ち用でマックは魔石の奴がいいわね」
「そうっすね、でも足を手に入れたらこの街から離れる感じですか?」
心なしかマックが寂しそうだ
「まあ、いつかはそうなるでしょうね、でも手に入れたからってすぐにどうこうするつもりはないわ、それに機馬だって結構高いし、あれは私達がそろそろこの街からでていくかもしれないから他の人に頼めって暗に伝えただけよ」
「ああ、そういう意味があったんですか、なるほど」
「いちいち呼び出されて素直にそれに従ってたんじゃたまったもんじゃないわよ、そのうち貴族とかも絡むような仕事とかさせられる事になりかねないわよ」
「え、でも師匠それって大体の冒険者の憧れじゃないすか、貴族が絡めば報酬だってでかくなる」
「ええ、そうね、その分疲れもでかくなるはずよ、貴族ってのは人の事を人と思ってないそんな連中なんだから」
何かあったのだろうか?マックはそんな事を思ったが口には出さなかった
ちなみにオーカは貴族にあった事などないしもちろん関わった事もない、すべてはゲーム、小説での印象である
「まあ、ああ言っちゃったからにはそれようの準備をしないとダメよ、目指せビクドン山のアイアンゴーレムの素材よ!ゴーレムは硬いけどマックの武器はマジック階級なんでしょ?それなら多分なんとかなるでしょ、私はぶん殴り君でやるから」
「あ・・・師匠・・・すんません!」
マックが急に頭を下げる
「え?どしたの?」
「実は武器がマジック階級っていうのはハッタリでした!」
「え、まーじー?」
「すんません!」
「あー、いいよいいよ、それ聞いたのだって殴り込みに来た時だったしね、それから確認してなかった私も悪い、それじゃあまずは武器の事から考えていこうか、でもマジック階級だと武器屋にあったりするかなぁ?」
「いやー、流石にないと思いますね・・・」
「ん-、そうなるとダンジョンドロップ狙いか・・・斧と言えばミノタウロスかオーガがドロップしやすいわよね」
「そうっすね、あとオークだと槍か斧も多いっすね、1番でやすいのは剣っすけど」
この世界のダンジョンドロップは魔物が持っている武器がまれに塵にならずに残るのだ
だから剣を持っている魔物を倒すと剣が残りやすい、持っていない武器種が落ちる事もない訳ではないが
「王都まで行けば売ってそうな気もするけどその分値段は高そうね、ダンジョンドロップも数やれば結構落ちるけど問題は階級だしなぁ」
鍛冶屋に頼んでも地の女神が復活してないでは無理があるだろう、それに凄腕のドワーフの知り合いもいなければ素材もない
「オーガはやめときましょうか、久しぶりに牛肉も食べたいしミノタウロスにしましょ、そうなると、えーっと近いのは」
「ギュカクダンジョンですね」
「んじゃそこにしましょ、いっぱい倒して斧のついでに肉もドロップさせて焼肉パーティよ!」
「いいっすね!いっぱい狩りましょう!」
やはり焼肉は牛肉だ、豚もいいが結局牛なのだ
若くなり、胃の容量も増えたこの胃袋にはどれだけのカルビが入るのだろうか
(ああ、それにしても焼肉なのにライスとビールがないのだけが悔しいわね)
ビールに似た飲み物は売っているがやはり元の世界のビールとは味が全然違う
一度好奇心に負けて飲んでしまったがそこまでの美味しさを感じなかった、だからこそ禁酒が続いているのかもしれない
(お米があれば日本酒なんかを作っている可能性もあるのよね、確か灰をいれると清酒になるとかそんな事を読んだ気がするけど・・・ちゃんと細部まで読んでおけばよかったかしら、まあ、でも肝心のお米がないしそこで作ってるお酒が濁り酒じゃない可能性だってあるし気にしないでいいか)
「じゃあマジック階級の斧が出るまで耐久ダンジョンアタックよ!頑張るわよ!」
「へいっ!俺の為にすいません!」
「マックが強くなればその分私だって楽できるしね、それにこういう時はありがとうよ」
「へいっ!ありがとうございます!」
ミノタウロスがダンジョン内部を跋扈するギュカクダンジョン、そこにはオオニワトリやオークも数は少ないがでるらしい
牛肉、豚肉、鶏肉が一気に揃うので割と人気のダンジョンだ
食べ物の心配さえなければこの世界はなんとかなるのだ
オーカ達は宿屋やドーナやルードにしばらく出かけると言ってサブウエエの街を後にした
しかしまさかギュカクダンジョンに1か月も籠る事になるとはこの時誰も思っていなかった
「もう・・・そろそろ焼肉も飽きてきちゃったわね・・・」
「そっすね・・・ドロップした斧を売って野菜食べに行きましょうか・・・」
「賛成よ・・・」
ドロップ品・・・低確率・・・うっ!頭が!




