きっと知っていたこと
施設から出た後、少し離れた場所にある公園にあるベンチでお昼ご飯用に食べ残していたパンを食べていた。ふぅ。と一つため息をついた。最後の一口を食べようと大きく口を開けた時、ノエルの前にいつの間にか青い髪の女の子のアオイが立っていた
「隣、座っていい?」
「どうぞ。あまり座り心地は良くないけれどね」
ノエルの返事を聞いたアオイが少し笑顔になってノエルの右隣に座り、パンを食べる様子をジーッと見つめる。視線を感じつつも見ないように食べ終えると、アオイがノエルにほんの少し近づいて恐る恐る声をかけた
「あの……私、何て呼んだら良いですか?」
「呼ばなくていいよ。アオイは私の名前を一度も言わなかったから」
「……そうなの?」
「名前を言う必要なんかないって言ってね。きっと全部分かっていたんだよ。余計に悲しくなるってことも」
アオイに返事をして空を見上げたノエル。それにつられるようにアオイも空を見上げると、青空だった空が少しだけ夕暮れに変わっていた
「私が居なくて悲しいの?」
「ううん。むしろちょっと怒っている」
アオイの質問にノエルがフフッと笑って答えると、隣に座っていたアオイが足を振り勢いをつけてベンチから降りた
「帰るの?暗くなってきたし、途中までなら送っていくよ」
「一人で帰れる。大丈夫」
ノエルの方に顔を向けることもなく、パタパタと走って去っていた。その後ろ姿が見えなくなると、鞄を探り、残っていたお菓子を取り出し、ため息混じりに一口食べるとあっという間に暗くなっていた空を見た
「最後にかけた術は一体なんだったのかな。ねえ、アオイ」




