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一人、月夜を呼んだ日

 風に揺られヒラヒラと青く長い髪が揺れている。ふぅ。と一つ深呼吸をして月を見る少女の隣に闇夜に隠れる程、黒く染めた髪を持つ少女がまた一人現れ、クスクスと笑い問いかけた

「ねぇ、あの月って、いつもと違うと思わない?」

「んーそう?私は変わらないと思うけれど……」

 会話をしながら二人一緒に月を見る。いつもよりも早い雲の流れで、時折月が雲に隠れ、月明かりで見えていた二人の足元も時々暗くなり見えなくなっている

「いつもと違うよ。だって、月明かりがいつもより眩しいもん」

「変わらないよ。いつもと同じ月明かりだよ」

「ううん、今から私が見るの月はきっと変わると思うんだ」

 青い髪の少女がそう言うと黒い髪の少女の手元を見た。視線を感じた黒い髪の少女がニコニコと右手にを上げる。月夜の明かりではっきりと見えたその手には、まだ治らない傷跡が無数に残っていた

「だって、君があの月を壊そうとしているんだもの」

 青い髪の少女が哀しげにそう呟くと、黒い髪の少女が後ろから優しく抱き締め、傷だらけのその右手を青い髪の少女の胸元に手を当てた

「ありがとう」

「どういたしまして、アオイ。ゆっくりおやすみ」

 二人がニコリと微笑みあうと、ユラユラと揺れていた青い髪の少女の体がバタンと倒れ、黒い髪の少女が厚い雲に隠れそうな月を見つめ、左手で右手をつかんだその場所に真新しい傷が一つ増えていた








「ねえノエル。なにを見ているの?」

「あれ、美味しいかなって」

 とある建物の屋上で、少し髪を染めた女の子がノエルという空を見上げている黒髪の女の子に声をかけた。女の子の問いかけに答えるようにノエルが空を指差す先を見ると、数羽の鳥が木々を渡るように飛んでいた

「……お腹空いているの?」

「ううん、さっき食べてきたばかり」

 ちらりと足元に置いていた鞄を見ると、食べ終えたジャンクフードの袋と飲み物が無造作に置かれていた。ヒラヒラと袋が揺れるのを少し呆れ気味に見ていると、ノエルがフフッと笑って見ていた

「今度はなに?」

「んー、美味しそうだなって」

「今度は何が美味しそうなの?」

 はぁ。とため息つきながら問いかけると、ノエルがビシッと女の子を指差した

「……私?」

 怪訝な顔で聞くと、ノエルがまた楽しそうにフフッと笑うと、突然空を指差した

「ねぇ、月が見える?」

「月?今はお昼過ぎだよ。月なんて、まだ見えるのは……」

 ノエルが指差す先の空を見上げると、さっきまで明るかったはずの空が暗くなった。戸惑う女の子の側でノエルが、はぁ。と一つため息をついた

「今日は満月じゃないんだね」

 月を見ないように背を向けながら、隣でまだ戸惑う女の子に聞こえないほどの小さな声で呟くと、足元に置いていた鞄を取り、月夜を背に一人歩きだした

「あの月もアオイのせいだと思えば、綺麗に見えるかもしれないね」

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