第35話 勇者の称号
メアリとの話し合いを終えた後、ルークはその足で、皇帝の城を訪れました。
城壁の中にさらに建物があり、横の大きな階段の上に宮殿の入り口がありました。
ルークは、城に入ろうとすると、門番に呼び止められました。
「おまえは誰だ?」
「あ、あれ? お前、一年前に脱獄したルークじゃないか?」
「はい。ルークです」
「なんだと! ひっとらえろ」
「待ってください。私は皇帝陛下と話がしたいだけです」
「そんなもの信じられるか!」
「待ちなさい」
城から現れたのは、この国の最高幹部の一人ブランチ卿でした。
「ルーク君。一年前の尋問以来だね。さあ来なさい、皇帝陛下に謁見させてあげよう」
衛兵は敬礼し、見送りました。
城の中に入り、中庭を抜け、進んでいきました。城の中は、どこまでどこまであるようでした。
「どうして、俺を謁見してくれるんですか? 明らかに怪しいでしょう」
「興味深いからだ。これも女神様のご意志かもしれない」
しかし、ブランチ卿は商業貴族でしたから、実際そんなものは信じていませんでした。
むしろ、ルークに利用価値を感じていたのです。
ルークはブランチに連れられて、一室にたどり着きました。
ルークが一年前尋問を受けた部屋でした。
入ると、そこには皇帝陛下と観葉植物を眺めるリリース卿とくつろぐニード卿がいました。
「誰だ?」
「一年前、脱獄したルークです。お話ししたことがあるそうで」
「なんだそれは? お前のことなんか知らん。早く帰れ」
「まあ、そうおっしゃらずに。何か面白いことを言い出すかもしれません。さあ、ルーク君」
「俺に勇者の称号を授けてほしいです」
急に静まり返った。廊下から貴族のしゃべり声が聞こえた。
「あはははははははははははは! 面白いことを言い出すね、ルーク君」
ブランチ卿は笑い出した。
「しかし、『ジュリアこそが勇者にふさわしく、私は勇者にふさわしくない』と言ったのは他でもない君自身だったのではないかね」
「そうです」
「では、どうやって、それを証明するのかね」
「大体、勇者の称号は他の奴にあげてしまった」
ニード卿が言いました。
「他の奴というと」
「南部地域の選抜によってえらばれた猛者たちだ。つい一時間前にこの首都を発ったぞ」
「分かりました。では、私が勇者にふさわしいことを証明してきます」
そう言って、ルークはその場を去りました。
城を出て、廊下を歩いていると、ある男が止まりました。
ルークの父『テール卿』です。仕事のため首都を訪れていたのです。
「ル、ルーク」
テール卿は思わず涙ぐみ、ルークを抱きしめました。
「生きていたのか?! 良かった! 本当に良かった! ずっと心配だった。
生きてくれていてありがとう」
「父さん。ありがとう。でも、俺は用があっていかないといけない」
「用?」
「うん」
ルークは、父から離れ、城を出ました。
「あいつらは女神の許可もないのに勝手に勇者を名乗った不届き者です。殺してしまいなさい」
女神がルークに囁きました。
ルークは首都の郊外で、勇者の称号を受けた三人を殺害しました。
少しして、ルークが皇帝陛下の前に戻ってきました。
ニード卿、ブランチ卿、リリース卿に加え、父テール卿もこの場に加わっていました。
「勇者とやらを殺してきました。確認お願いします。私は勇者より強いです」
そう言って、勇者の首を差し出しました。
父テール卿はお調子者だが優しかったはずの息子が、こんな残虐行為をするようになっているのを知り、卒倒してしまいました。
「な、なんて残酷な奴だ。こんな奴、死刑にしてしまえ!」
リリース卿が悲鳴を上げました。
「まあまあ。しかし、『こんな奴』に負けてしまうほど先の勇者は弱かったということです。
いかがでしょうか。皇帝陛下。彼を勇者にしませんか?」
「魔王軍は恐ろしい。魔王を倒してくれるなら、何でもよい。
魔王を倒してくれたなら、素晴らしい褒美を与えよう」
皇帝陛下がそういい、了承しました。
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