第25話 メアリについて
メアリは王国東部の自営農家の娘に生まれました。
弟が一人いました。
決して裕福ではありませんでしたが、慎ましい幸せな生活を送っていました。
しかし、メアリが八歳の頃。村は盗賊の襲撃にあい、メアリ以外の家族は皆殺しにされてしまいました。
こうして、メアリは奴隷の一人として、連れ去られ、裕福な商人に売られました。
メアリは、その中で小間使いとして働くことになりました。
メアリは、同い年の少女、ミシェルと仲良くなりました。
ミシェルは、よくおしゃべりをしてはメイドに怒鳴られるそんな女性でした。
純粋無垢で、いつも笑顔を振りまいて、周りの子供の小間使いたちを励ましていました。
そんなある時、メアリとミシェルが二人で部屋のベッド掃除をしていると、十八歳くらいの若い男性の小間使いが部屋に入ってきました。
何事かと思いましたが、メアリは男たちの目を見て、察しました。
ミシェルは彼らが何をしようとしているのか、分かりませんでした。
男たちはドアを閉めて、足音を立てて、二人に近寄ってきました。
「ミシェルの方が豊満でいいですよ」
メアリは心を殺して言いました。
そうして、男たちとアイコンタクトをとったのです。
ミシェルは訳も分からず、男たちにベッドに連れられました。
メアリはその隙にドアから外へ逃げ出しました。
メアリが慌てて、メイドのところへ行き、助けを求めました。
メイドが部屋に向かう足音を聞いて、小間使いの男たちは部屋から逃げ出しました。
そして、メイドが部屋に入りました。
メアリが部屋の外で待っていると、メイドに連れられ、ミシェルはうつろな目をして、現れました。
「ひどい。裏切り者」
ミシェルは、メアリを見るなり、言いました。
そののち、ミシェルは、それを苦にして飛び降り自殺をしてしまいました。
メアリは激しい罪悪感にかられ、眠れなくなりました。
友人を売ったのですから。
何度も何度も忘れようとしました。
そして本当に忘れてしまったのです。
半ば、激しいストレスで、記憶機能に障害が生まれたのかもしれません。
そして、メアリはまた、いつも通り小間使いとしての日常を取り戻しました。
しかし、この商人の栄光も長く続きませんでした。
ある時、この地の領主との取引で、この商人は随分と尊大な態度を取りました。
しかもあろうことか、領民の前でそれをしてしまったのです。
再三の謝罪要求にも応じず、放置していました。
すると突如として、メンツを潰された領主が兵を率いて、商人の館を襲撃しました。
小間使いもメイドも殺されました。
メアリは幸い殺されず、部屋の中で、諸侯の兵に囲まれていました。
尻もちをついて倒れたメアリの隣には、主人である商人が命乞いをしています。
領主が突然近づいてきて、剣をメアリに渡しました。
「死にたくなければ、この剣でお前の主人を殺せ」
メアリは受け取ると、商人に近づきました。
「おい! 俺は、お前に衣食住を提供してやっただろう! 助けてくれ! なんでお前は俺を殺すんだ?!
お前は自分が生き残ることしか考えてないのか?!」
メアリはそれらの言葉を無視し、自らの主人を殺しました。
生き残るために。
メアリは、かつての主人の血で染まった剣を、新しい主人に捧げました。
「よくやった。新しい主人は俺だ」
こうして、メアリはその領主の小間使いになりました。
さて、メアリは新しい主人の下、小間使いとして働くようになりました。
メアリは十三歳になり、それはそれは美しい女性へとなりつつありました。
それに目を付けたのが、この領主の次男でした。
彼は二十五歳でしたが、事あるごとにメアリに求婚を迫りました。
耐えかねたメアリは領主に相談しましたが、むしろ結婚するよう催促されてしました。
メアリは領主の次男の容姿が気に入らず、心底結婚したくありませんでした。
そこで十五歳の時、命からがら逃げだしたのでした。
逃げ延びた先で、ルークと出会ったのです。
ルークは男性でしたが、同い年ということもあり、メアリは少し心を開きました。
しかし、ルークが今までの男たちのように、一向に自分に迫ってこないものでしたので、メアリは内心驚いていました。
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