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第19話 さらば、メテア!

 さて、宿を引き払い荷物をそろえ、王国の首都『アミューデルト』に行くことになりました。

 なぜ、首都に行くのかというと、そこで皇帝から勇者としての承認をもらうためです。


 ジュリアが栄誉を欲しがったために、皇帝から承認されたほうがいいという判断になったのです。


 ルーク、ジュリア、メアリの三人がメテアから出ようとすると、ある男性が走ってきました。

「ミアの夫、デットです」

 ジュリアが警戒しました。


「妻が、ご迷惑をおかけしました。突然、訪ねに行ったようで」


「いいえ。大丈夫ですよ」

 ルークが笑いました。


「旅立たれるのですか?」

「ええ。首都に行こうかと。勇者の承認をもらい、魔王を倒しに行くんです」

「それは素晴らしいですね」


「ミア……さんと話し合ったほうがいいと思います。ミアさん、子供を欲しがっていました」

 ルークが恐る恐る言うと、デットは眉毛を動かしました。


「私たちの問題です」

 そう静かに拒絶したのでした。


 デットの見送りを受け、ルーク、ジュリア、メアリの三人はメテアを後にしたのでした。




 ルークたちが去った後、ミアは病で死にました。




 先には大きな湖。

 左には雑木林があり、右は草原があります。

 なだからかにカーブをしながら、道は下っていきます。


 そんな道を三人は歩いていきました。


「冒険しているって感じがするわ」

「そうだな。ところで、暑くない?」

「噓でしょ。私は、全然平気よ」


「いや、暑いだろ。メアリはどう思う?」

「私もそんなに……」


「ほら、あんたが雪国の出身だからじゃない」

「そうなのか。うーん。なるほど」


 すると、モンスターの鳴き声が響きました。


 彼らは立ち止まり、顔を見合わせました。


「誰かが、襲われている……」

「助けに行こう」


「え? 助けに行くの?」

 メアリがやや引き攣った顔で言いましたが、それより先にルークとジュリアは駆け出しました。


 雑木林を駆け抜け、音の発生源へと向かいます。


 すると、額に血を流して倒れている七歳くらいの少年と、二メートルほどの大型のゴブリンが二匹いました。


「でかいな。メアリ、バフを!」


 メアリは息を切らしながら、バフを二人に授けました。

 ルークには防御用、ジュリアには攻撃用です。


「よし!」 

 ルークはゴブリンに切りかかりました。


 持っているハンマーで応戦するゴブリンを何度も切りつけ、めった刺しにします。


 すると、もう一匹がルークを背中から叩き潰そうとしてきました。


「あっ」


 ルークが振り返り叫んだその時、炎が舞い、ゴブリンは真っ黒になりました。

 焦げ臭いにおいが、ルークの鼻を撫でます。


 見ると、ジュリアが助けれくれたのでした。

 

「大丈夫か?」

 戦いが終わると、ルークが少年に駆け寄り、抱きかかえていたのでした。


 何度も苦しそうに、酸素を求めています。


 少年が一瞬だけ目を開くと、また押し込まれるように、目を閉じてしまいました。


「メアリ、回復魔法を頼む」

「うん」


 すると、だんだん浅い呼吸は落ち着き、眠ってしまいました。


「この少年を、どこかに連れていきたいな」

「この湖の近くに村がある」

「知っているのか?ジュリア」

「ええ。少数民族のアントリミール族の村よ。未だに女神様を崇拝していない、有名な場所だから」

「行こうか」


 三人は雑木林を超え、アントリミール族の村にたどり着きました。


 木で作られた策と門があり、上には大きな弓を持ち、半裸の男たちがいました。


「お前は何者だ?」

「彼を助けたいんです。入れてもらえますか」

 ルークが助けました。


「リリアン?! リリアンじゃないか! リリアンに何をした?!

人質にするつもりか?!」

「違う! 待ってくれ! 助けたいだけだ!」


 すると、ルークにおぶられている怪我をした少年、リリアンが目を覚ましました。


 そうして、弓をかざす男たちを見上げると、慌てて叫びました。


「僕は大丈夫だよ。彼らが助けてくれたんだ!」


 すると、門番の男たちは弓を収めました。

「ついてこい」といい、村に招き入れてくれました。


 ルークたちは顔を見合わせましたが、リリアン少年とともに、村に入りました。


 リリアンを見かけると、中年の女性が近寄ってきました。


「リリアン! リリアン! 無事だったのね! 良かった! 勝手に村の外に出ちゃ駄目でしょう!」


 リリアンと名乗る少年は、うなづきました。


 すると、奥から大きな白いひげを蓄えた老人がやってきました。


「長老です。歓迎いたしましょう。お名前は」


「俺は、ルーク。二人は、メアリとジュリア」


 こうして、ルークたち三人はこのアントリミール族の村に泊まることになりました。




 夜、歓迎の儀式が村の広場で行われました。

 松明が置かれ、宗教服を着た男たちが踊っています。奥には太鼓を叩く男たちがいます。


 ふるまわれたのは、果実で作った甘いジュース。イノシシの肉。そして蒸した大麦です。


「自然なる神、ナチュラよ。自然にお帰りします」

 すると男たちは、突然叫びました。


 宴会が終わると、リリアン少年が三人を部屋へ案内しました。


「ここです。泊って行ってください。助けていただいたお礼です」

 リリアンが、藁で作った部屋に案内しました。


「ありがとうね」

 ジュリアがにっこりとほほ笑むと、リリアンは嬉しそうに去っていきました。


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