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竜を狩る  作者: 六月十五
3/8

地竜を狩る(3)

 太古より世界は“竜”に支配されてきた。

 高い知能に強靭な肉体、そして桁外れの魔力をもつ竜は、生きとし生ける全てのものから畏敬の念を抱かれていた。

 無論、人類も例外ではない。

 かつて、“竜1体に一国滅びる”と言われたほど、永き歴史の中で人類は竜を恐れ、敬い、そして奪われてきた。


 時の賢者は言った。

 竜を相手にすることは、自然そのものを相手にすることだと。

 時の勇者は言った。

 竜に相対すれば、逃げることこそ勇気なりと。

 時の王は言った。

 平和とは、竜の翼の上にありと。


 曰く、竜は空を駆り

 曰く、竜は地を穿ち

 曰く、竜は海を割る


 絶対的強者である竜に立ち向かうなど、人には到底叶わぬ夢に思われた。

 だが、車輪が物流を変えたように。鋼の生成が戦争のあり方を変えたように。

 人が歴史を紡ぎ、文明を発達させていくにつれてーーー竜と人の関わりも姿を変えてきた。




 爆音が響いた。

 地面が隆起し、鋭利な岩が無数に突き出す。

 瞬く間に荒涼とした大地が針山と化した。

 地竜の攻撃をぎりぎりで回避した3人のうちグリントが叫んだ。


「マルクル!どうやってあの地竜を狩る気だよ!?近づくことも出来ねぇだろ!」

「まったくですねぇ。これだけの石柱を一度に出すなど、竜の魔力量にはいつも驚かされます」

「言ってる場合か!今に俺たち、あの石柱に貫かれて殺されるぞ!」

「ですね。大人しく殺される気はありませんし、反撃といきましょうか。ルー!」

「なに」


 マルクルに呼ばれたルー。グリントとは対照的に地竜の攻撃を受けても落ち着いている。


「私が地竜の周囲にある石柱をとり除きます。アナタはその隙をついて地竜に攻撃してください」

「わかった」


 マルクルは手を地につく。腕輪がシャンとなり響いた。

 瞬間、ボゴォンと地面が波打つ。


「《砂漠化(ワスティタース)》」


 マルクルの中心に、荒涼とした大地が砂に変化した。

 まるで蟻地獄に吸い込まれるように、瞬く間に地竜が出現させた石柱が砂の中に沈んでいく。

 石柱に隠れていた地竜の姿が視認できた。


「今ですルー!」


 マルクルの掛け声と共に地竜へと飛び出したルー。

 だがーーー、


「無理だろ!?」


 当然の疑問がグリントの口からこぼれた。

 ごつごつとした岩のような外骨格をもつ巨大な竜と丸腰の少女。攻撃を仕掛けたところで返り討ちにされるのが関の山だ。


「安心しなさいグリント。彼女は私たちとは違う」


 ルーは拳で地竜の横っ面を殴る。

 瞬間、体長5、6メートルはある巨体がぐらついた。


『グゴァア・・・』

「まだだよ」


 今度は逆の拳で地竜の頭を殴りつける。

 岩が砕ける鈍い音がして、ズズズン・・・と地響きと共に膝をつく地竜。

 遠目で見ていたグリントが分かるくらい地竜はダメージを負っている。


「ルー!そのままトドメを刺しなさい!」

「そのつもり」


 ルーの拳が熱を持ったように赤く光出す。その赤い光は徐々に指の先へと集まり、最終的に爪へと集中した。


「とどめ。これを使ったらアナタ助からない」

『グガァ・・・ズニノルナ、ニンゲンフゼイガ』

「!」


 ルーは足元に違和感を覚えて目を向ける。

 砂だ。砂がルーの足に絡みついている。

 一瞬、マルクルの攻撃だと思ったが違う。彼の魔法は地竜の足元にまでは届いてはいなかった。

 だとしたら、この砂は目の前の地竜の仕業だ。

 ルーはすぐさまその場を飛び退き、影響が及んでいない岩場に着地する。


「あぶない」

『キサマハ、アトマワシダ・・・マズハ、アノウマソウナニオイノニンゲンヲ、コロシテヤル』

「?」


 地竜は足元に作り出した砂へと沈んでいく。

 巨体がものの数秒で沈みきり、そして地竜はルーの目の前から完全に姿を消した。

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