第33話 ミアのお墓参り
ジュリアの村を発ったルークは、第二の都市メテアを目指しました。
メテアは、かつて居酒屋のバイトをし、そこでミアと出会った場所です。
ルークは記憶をたどりに、ミアの家を探しました。
ミアの家は、昔と変わらずにそこにありました。ただ、少しだけ寂しいような気がしました。
どこが寂しいのかルークは少し考えてみましたが、見つけられませんでした。
結局、自分の感じ方の問題かもしれません。
ルークがドアをノックをすると一人の男性が出てきました。
ミアの夫、デットです。
「どちら様ですか?」
「ルークです。一年ほど前、ミアさんにお世話になりました」
「ああ。あの時の」
「ミアさんに挨拶したいのですが、今いらっしゃいますか?」
「ミアは……」
デットは言いよどみ、視線を動かしました。
ルークがまっすぐと彼を見ても、決して合わせてくれません。
ルークは徐々に嫌な予感を持ち始めました。
「ミアは亡くなりました。あなたがたが旅立ってすぐ、病で」
デットが意を決してそういいました。
ルークはよろけそうになるのをこらえ、下を向きました。
道の色が変わっている気がしました。
明度が下がっています。彩度も下がっています。
道の隙間から、何かが表れて、ルークの足をあざけるように撫でまわしました。
自分の初恋の人がこうもあっけなく死んだのが、信じられませんでした。
ミアのお墓はメテアの少し先の郊外の墓地にありました。
緑の山二つに囲まれた小高い丘にあり、白くやや低い石壁で囲まれていました。
背の低い墓石が一面に並んでいます。
ルークはデットについていきました。
デットが止まりました。ルークがそれを見ると、ミアの名前が書かれていました。
ルークは今の今まで、またミアの意地悪な噓なんじゃないかと思っていましたが、こうやって実態のある墓石を見たことで、その気持ちは完全に消え去りました。
こうして、デットとルークは長い時間、二人で呆然と立っていました。
「あなたは、別れ際『話し合ったほうがいい』とおっしゃいましたね」
デットがこう切り出しました。
「ミアは、子度を欲しがっていたんです。でも、私は子供を欲しいとは思えなかった。
それで、壊れてしまうのが怖くて、話し合えませんでした。
しかし、こんなことになるなら、早く話し合えばよかったと悔やんでいます」
「ミアさんが私に言っていた、『子供ができない体質』っていうのは」
「多分、嘘です。ミアは、『夫に子供を作るのを拒否されている』、と言えなかったのだと思います」
「そうだったんですか。すみません……」
そう言って、ルークは何を言っていいかわからず、俯いてしまいました。
ルークが視線を上げると、デットの目じりが赤くなるのを、見ました。
それでまた、長い時間が経った後、デットが再び切り出しました。
「なぜ、ミアが選んだのは、あなただったんですかね。失礼ですが、私には分からない」
その問いかけにルークは、
「俺にも分かりません」
と言い、首を振りました。
「じゃあ、天国のミアに聞いてみないと」
デットが笑って見せました。
ルークは、アニーの顔を思い出しました。
アニーにも聞いてみたいことがありました。
なぜ、見知らぬ自分に優しくしてくれたのか、ずっと気になっていました。
ルークはアニーを思い、そしてミアを思い、そっと祈りました。




