ありきたりな異世界転生
書きたくなったので書いてます
仕事終わりの金曜日、いつものように残業を終わらせた私は毎週のようにお酒を飲んでいた
「あー・・・やっぱり金曜日のお酒が一番美味しい・・・」
ちゃっちゃと作ったツマミに手を伸ばしながら一人呟く
「今週の土日も何の予定もないな、まあそれもいいか・・・あっ、そうだ!そういえばアレが届いてた!」
一人でお酒を飲んでいるという事実をかき消すかのようにわざと声を張りながら立ちあがり、重くて動かすのが面倒という理由で玄関に置かれた段ボール目掛け歩いて行った
「奮発して日本酒色々買ったけど流石に多すぎたかな、腰痛めないように・・・っと」
腰痛にならないように足を曲げ腰を落とし段ボールを持ち上げようとしたその瞬間
「ヘックション!!!バカヤロウ!!!」
どこからか盛大な親父臭さたっぷりなくしゃみの音が聞こえたと思ったら今まで見たこともないものが飛び込んできた
「え・・・どこ?・・・っていうか・・・誰?」
今の今まで私は自分の家の玄関にいたはずだ
呆然として力が抜けると持ち上げようとした段ボールがゴトっとなり地面に落ちる
中身が重くて持ち上げきれなかったことが幸いした、もし持ち上げていたなら盛大に落とし目の前が日本酒でビショビショになっていただろう
『おいおいおい・・・まじか』
私の目の前にいる老人はやっちまったという顔をした
『ああ、腰痛の事が気になってくしゃみが変に出たから時空が歪んだのか』
意味が分からない
くしゃみで時空が歪んだ・・・?
何を言っているんだ
目の前の老人が呟いた言葉の意味が分かるのに言っている意味がわからず頭の中で駆け巡る
『あー、驚いてるよな、そりゃ・・・そんな君に1発でわかる言葉を贈ろう』
なにも理解をしていない私は次の言葉を待つ
『異世界転生、いや、異世界転移だよ』
「あー・・・なるほ・・・ええええ!?」
『今の所な、ただちょっと連絡を取ってみないとどうなるかはわからんが』
「連絡?どういうことです?私は元の世界に帰れるんですか?」
『そう、その連絡だよ、ちょっと待っててほしい』
そういうと老人が虚空に手をかざす
すると
「え、黒電話・・・?」
目の前に写真でしか見たことがない昔の黒い電話がでてきた
数字の所に指をいれてグールグルと回す昔のあれだ
『あ、どうも、お久しぶりです、はい・・・はい・・・そうなんです、その件で、はい』
なんだかうちの職場の上司が得意先に向かって電話をしているような口調で電話をしはじめた
どこの世界でもこんな感じなんだろうか
異世界転生だとかの話ってことは目の前にいるのは神様とかそのような人なんだろうけど
『あー、そうですか・・・はい、はい、わかりました、じゃあ本人にそう伝えて・・・はい、この度はご迷惑をおかけしまして・・・いやいや、ありがとうございます、はい、それではまた・・・はい』
話は終わったようだ
再度虚空に向かって手をかざすと黒電話は光とともに消えていった
『さて、なんとなくわかるかもしれないけど今話をしていたのは君の世界の・・・あー、神様だな、わかる?神様』
「はい、それは、なんとなく感じてました」
『それなら話が早いね、実はね、僕は君が住んでいる世界の事が好きでいいなー、なんて思いながらそっちの世界を見るのが趣味だったんだよ、それでたまたま君の住んでいる家の近くを見ていた時にね、あ、君の家の中を覗いてた訳じゃないからね、近くを見ている時にね、くしゃみがでそうだなー、って感じだったんだけど、僕もう1万歳超えてるのよ、そうなるとどうしても腰痛がね、それで腰に気を使ってくしゃみをしたら魔力が口からでちゃってこことそっちの世界の次元が繋がっちゃってね、あ、やべって思ってすぐ次元はふさいだんだけどちょうど君がその次元の隙間に落っこちてこっちの世界に来ちゃったんだよねぇ』
目の前の多分神様は本当にやらかした、と思っているのだろう
後輩が仕事のミスの説明をする時と同じように長文を早口で説明してきた
『それでね、君を元の世界に戻す戻さないの話なんだけどー・・・ちょっと無理かなー・・・なんて』
「なんでですか?くしゃみをしたときにでた魔力が原因ならもう1度魔力を出せば、その次元ってのが繋がるんじゃないんですか?」
『理論上はそうなんだけど狙ってできる事とできない事があってだね』
「というか電話してたじゃないですか、それなら電話線とか繋がってるんじゃないんですか?さっきの電話コードありましたよね?
