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怪談   作者: ニビ
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 道の駅でご飯食べるのが好きなんですよね。ああいうとこ、名物料理とか、その土地の名産とか美味しく食べられるじゃないですか。採ったばかりのまだ柔らかいたけのことか、旬を迎えてよく太った鮭とか。

 その地元の人がよく使ってる食堂とか行くより落ち着いてひとりで食事できる気がするんですよね。なんかああいうとこ、常連と店の人だけが話し込んでてよそものの客は放置、みたいな感じあるじゃないですか。私が変に人見知りなせいもあると思いますけど。

 ああいえ、食堂の話がしたかったわけじゃなくて。そうやって自分の好きな道の駅でご飯食べてたらちょっと腑に落ちないことがあったって言うだけです。

 

 その道の駅に併設されてる食堂は、食べ終わった客が自分で食器を返却するタイプだったんですよね。こうお盆に椀とか皿とかを乗せて、それを戻す。そうそう、フードコートとかと同じですね。

 ご時世柄、使い終わったテーブルの上を店員さんがアルコール消毒してくれるんですよね。

 それをわかりやすくするために、卓の上に札が置いてあるんです。ラミネート加工されてたかプラ板に挟んであるのかは忘れましたが、表が「食事前」、裏が「食事後」みたいなことを書いてあるんですね。食べ終わった客はそれを裏返しにしてここは誰か使いましたよとアピールをする。そこを拭いた店員さんはまた表に返して誰が使ってもいいようにしておく、という寸法です。


 前置きが長くなっちゃいました。大した話ではないのに。

 席は自由に選んでよかったので、適度に離してある、いくつかある二人用の席を物色して座りました。あんまり返却棚に近いところはいやだなあなんて思って少しだけ奥のところに。

 番号を呼ばれて自分が注文した定食を番号札と引き換えて普通に食事をしました。ここは何も面白いことはないですよ。周りの、いかにも観光客な人たちの会話を聞くともなく聞いてご飯食べて終わりです。

 そして周りの客と同じようにプラ板を「食事後」にして、食器を返却棚に入れて、そのときに気づいたんですよね。


 二人用の席の、返却棚に一番近いところの席のプラ板が「食事後」になってたんです。


 最初、自分が座ろうか一瞬悩んで、返却棚に近いところはいやだなと却下したところってくらいだから、最初に見たときは「食事前」の表示だったんですよね。その席から近い、視界に入るところに私は席を取ったので誰か来たら気づくはずなのにそれもない。私の後に番号を呼ばれた人はひとりだけいましたがその人がもっと後ろの席にいるのはなんとなく視界のすみっこで確認していましたから、その人でもない。


 まるで姿のない誰かが食事をして、律儀にプラ板を返したみたいじゃないですか。


 いやあぞっとしないわけでもなかったですね。別にただの見間違いだったんだろうと思ってますけど。

 いやに白い一面ののっぺりとした雲が降りてきてる日で、昼過ぎだというのに店の中は奇妙に暗くて。

 人々は白い輪郭だけがくっきりとある黒い影のようで、ああこんな雰囲気なら、紛れ込めるんじゃないかな、なんて思いました。

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