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第28話 ルークの敗北

 さて、ルークはどうしているのでしょうか。


 ルークは、街を出ると、木の実を食べたりしながら、洞穴で暮らしていました。


 魔王を目指して、放浪していたのです。


 途中で村を見かけると、食べ物や物資を恵んでもらいました。


「女神様。魔王はどんな存在なんですか?」


 ルークはある晩、洞穴で女神に尋ねました。


「元々、男神だったのだけれど、愚かな嫉妬に狂って魔王になった。そういう存在なの」


「嫌いなんですか?」


「あたりまえでしょう。軽蔑している。誰からも必要とされなかった無能。そのくせ、私のことが好きなの。気持ち悪い」


 ルークは横になりました。

 布を何枚か敷いただけのベッドは固く、寝心地が悪いものでした。


「メアリ……ごめん……。ジュリア……」


 ルークはメアリとジュリアを思い、涙が溢れてきました。




 魔王のいる南部へ三週間ほど歩くと、昼にも関わらず、辺りが暗くなり、厚い雲で覆われるようになりました。


 それは天気せいではなく、魔王のせいなのだと、数日経過してルークは察しました。


 すると、向こうに大きな霧が、現れました。


「ほう……。珍しい獲物がやってきましたね」


 やがて、静かに霧が晴れ、二メートルほどある人型のそいつは現れました。


 魔人です。背中から紫の触手を出し、目は閉じられており、鼻はなく、その代わりに口がとても大きい存在でした。足は細長く、腕は異様に太い。


「誰だ?」


「私は魔王軍幹部『デモリッシュ』。魔王軍のナンバー2です。『デストロイ』などというカスとは違いますよ」


 ルークが身構えていると、デモリッシュは続けました。


「ジュリアとメアリとともに、『デストロイ』を倒したのは聞いています。その上、シンギュラリティを起こしたと。これはまさしく勇者の証。

勇者を刈れるのは楽しみですね」


「俺は、勇者じゃない。シンギュラリティを起こしたのは、ジュリアだ」


「やはりそうでしたか……」


 ルークが首をかしげて問うと、デモリッシュは嗤いました。


「だって、あなた、弱そうですもん」


 ルークが頭に血が上り、戦闘が始まりました。


 ルークは剣を抜くと、デモリッシュに切りかかりました。


 しかし、よけ続け、触手でルークを殴りつけました。


 ルークはよろけました。


 下から狙う、突きで狙う、しかし、どれも外す上に、ルークの反応よりワンテンポ早くデモリッシュの攻撃が来るのです。


「クッソ、魔法もバフもない」


「魔法もバフもない?そんなことを言っているのですか?」


 すると、デモリッシュはルークをけり飛ばしました。


「ぐわっ……!」


「魔法やバフがないから弱いんじゃない。あなたが弱いだけ」


 剣を落とし、地面に倒れこんだルークにデモリッシュが近づきました。


 ルークを見下すと、右手を思い切り踏みつけました。衝撃波が走り、その地面の草が吹き飛びました。


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 ルークが痛みでのたうち回り、飛び上がって、森の中逃げ出しました。 


「いいですねえ。逃げている逃げている。愛らしいものです」


「メアリィイイイイイイイイイイイ。助けてくれええええええええええええええええええええええええ」


 半ば錯乱状態で、ルークは力いっぱい叫びました。


 来るわけがありません。

 だって、メアリは今、別の男にときめいているのですから。

 メアリはここにいないのですから。


 無駄です。無意味です。


 ルークは、後ろから触手で蹴り飛ばされ、地面を何度叩きつけられました。血を吐きました。


 後ろを見るとそこは崖で下には大きな川があります。

 前からはデモリッシュがゆっくりと近づいています。


 ルークは恐怖のあまり、後ろへ這いずりました。


「あっ……」


 叫ぶと同時に、ルークは左手を支えていた地面がなくなるをの感じ、崖から落ちてしまいました。


 ルークが落ちると、川は大きな水しぶきを上げました。


「死んだか……」


 デモリッシュは、そう崖から川を見下ろして、言いました。

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