地竜を狩る(2)
地中から姿を現したのは巨大な竜だ。
体長は5、6メートルはあるだろうか。
亀に似た姿で、背の部分は荒涼とした大地のような、ごつごつとした岩の外骨格で覆われている。
その見た目から、巨大な岩が動いているようにも見える。
「出やがった!竜だ!」
「グリント、竜の前で座り込むのは危ない。逃げた方がいい」
「うっせぇ!分かってるわ」
グリントは腰を抜かしていた。
見たところケガは無さそうだが、すぐに戦闘はむりそうだ。
「つーか、マルクルのやつどこ行った!?ちくしょう・・・俺を庇ったりするから・・・!」
「マルクルは土の中。あとで掘り返そう」
「はぁ!?あいつ生き埋めになったのか!?」
「それよりグリント。早く逃げた方がいい」
「逃げるなんて出来るか!マルクルを助けないと・・・お前も手伝え!」
ようやく腰を上げるグリント。辺りを見渡してマルクルの痕跡を探すが、地中にいる人物の手がかりなどそう簡単には見つからない。
まして・・・。
「グリント逃げた方がいい」
「あん!?げっ!!」
突如、四足の竜が身を起こした。
そして目の前にいる2人目掛けて、その巨体を投げ出す。
岩石で覆われた竜が地面に激突。
地響きを伴いながら、2人がいた場所は巨大な岩石に押し潰された。
余韻のような衝撃と砂煙が辺りに舞い散る。
「あ・・、ぶっね〜」
2人は無事だ。
咄嗟に身を引いて地竜のダイブを回避していた。
「って、おい!竜がいる場所!」
竜が今立つのは、マルクルが生き埋めになっている場所だ。
「あの辺りにはマルクルが・・・た、助けねぇと」
「いや無理」
「は?」
「マルクルを助けるのはやめておいた方がいい」
「んな・・・仲間を見捨てる気かよ!?」
声を荒らげるグリント。だが、ルーは気に留める様子もなく竜に目を向けている。
「私たちの役目は竜を倒すこと。どんな犠牲があってもそれが1番大事」
「くっ!!」
「私はそう教わった」
「テメェ・・・イカれてやがる。仲間が死んだってのに眉ひとつ動かさねぇ。やっぱり、お前は俺たちとは違う」
「それは当たり前。私はーーー!」
と 次の瞬間、刺すような圧力が2人を襲った。
ルーとグリントは、咄嗟に竜に目を向けると巨大な顎をこちらに向けて開いていた。
ゴゴゴォ、と竜から地響きが聞こえた。
「咆哮だ!」
グリントが叫んだ。
ルーが構える。
と その時ーーー、
「ぬぁぁぁぁあああああ!」
雄叫びと共に大地が隆起して、竜の顎を打ち上げた。
岩と岩がぶつかる耳障りな音が響いて竜がのけぞる。そのおかげで咆哮が放たれることは阻止できた。
「まぁぁあたくっアナタたちは!竜を前にして口喧嘩とは・・・ピクニック気分ですかァァァァ!?」
ぼんっ と2人の足元が破裂して、マルクルが姿を現した。
泥に塗れているが、大したケガもなさそうだ。
「マルクル・・・!?あんた無事なのか!?」
「当たり前です。あの程度で死ぬわけないでしょう」
「はは・・・頑丈そうだとは思ってたけど、スゲェなアンタ」
「私が凄いわけではありませんよ。この外套のおかげですよ」
「外套?」
「と、無駄話はこの辺りにして・・・」
マルクルは竜に目を向ける。
岩で顎を打ちつけられたはずの地竜だが、大したダメージはなさそうだ。
低く唸り声を上げながら、3人を睨みつけている。今にもこちらに突っ込んできそうな勢いだ。
「地竜ですか。強そうですね。ですが、私たちであれば倒せるはずです。2人とも!」
「!」
「なに」
「今からあの地竜を狩りますよ」
「まじか・・・」
「当たり前。そのために来た」
マルクルは地竜に向けてまっすぐ腕を伸ばす。彼の腕にはめられた腕輪が、シャン と鳴った。
「それが私たち《滅竜部隊》の役目ですから」