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第27話 メアリに居場所を!

 こうしてメアリは、パネルの家で過ごすことになりました。


 パネルの敷地にはいくつかの館があります。一つではないのです。そのうち、一つはパネル、一つは父リリース卿の館です。


 そういうわけですから、館の中に何部屋もあり、使っていない部屋もあり、そこもメイドや小間使いたちがせっせとせっせと掃除していたのです。


 メアリはそういった小間使いたちを見ながら、昔のことを思い出し、懐かしんでいました。


 中庭で、空を見上げていると、パネルが近づいてきました。


「ここに来てから、一週間ほどになる。ここの生活は慣れたか?」


 メアリは頷きました。


「メアリは、この家の人間になるのだ。小間使いやメイドは好きなように使いなさい」


「罪悪感があります」


 メアリは小間使いだった己の立場を思い出しながら、言いました。


「何を言う。俺と結婚すれば、お前は上流階級だ。そんな躊躇があってたまるか。

今のうちに使えるように練習しておけ」


 パネルは懐かしむように空を見ました。


「俺もかつては、自身の地位に戸惑ったものだ。なぜ、俺がこんなところにいるのか、選ばれたものなのか、分からないこともあった。だが、俺は慣れた。そうやって努力するのだ」


「私はかつて、孤児の小間使いでした。ですが、領主に襲撃され、また新しい主人の小間使いになりました。でも、それも嫌で、結局ルークやジュリアと出会って、冒険者になりました。

それもうまくいかず……」


 メアリは、勇気を出して、過去の話をしました。


「俺はお前の過去など知るか。だが、メアリ、今は俺といる。それを忘れるな。過去のことなど、俺の前では洗い流せ」


 パネルはそう一蹴したのです。


 メアリは夢の中でルークやジュリアと再会しましたが、極めて不愉快なことでした。


 メアリはまた、ミシェルの時と同じのように、忘れようとしましたが、今回はそれはできませんでした。


 そうしてまた、気を紛らわせるため、雑貨屋巡りに行きました。


 パネルは、この笑わず物欲に溢れたメアリを嫌に思いましたが、如何せん美しい女性でしたので、許しました。





 ある晩のこと、丸鳥やワインなどが出されて、豪華な食事がありました。


 メイド二人とパネル、そしてメアリが食事をしました。


 そこで、ひとしきり食べ、パネルが程よく酔うと、二人だけでバルコニーに行きました。


 空は暗く、遠くの下には首都の街の光がありました。


 パネルは突然、大きなダイヤがついた指輪を取り出しました。


「俺がメアリの居場所を用意する。俺の女になれ」


 メアリの心は、揺れ動きました。


 ここでの暮らしは素晴らしいものです。


 ベッドは雲のように柔らかく、料理はおいしく、面倒なことは使用人がやってくれる。家を追い出されることもない。


 ルークとジュリアと泊まった粗末な宿とは大違い。

 ルークのように連れまわせることもありません。


 何もしなくていいのです。

 過保護なパネルは、メアリの雑貨屋巡りを止めませんでした。

 まるでパネルは父親のようでした。


 自分に食事を与えてくれる男性。

 自分をたくましい腕で守ってくれる男性。

 自分に権力を与えてくれる、社会的地位のある男性。

 自分はただフカフカのベッドで寝ているだけでいい。


 もちろん、パネルの傲慢な支配欲は嫌いでした。


 でも、メアリはもう何もしたくなかったのです。

 面倒くさくなったのです。ルークとジュリアの一件で、何もかも嫌になってしまいました。


 最後の決め手は、このパネルという男、素晴らしい顔と高身長の持ち主なのです。

 それで、何もかもを許しました。


 メアリは、期待を込めて頷きました。


「よし、結婚式を開こう」


 パネルは満足げに言いました。

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