第34話 メアリに居場所を!②
ミアの墓参りを終えたルークは、首都へと急ぎました。
メアリの様子を見ることと勇者の称号をもらうためです。
首都についたルークは、街道でゆっくり歩く身なりのいい青年を捕まえました。
「すみません。メアリという方をご存じですか?」
「メアリ?すみません。よくわかりませんが」
「一年前の『シンギュラリティ』の時に、捕まった女性です」
「ああ。あの女性か。リリース卿のパネルに嫁いだよ。気に入られたみたいでさ」
「そうですか……」
ルークは複雑な気持ちを抱えつつ、パネルの館に向かいました。
ルークが大きな門でリリース卿の私兵に声をかけると、「少々お待ちください」と言われ、私兵一人が館へ向かっていきました。
そんなルークの姿を、館の窓から、メアリが見ていました。
メアリは、自分のお腹とかつての仲間を見比べて、どこか得体の知れない優越感が湧いてきました。
そこで、夫パネルのところに行って、お願いしに行きました。
「かつての仲間のルークが訪ねてきたそうです。会わせていただけませんか?」
「昔の男なんかに妻を会わせられるか」
「違います。私たちの関係を見せつけに行くのです。だから、安心してください」
メアリはそうしつこく説得するので、パネルはしぶしぶ了承しました。
ルークが二十分ほど待たされ、さすがに帰ろうかと思い始めたころ、メアリがメイドを一人連れてやってきました。
メアリは、上流階級の着る赤い仕立ての良い布を使った服を着ていました。
赤い口紅をしていて、ずっと前からこの館の主人であるといわれても、違和感がありませんでした。
そして、柔らかい赤い布からはお腹が少し大きく出ていました。それは滑らかな楕円形を描いています。
「久しぶりだね、ルーク」
「久しぶり」
そこで、お互い、何を話していいか、分からなくなりました。
「ねえ、ルーク。私は結婚したの。私の主人は、リリース卿の息子パネル。
彼は沢山の土地を持っていて、使用人も沢山いて、資産もあって、容姿も社会的地位もある」
「幸せなのか?」
「もちろん、昔に比べたらずっと」
メアリは自分を大きく見せるために、必死に背伸びをしました。
「私は彼の子供を産むの。そうして、上流階級の仲間入りをする」
メアリは、ゆっくりと微笑みました。
「俺は、メアリが結婚している間、脱獄し魔王軍幹部と戦い、大切な人を失った。
俺は、メアリのことを助けられなかったけど、メアリのことを考えていた。
なのに、メアリはそんな風に、俺のことを忘れるのか」
「ごめんね。ルーク。私、自分を守ってくれる男性なら誰でも良かったの。
だから、ルークじゃなくとも良いの。恩着せがましいことは聞きたくない」
「ひどい。裏切り者」
ルークは感情が高ぶり、思わず言ってしまいました。
次はメアリの番でした。
「私はひどくない!!
それこそ、ルークは私のことを分かってくれようとした?守ってくれた?!求めてくれた?!
そうじゃないでしょう!?二度とそんなことを言わないで!!」
メアリは初めて、ルークの前で激高しました。
そして、メアリは大粒の涙を流しました。
それを見て、ルークはメアリとの関係性がもう戻れないのだと察しました。
”もし、この荒野を突き進めば、あなたは魔王を倒すことができます。ですが、もうメアリとの絆は不可逆的に破壊されます”
女神のかつての言葉が、ルークの中で反芻しました。
「メアリは俺と違った」
ルークがぼそりと言いました。
「うん。私はルークと違った」
メアリもそう加えました。




