第23話 ルークへの尋問
ルークに対する尋問が始まりました。
皇帝陛下と最高意思決定機関である皇帝会議の出席者、リリース卿、ニード卿、ブランチ卿が法廷に座っています。
その横には、格下の王国の宰相、騎士団長が座っていました。
「名前は?」
ニード卿が尋ねました。
「ルーク。北の諸侯のテール卿の三男です」
「テール卿の息子か。兄二人がここで働いているぞ。随分と優秀だ。もっとも長兄のボリスはそろそろ辞めて、家を継ぐそうだがな。
それに比べて、末っ子のこの体たらくはなんだ。
ルーク。お前は、ろくに仕事もせず、勉強もせず、諸侯を飛び出し、冒険とやらを始めた挙句、騎士に拘束され尋問を受けるのか」
思わず、ルークは黙りこくってしまいました。
「まあ、ニード卿、彼は預言者に書かれた勇者かもしれません。
丁重に扱うべきかと」
リリース卿が窘めます。
「こんな間抜けな子供を勇者にするなど、女神も堕ちたものですね。そんなわけがなかろう!」
「まあ、聞いてみようじゃありませんか。ルーク君、君は預言者に書かれた勇者なのかね?」
「シンギュラリティを起こしたのは、俺じゃありません。ジュリアです。
勇者はジュリアだったんです」
「ジュリアというのは仲間かね」
「はい。俺とメアリとジュリアの三人で冒険をしていました」
「なら、そのジュリアとやらはどこへ行ったのだ。逃げたのか?」
ニード卿が言いました。
「消えてしまったんです。魔王軍幹部の『デストロイ』との戦いで、突然ルークは魔力を大幅に開放し、光を放ち初めました。
そして、ジュリアはデストロイと共に消滅してしまったんです。
でも、ジュリアはデストロイに勝利しました。私が証人です」
「つまり、死んだのだな。『シンギュラリティ』を引き起こして」
ルークが言葉を濁していたことを、無神経にも踏みにじったのはニード卿でした。
そうすると、リリース卿はブランチ卿に問いかけました。
「いかがいたしましょうか。こいつの言うことを信じるならば、預言者の勇者、ジュリアは既に死んでしまったことになります」
「そんなことまずかろう。どうしたのもかな」
「メアリはどこにいるんでしょう? 無事なんですか?!」
ルークが尋ねました。
「お前の仲間のことだろう。無事だ。我々が拘束している」
「会わせてもらえないでしょうか」
「駄目だ。お前らは信用できない」
騎士団長がルークを睨みつけました。
ルークはすごむしかありませんでした。
「ところでルーク君、勇者の称号に興味はないかね?」
ブランチ卿は問いかけました。
「何を言っているんだ。こいつは勇者じゃないんだぞ」
リリース卿は慌てました。
「私は最初から勇者なんてものは信じていない。どうせそんな適当なものだろうと思っていた」
ニード卿は鼻を鳴らします。
「最近の増税によって、民衆に不満が溜まっている。良い機会だ。
偉大な勇者を登場させようじゃないか。
どうかね、ルーク君」
「俺に勇者は相応しくありません。相応しいのはジュリアだけです」
ルークが吐き捨てました。
「ふむ。ところで、ルーク君。『シンギュラリティ』を近くで見て、どう思った」
「奇麗でした。あんな美しいものがこの世に存在したなんて」
ルークは、ジュリアの『シンギュラリティ』に心を奪われてしまったのです。
ルークの尋問が終わって、しばらくした後、足早に皇帝を訪ねる者がいました。
ドアをノックして、部屋に入りました。
「なんのようだ」
皇帝の隣にいたリリース卿が怪訝な顔をして言いました。
「恐れながら。私の息子、ルークが捕まったと聞きました」
「ああ、そうだ。お前はルークの父テール卿だな」
テール卿は仕事の関係で首都を訪れていました。
「そうでございます。どうかお願いです。ルークを殺さないでほしいのです」
「それは分からない。我々が決める」
「ルークはお調子者なところがございますが、根はやさしい子でございます。ですので」
「分かった。考慮しよう。だから、さっさと出ていけ」
ブランチ卿が言いました。
「どうかお願いします……」
テール卿はまた、深々と頭を下げました。




