第18話 女神のお説教
「ルークやルーク。女神です」
「はい。お久しぶりです」
宿にいる時、突然ルークは女神から話しかけられました。
「何、あんた女神に話しかけられているの? 私、何にも聞こえないんだけど」
ジュリアが怪訝に言いました。
「早くメテアを旅立ち、魔王を滅ぼしなさい」
女神がルークに言いました。
「どうしてですか?」
「国は預言者に書かれた勇者の登場を待っています。早くいかないと国が滅びます。
そういうわけなので、よろしく」
そういうと、女神は消えました。
「女神、なんて言ってたの?」
「早くメテアを出発して、魔王を滅ぼせと。『国は預言者に書かれた勇者の登場を待っているから、早くいかないと国が滅びます』と」
「面倒くさいこと言い始めたね」
ジュリアはため息をつきました。
「でも、魔王を倒したら栄誉が手に入るわけで、ジュリアも目標なんだろ?」
「まあね。だからよくわからない女神から言われなくとも、やるつもり」
「メテアを出るにあたって、お金ってどうなの?」
「そろそろ、三千銀貨たまるだろうし、出発してもいいんじゃない」
「いいな!」
「ほとんど私が稼いだんだけどね」
「一応ほら、俺もバイトしたから」
「七割は私だよ」
「うっ……」
「まあ、メアリは一円も稼いでないんだけど。あの子ねえ」
「メアリ、そもそも魔王を倒すのに難色示していたから」
「説得するの?」
「というか、メアリはどこにいるの?」
「雑貨屋巡り」
「また……? あの子ねえ」
「まあ、メアリが雑貨屋から帰ったら聞いてみよう」
すると、ノックが響きました。
「はい。どなた?」
ジュリアがドアを開けました。すると……
「あの、ルークがここに滞在しているってお聞きしたんですけど……」
すると、晴天だったにも拘わらず突然落雷が起きました。
「きゃあ!」
ミアが悲鳴を上げて、屈みました。
ルークに近づいてくるミアに対して、女神が怒っているのです。
ミアは、恐る恐る立ち上がり、ジュリアに聞きました。
「ルークはいますか?」
「いませんよ」
ジュリアが怪訝な顔をして、言いました。
「なんだ? 何かあった?」
ルークがのこのこと玄関の前まで来ました。
「バカ! ひっこんでなさい」
「まあ、ルーク! いるじゃない」
ルークはびっくりしました。
「ミア? どうして?」
「あの、その……」
ミアはもじもじとしていました。
ジュリアはルークとミアを相互に見て、ため息をつきました。
「謝ろうと思って。ごめんなさい」
ミアは頭を下げました。
「いいんです。俺が勝手に期待していただけですから」
「何か困ったことあったら言ってね。お金とか物とか、何でも買ってあげるから。力になりたいの。ね?
部屋に上がっていい?」
「やめてください」
ジュリアが話に割り込みました。
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですから」
「そっか」
ミアはそう言って帰っていきました。
ジュリアは言いました。
「女神といい変な奴と関わるのはやめなさい。ろくなことにならない」
「ミアはいい人だよ」
ルークはそう小さな声で答えました。
メアリが帰ってきたので、夜に今後どうするか話し合いました。
「俺たちはメテアを出て、魔王を倒しに行こうと思うんだ」
メアリはそっぽを向きました。
「どうして、私たちがそんなことしないといけないの……?」
「ジュリアは栄誉が欲しいし、俺も魔王を倒すのに興味があるから。メアリは反対?」
「わ、私は……」
メアリは、ジュリアの顔を見ました。
「別に言いたいこと言っていいよ。私たち、聞くし」
ルークを見ると、ルークもジュリアの言葉に頷きました。
そして、メアリの長い沈黙を二人は待ちました。
「うん……私もいいと思う」
「よし、決まりだ。メテアを出よう」
ルークが高らかに宣言しました。
メアリは噓をつきました。
自分が魔王を倒したくないのを、察してほしかったのです。