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怪談   作者: ニビ
4/8

廃隧道

 

 隧道を見に行こうと言ったのはそいつでした。


 そう、ずいどう、です。聞きなじみないですか、はは。私らみたいな人間はよく聞くんですけどね。まあ昔の言葉かもしれないですね。

 いえ、それであってます。おっしゃるとおり、トンネルですよ。けれど何というか山の中にあって、入り口も塞がれて、ただひっそりと朽ちていくようなものはトンネルってより隧道って行った方がどうにもしっくりくるので、そういうものは隧道って私は呼んでいます。


 話がそれてしましました、すいません。あの日のことでしたね。

 私とそいつはときおりそういった隧道を見に行く仲間でした。ほんの少し装備を整えて、山に入って隧道や廃道を見るという。装備は本当に簡単なものなので、深く山に入るような場所には行きません。

 その日も、そういう、ちょっとした隧道を見に行こうと彼が誘ってきて、私はすぐに乗りました。そこはかつて鉄道が通っていて、今はもうないんですけど、その鉄道の隧道、まあ廃隧道か、それがあるんです。だからそこに行こうって。

 そうして特に苦もなくその廃隧道に着いて、二人して少し離れたところからそれを眺めて、うわー雰囲気あるなーとか言って。

 そのときにそいつが「あれ?」って。「横にもう一個隧道あんだけど」って。

 二人ともそんな話は知らなかったから、ええー?って言いながらそれに近づいて。隧道なんですよね。危険防止のためにか、入れないようにはしてあるけど上が少し空いていて。彼がわざわざその入れないように塞いであるものの上に登って中を見に行くのを私は見ていました。やめようよ、とか危ないぞ、とかは言いましたけど。何となくですけど、私はそういうものの中は見たくなかったので。

「へーきへーき」って笑いながら彼は覗きこんで、「あれ?」ってまた言うんですよ。「あれ、何か…」と言いかけて、やめて、すぐに引き返してきました。顔は何ともいえない半笑いでしたけど、何かやばいものを見た!みたいな顔ではなかったので私もそのまま彼と一緒に帰りました。


 その日の話はそれだけです。帰りの車でも特に違和感なく彼と話していました。

 次の日くらいだったかな。共通の知人に「なんかあいつ、あんな笑い癖あったっけ?」って言われて。いや分かんないけどって答えると、変なところで大声で笑うんですって。路地裏の暗いところや、会社の暗いすみっこみたいなところ見て。あの謎の隧道のことは頭をよぎりましたけど、そんなこと言うと今度は私がやばい人みたいになりそうだったから言いませんでした。


 彼とはそれきり、会っていません。会社も違うから、様子もわかりません。何度かメールや電話もしてみましたが、通じませんでした。


 例の隧道は、調べたけど分かりませんでした。近いうちにもう一度、行ってみようと思っています。

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