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第31話 アニーの死

 ルークがここに来てから、一年が経過しました。

 首都にいるメアリは十八歳になり、ルークも遅れて十八歳になりました。


 アニーともすっかり仲良くなり、ジョンとも少し話すようになりました。


 ある日のこと、ルークが山で山菜取りをしていると、女神から話しかけられました。


「ルークやルーク」


「はい。女神様。お久しぶりです」


「最近はいかが?」


「はい。ジョンさんからも修行を受けて、アニーも優しくて、過ごせています」


「アニーという女は止めておきなさい」


「どうしてですか? いい人ですよ」


「ああいう尽くす女が私は嫌いなのです」


 女神はそう言い捨てると、しゃべらなくなりました。


 ルークが家に帰ってアニーと話していると、突然晴天にもかかわらず落雷が起こりました。

 女神が怒りの意を示したのです。




 それからある日のこと、ルークがアニーに頼まれ、イノシシ狩りに行きました。


 すると天気が良かったのに、突如として霧がかかりました。


 ルークはそれでも進んでいきましたが、段々と恐ろしい予感が頭を支配しました。


 段々と薄暗く白く、見える距離が狭くなっていきました。


 アニーの声がしました。追い立てるように音が通り過ぎました。


 誰もいません。悲鳴だった気がしました。


 でもルークは、かまわず進みました。


 しばらくして、もっと大きなアニーの声が響きました。

 二回目。


 ルークは立ち止まり、後ろを凝視しました。


 心臓が高鳴りました。


「アニー?」


 ルークが聞き返しましたが、あるのは霧の先の虚無でした。


 ルークは駆け出しました。アニーの家に向かって。


 急ぎました。




 アニーの家に着くと、そのにおいは、ルークに襲い掛かりました。


 そのにおいは警報です。そのにおいは問い詰めるものです。


 ルークはドアの前で止まり、己の行動を振り返りました。

 もっと早く引き返せたのではないかと思って、首を振りました。


 ルークは泥沼の中の足を動かすように、力を込めて、踏み込みました。


 そこは暗く、ルークが開けたドアから外の新鮮な光がやってきていました。


 その先には暗さと混じって、赤黒いそれが二つありました。


 一つは若い女性、もう一つは高齢の男性。


 いつもならルークを見つけると、近寄ってくるそれは、ただ関心がないように床だけを凝視していました。

 

 動かないことが恐ろしいはずなのに、眼球だけが動くのではないかと、ルークは怯えました。


 ハエが二匹、若い女性の上を仲良く弧を描いていました。


 かつてのアニーとジョンでした。


 そしてそれを見つめるもう一人の大きな魔人がいました。


 魔王軍幹部『デモリッシュ』です。


「探しましたよ。ルーク。まさかこんな場所に潜んでいるなんてね。おかげで見つけるのに一年もかかってしまいました」


「殺してやる!!」


 ルークがイノシシ用の剣を取り出すと、『デモリッシュ』に立ち向かいました。


 家が壊れ、飛び上がり、切り付け、吹き飛ばしました。


 しかし、これらの戦いにおいてルークは常に一歩先を行っていました。


 『デモリッシュ』が押されていきました。


 魔法など必要ありませんでした。あるのは最適化された手順だけです。


 追い詰められた『デモリッシュ』が全力で炎の球を作り出すと、ルークは軽くよけて、脳天ごと切り裂きました。


「ここまで成長しているとは……」


 『デモリッシュ』は今、何が起きているのかわからず、焦点が合わないまま絶命しました。


 ルークは『デモリッシュ』の死体を一瞥すると、半壊した家のほうに戻り、アニーとジョンに近づきました。


 そうして、跪いて、涙を流しました。

 怖くて、遺体を見れず、床だけ見ていました。


「なんで、死ぬんだ? どうして? 意味が分からない。アニーが何か悪いことをしたか? してないだろう。

これは間違っている」


「間違っていません。そうなったのです」

 女神が答えました。


「あなたがアニーとジョンを殺させたんですか?」


「いいえ。私は何も干渉していませんよ。成り行きに任せただけです」


 女神の声は消えました。

 鳥は、ルークの罪は嘲笑うよう鳴きました。

 川は、ルークの罪を許さぬよう流れました。

 山は、ルークの罪を広めるようそびえたちました。


 ルークは叫びました。

 狂わんばかりに、もう何も価値がなくて、世界のすべてが無駄だと言わんばかりに。

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