『あー、ごめん、あの電話機は雰囲気作りに使ってるだけで魔力で会話してるだけなんだよ』
「じゃあ私はもう元の世界には・・・」
『そうだね、戻れない、いやー・・・でも僕のせいだからな、ちゃんと言おうかな』
「なんですか?」
『今のままだと戻れない、が正しいかな』
「条件があるって事ですか?」
『いや、そんな押し付けてる訳じゃないし何かをやれって言っている訳でもないんだけどね・・・僕の世界の話を聞いてくれるかい?』
「その話・・・長くなります?」
『たぶん結構長くなると思う』
「じゃあ・・・ちょっと待ってください」
私はそういうと目の前にある段ボールから日本酒を取り出す
「シラフじゃちょっと受け止めきれないんで・・・なにか食べ物あります?」
『おお!それはお酒だね!いやー、どんな味なのかいつも気になってたんだよね、君はいつも美味しそうにそれを飲んでいたよね!!』
興奮したのか口を滑らせたな?
「さっき私の家の中は見てないって言ってませんでしたっけ・・・?」
『あ!・・・ごめんよ、言うとマイナスイメージから話が進んじゃうと思って・・・』
「はー・・・いいですよ、それでなにか食べるものないんですか」
『あるともあるとも!すぐ用意させよう!』
神様がそういうとどこからかなんだかモヤのようなものがお肉だとか魚だとかをもって集まってきた
そして神様は自分の世界について語り始めた
「えーっと、つまり元々神様の補佐をしていた女神様が4人いたけど魔王に1人封印されてしまって力が弱くなってるからそれがなんとかなれば戻れるかもしれないって事ですか?」
『確率は上がるね』
「と言いますかなんで自分で世界を作ったのに自分の力を削いでくるような存在作っちゃったんですか?」
『いや、あの存在は言っちゃえばバグのようなものでね』
神様が遠い昔世界を1つ作ったらしい
世界を作るということは多くの魔力と繊細なコントロールが必要みたいでどうやら目の前の神様はその繊細なコントロールというのがどうやらちょっと苦手のようだ
『本当は魔王とか魔物だとかなんかいない世界を作って観察を楽しむ予定だったんだけどねぇ、でも自分が作った世界だし愛着もあるからなんとか魔王をどうにかしようと思って女神たちを送り込んだんだけども』
自分の世界に送り込んだ女神は4人でそのうちの1人が封印されている事はさっき聞いた
「じゃあその女神様達は封印を解こうと頑張っているところなんですね」
『いやー、それがね、アハハ・・・』
その世界では進行している人間の数イコール自分の強さになるらしい
封印される前はほとんど均等に進行している人間の数が分かれていたので女神が1人だった場合と比べると4分の1の強さという事になる
魔王が1人の女神を封印した時にご丁寧にその女神に関する記憶まで世界から封印したとの事で今は3分の1の強さになっているのだとか
「つまり4人の時より3人の時のほうが強いから今のままで魔王を討伐しようとしているって事ですか?
『それもあるけど・・・また弱くなるのが嫌な部分もあるんじゃないかなぁ、彼女たちは・・・魔王討伐もここ数百年大規模なものはないし・・・勇者がね、育たたないんだよ、でも彼女たちの寿命は無限だからね、焦ったりしないから進まないんだよね』
「あー・・・よくありそうな話ですね、でも魔王がいるなら侵略とかあるんじゃないんですか?」
『その辺は大丈夫なんだよ、君が好きでやっていたゲームでも人間が住んでいる所の近くは敵が弱いだろう?この世界もそんな感じなんだよ』
こいつどこまで私の生活を見てたんだ?と言いたくなったのをぐっとこらえて私は気になることを聞く
「どうして人間がいる所の魔物って弱いんですか?」
『それはね・・・』
この世界が作られた時白い力と黒い力に覆われていた
白と黒は互いに混ざることがなく世界を二分していた
バグである黒い力の方が量は少なかったものの世界に根付いてしまう
神様はこの黒い力をなんとかしようとしていたがその力を取り除くことはできなかったらしい
『その黒い力の中心で産まれたのが魔王ね、で黒い力っていうのは魔王が今いる場所が1番濃いんだ、完全な円状というわけではないが中心部が1番濃くて離れれば離れるほど薄くなっていく、そしてその黒い力なしでは魔物は生きていけない、強ければ強いほどね、だから中心から離れた所は自然と弱い魔物しかいなくなっていくって訳』
なるほど
『僕はこの黒い力を魔動力と呼んでいる、魔物が動くための力、というわけだ』
「じゃあ白い力の事は?」
『魔力だね、ちょっとごっちゃになるかもだけどね、アハ、ちなみに世界の住人に魔動力の事を話しても誰もわからないからやめた方がいいよ、魔物は魔石の力で動いていると思ってるからね、魔動力を貯めておく貯めに作られた物が魔石だから順番が逆なんだよね』
どうやらこの世界には魔石というよく聞く物質は存在しているらしい
魔動力を貯めるなら魔物専用の心臓のようなものか
『あとはそうだなぁ、魔法に関してとか・・・ゲームでいうボス的なやつの話とか君に頼みたいこととか生活の知恵になるようなこととか色々と話そうか、その前に・・・』
「その前に・・・?」
『お酒まだあるよね?アハ』
神は酒を気に入ったらしい
いくら飲んでも酔いが回らない宴会はまだ終わる様子がない
書きたくなったので書きました