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第15話 ミアについて

 ミアについて、少し話しておきましょう。


 ミアは南部の小さな村で生まれました。

 両親は、小さな土地の自営農家でした。


 二人姉妹で、姉はニーナと言います。

 ニーナは生まれつき身体が弱く、しばし床に臥せました。


 村の諸侯公営の学校に通いながら、ミアとニーナはすくすくと成長しました。


 しかしある日のことです。

 ミアの母親が、家の前を通る時、急に嫌な顔をしました。


「どうしたの?」


 幼いミアが聞きました。


「あの夫婦、まだ子供がいないんだよ。子供を作らないなんて、異常なんだよ。この村にふさわしくない」


 母親は忌々しく言いました。

 そして、ミアを睨みつけました。


「子供を絶対に作らないと駄目だよ。子供を作ることは親孝行なんだからね」


 ミアはすっかり震え上がってしまいました。

 ニーナは諦めたように、母親に同意しました。


 それから、ミアはだんだんと外の世界、別の生き方にも興味を持つようになっていきました。


 ある日、母親に言いました。

「子供を持たないで、自由に生きるのは駄目なの?」


 母親は恐ろしい顔をしました。

「そんなものあり得るわけないでしょう。冗談はやめて」


 そんなある時、ミアは、ニーナと部屋で二人きりになりました。

 ニーナはまた体調不良で、横になっていました。


「あのさ、姉さん。私、この村を出ようと思うの」


「どうして?」


「私、子供を持たない生き方がしたいの。でも、姉さんが心配。

姉さん、私と一緒に来てくれない?」


 ニーナは首を横に振りました。


「私は身体が弱いから、足手まといになってしまう」


「私、姉さんを見捨てられない! ずっと一緒にいたい」


 ニーナはミアを抱きしめました。


「ありがとう、ミア。でも私は大丈夫だから。行っておいで」


 ミアとニーアは抱き合って泣き続けました。


 結局、ミアは一人でこの村を出たのでした。両親に見つからないよう夜逃げのごとく。

 ミアが十八歳の時です。




 メテアにたどり着いたミアは、仕事を探しました。


 しかし、なかなか見つからず、怖い思いをすることもありました。


 そうして、ミアはこの居酒屋のアルバイトを見つけました。


 そのうち、ミアは勝気で、関わりづらい性格になりました。

 それは決して、性格が悪いからではなく、自分自身を守るためだったのです。


 数年が経過しました。


 そんな中、後の夫となるデットが居酒屋のアルバイトに入ってきました。ミアの三つ下の年齢でした。


 デットは大学生でした。ミアと交流していくうちに、デットはミアのことを好きになりました。


 デットはミアに告白をしました。

「好きです。付き合ってください」


 ミアは悩みぬいたのちこう答えました。

「子供を作らないと約束してくれるなら」


 彼は頷きました。

「俺も同じだよ。子供を作らない生き方に興味がある」


 それを聞いて、ミアはうれしくなりました。


 付き合っているうちに、ミアもデットのことを好きになりました。


 そのうち結婚し、デットは大学を卒業して別のところに就職しました。

 新婚らしく、二人は仲睦まじい様子でした。


 しかし、そのうち、ミアはデットとの子供が欲しくなってしまいました。

 そこで気づいたのです。

 私は誰かに子供を作るのを強制されるのが嫌だったのであって、自由意思で愛する人と子供を作りたいのだと。


 ミアはそのことをデットに打ち明けました。

 しかし、デットは困ったように笑いました。


「いまさらそんなこと言われても困るよ……」


 そこから、ミアとデットの間に隙間風が吹くようになりました。


 お互い腫物を触るように接し、次第に触ったら壊れてしまうのではないかと考えるようになりました。


 そんな中、ミアのアルバイト先にルークがやってきたのでした。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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