第20話 魔王軍幹部『デストロイ』の強襲
早朝、慣れない寝床のせいか、ルークはまだ暗いのに起きてしまいました。
横になっても二度寝できなかったため、村の中を散策しました。
村には薄い霧が広がっていました。
そんな中、少し高い丘のような場所で、リリアンがたそがれているのを見つけました。
「やあ。眠れないの?」
ルークがリリアンに声を掛けました。
リリアンが、振り返り頷きました。
ルークはリリアンの隣に腰掛けました。
「僕は外の世界を見たいんです」
リリアンが言いました。
「村の外?」
「そうです。でも、村を勝手に出てはいけないので、昨日は半ば無理矢理出て行ったんです。そしたら、ゴブリンに出くわして」
「そうだね。俺も外に出たかった。気持ちはとてもよくわかる」
「ルークさんも?」
「そう。俺、北国の諸侯の子供でさ。可愛がられていたからなんだろうけど、外に出してもらえなくて、それがすごく嫌だったな。外に出たかった」
「どうやって、出してもらえたんですか?」
「俺も半ば無理矢理。でも一応、父さんから許可をもらえたよ」
「そうだ? 一緒に来る? 冒険に。魔王を倒しに行こうと思うんだ」
リリアンは考え込んだのち、言いました。
「ありがとうございます。でも、今の僕じゃあ、どうすることもできないと思うんです。もう少し、村で修行したいと思います」
「そっか。まあ、焦らなくてもいいんじゃないかな。何とかなるだろう」
ルークは昔に戻ったように、そう適当に言いました。
ルークはお調子者だった、諸侯の家にいた時のことを思い出しました。
実家にいると、子供っぽくなるんだなあと考えました。
そろそろ、ルークが家を出てから半年くらいにはなるでしょうか。
そうしているうちに、太陽が昇り、霧が晴れました。
感慨深げに、ルークは日の出を眺めました。
ジュリア、次にメアリの順番に起きました。
長老からもう一泊だけしてほしいといわれたので、ルークとメアリとジュリアは何をするか話し合うことにしました。
「イノシシ狩りに一票」
ルークが言います。
「私は川で水遊び」
続いて、ジュリア。
「私は家で休んでいたい」
最後にメアリ。
バラバラにになってしまったので、じゃんけんで決めることにしました。
結果、ジュリアが勝利し、ジュリアの案が採用されることになりました。
「水なんて遊んだってしょうがないだろ。イノシシは生き物だから、戦いがいがある」
「なんですって。あんたがセンスがないだけよ。聞きなさい、無機物の声を」
「意味わからい」
「私、水苦手だから、川辺で散歩しているね」
メアリが言いました。
三人が湖に繋がる川までやってくると、ルークとジュリアは下着だけになりました。
メアリは羞恥心がないのか、と呆れました。
ルークは川にもぐったりしていると、ジュリアが突然ルークに水を掛けました。
「おい! 何をするんだ」
「あはは! かかったわ! 無様ねえ」
「やったな!」
ルークはジュリアに水をかけ返しました。
「ぎゃあ。なにすんの?!」
「手加減なんかいるかよ」
「あんたがその気なら!」
ルークとジュリアは猛烈な勢いで戦いました。
結果、身体の芯まで水浸しになりました。
ルークとジュリアは笑いあいました。
「ああ! 最高!」
「そうだな」
ジュリアとルークは川の浅瀬にあおむけで寝っ転がりました。
「なんだかんだ、楽しいわ、あんたたちと冒険していて」
「急にどうしたんだよ、ジュリア」
「別に言いたくなったから言っただけ」
そういうと、ジュリアはこっぱずかしそうに、そっぽを向きました。
そして、ルークに水を掛けました。
「なんで水をかけるんだよ……」
「あんたが何も言わないから!」
「俺のせいなのか!」
すると、木の実を摘んでいたメアリがやってきました。
「メアリも入ってみなさい。気持ちいいよ」
ジュリアが言うと、メアリは嫌な顔をしました。
「一回だけ、試してみたら」
ルークが言います。
メアリは仕方なく靴を脱いで素足になり、川に入りました。
「冷たい……」
メアリは呟きました。
そうして三人で、高く高く上る太陽の下、まどろんでいました。
村に帰ると、ルークとジュリアは下着まですべて脱いで、洗い乾かす羽目になりました。
村の狩人の見習いとして狩りから帰ってきたリリアンが、水浸しになった来客三人を見て、驚いていたのでした。
三日目、ぐっすりと眠り、三人は起きました。
するとどうでしょう。どうやら村の入り口で何やら人が集まっています。
三人はそこへ向かっていくと、魔人がいました。二メートルほどの人型で、白目のない黄色い目をしています。肌からは紫色のガスが発生しています。
「我こそは、魔王軍幹部『デストロイ』である! お前たちを皆殺しに来た。だがその前に、村の人口統計を教えてもらおう! 魔王様に報告しなければならないかな」




