第30話 修行
「修業がしたいのか?」
「はい」
「なぜだ?」
「それは……」
「理由が言えないなら、受けられない」
「おじいちゃん、意地悪しないで」
「アニー、これは仕方のないことなんだ。覚悟のないやつに修行をさせるわけにはいかないから」
「俺は、メアリとジュリアという仲間と一緒に冒険をしていました。
特にジュリアはとても勇気のあるやつでした。
それで、ジュリアはデストロイとの闘いでシンギュラリティを起こして……」
すると、いつも顔を変えないジョンが、大きくゆがんだ表情をしました。
「おこしたのか? 預言書に書かれたシンギュラリティを?」
「ええ。騎士団長も目撃していました。それになんていったって、この目で見たんです。あのこの世のものとは思えぬ光は、間違いなくシンギュラリティだと思います」
「そうか。ついに現れたのか。今までずっと現れなかった預言書に書かれた勇者が……。それで、彼女は、今どこに?」
「それは……。デストロイと一緒に消えてしまったんです……。だから、死んだのかもしれない」
ルークは、言葉を詰まらせました。
すると、慌ててアニーが駆け寄って、ルークの背中をさすりました。
「それで、どうしたいんだ?」
ジョンが聞くと、ルークは真っすぐ向きました。
「俺はジュリアのように強くなりたい。勇気のあるやつになりたい。
だから、俺を修行してほしい。魔王を倒せるくらいに」
「よし、分かったいいだろう」
修行の日々が始まりました。
ルークは太い木を切るように言われました。
しかし、一発で切れないため何度も充てる必要があります。
「これの何の意味があるんですか?」
ルークが聞くと、ジョンが言いました。
「もっと力を抜け、お前は力みすぎている。流れに任せるんだ。もっと自然になれ」
「力を抜いたら、切れませんよ!」
「それは力の抜き方が間違っているのだ。研究しろ!」
そうして、何度も何度も木と格闘しました。
お昼になると、アニーがおにぎりを作って持ってきてくれました。
アニーとジョンとルークは、見晴らしのいい丘につくと、お弁当を広げ始めました。
「きれいな場所でしょう。私、ここが大好きなの」
「ああ、きれいだ」
ルークはアニーと一緒に遠くを見ました。
「ヤッホー」
突然、アニーが叫びました。
「ヤッホー」
ルークもつられて、行いました。
ルークの顔を見ると、アニーは微笑みかけました。
「修行はどう?」
「厳しいよ」
「あんまりいじめちゃ駄目だよ、おじいちゃん」
「負荷をかけなければ、修行にならない」
ジョンがそう言い切りました。
ほかにも、大岩を運ぶ訓練や、ひたすら遠くに行く訓練、ゴブリンの大軍を皆殺しにする訓練、を行いました。
ルークは何とかその厳しい訓練についていきました。
「最後の試練だ。山の精霊を倒してこい」
ジョンがある日、言いました。
「強いんですか?」
「ああ。強い。魔王よりも強いかもしれない。あの洞穴の中にいる」
「生きて帰ってこれますかね」
「生きて帰ってきたいなら、修行をやめることだな」
ルークは覚悟を決め、一人で山を登り、ほら穴の前につきました。
深呼吸をすると、洞穴の中へ入っていきました。
奥に進むと、広いドーム状の空間にたどり着きました。
そいつは八十センチメートルほどの小さな全長で、昆布のように長方形の構造をしており、横から見ると非常に薄っぺらいものでした。
上のほうには目がついているのですが、退化しているのか、老人のように瞼が落ちていました。
ルークは、こいつなら倒せそうだと、剣を抜き、飛び掛かりました。
しかしそいつは、うつろな目で見ると、突如として光を放ちました。
すると、上から炎が吹き荒れ、ルークを襲いました。
「危な!」
炎は瞬く間に大きくなります。
修行の成果もあり、華麗によけていきますが、徐々に追い詰められていきました。
「熱い!!」
このドーム一帯が火に覆われつつあります。
このままでは、ルークは焼き殺されます!身動きが取れます。
熱さの中、ルークは炎の中に一人を見ました。
ジュリアです。
ジュリアは炎の中を、優雅に歩いています。
「待って! ジュリア!」
ルークはそれに手を伸ばしました。
ジュリアは振り向きました。
そして勝気に笑いました。
「さあ、ルーク。私を超えてみなさい!」
「ああ! 超えてやるよ、ジュリア!」
ルークは立ち上がりました。
呼吸を整え、身体に空気を循環させます。
静かにけれど確実に回します。
一歩、一歩と炎の中に入り込みます。
ルークには痛みはありませんでした。
瞬間、駆け出しました。
そして、炎の嵐を超え、その山の精霊にたどり着くと、素早く切りました。
山の精霊は死に、炎は消えました。
ルークは深く深呼吸をしました。
「ジュリア……」
ルークはそう呟いたのでした。
「倒したか。おめでとう。修業はこれで終わりだ」
ジョンは帰ってきたルークにそう言いました。
「無事に帰ってきた! よかった! 本当によかった!」
アニーも一緒に喜んだのでした。




