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竜を狩る  作者: 六月十五
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地竜を狩る(1)

 荒涼とした大地だ。

 ごつごつとした岩がいくつも転がり、草ひとつない枯れた地面が広がっている。

 空には鉛のような色合いの重っ苦しい雨雲が広がっていた。

 そんな世界の果てのような場所に、ぽつねん と3人の人影があった。

 3人のうち、ひとりが口を開く。


「依頼があったとこに来てみたけど、この空気・・・マジでいるじゃん」


 歳の頃は、15、6と若い男だ。

 金髪の癖っ毛に、おそらく年上の女性に好かれそうな柔和で端正な顔。

 黒を基調とした金の刺繍が入ったマントを羽織っており、腰からは宝石をあしらえた剣を下げている。

 彼の名は、グリント=アルマーニ・マンシュリー。

 とある大貴族のご子息だ。


「もちろん居ますよ。問題なのは、1体かそうでないかです」


 返事をしたのは大柄の男だ。

 名を、マルクル=アルバウッド。

 彼も黒を基調としたマントを羽織っているが、金髪の少年と同じような刺繍のあしらえはない簡素なものだ。

 年は3、40代ほど。

 少年とは異なり武具などは一切持っていないが、宝石をあしらえた腕輪を両手首にしていた。


「へっ! 1匹だろうが2匹だろうが関係ねーよ」

「頼もしいですがグリント。マンシュリー家の名に恥じない働きをしてください」

「・・・マルクル。テメェ、家は関係ねぇだろ」

「関係はありますよ。マンシュリー家は()()()()()と古くから付き合いがありますから」

「ちぃ!」


 グリントは苦々しく舌打ちしたのち、残りのひとりに目を向けた。

 彼の視線の先には、2人と同じく漆黒のマントを羽織り、フードを目深に被った小柄な人物が立っている。

 

「・・・マルクル。アイツだよな?局長の推薦で入団した奴」


 グリントは小声でマルクルに問いかけた。


「はい」

「アイツ・・・マジで“アレ”なのか?」

「はい」

「ヤバくねぇか?もし暴走でもしやがったら・・・」

「・・・」


 無言でグリントを見下ろすマルクル。その刺すような視線に、グリントは罰の悪そうな顔をして首を引っ込める。


「悪ぃ。軽口がすぎたよ」


 薄い笑みを貼り付けて謝罪するグリント。


「安心してください。使えるから局長は入団を許可されたのでしょう。万が一ということもありますが・・・その点も心配いりません」

「何でだよ?」


 マルクルは、嘆息をひとつ。


「君がいるますからグリント。1匹でも2匹でも関係ないのでしょう?」

「おい、それって・・・」

「ねぇ」

「!」

「!?」


 と その時、フードの人物が振り返り、声を発した。

 フードの人物は年端もいかない少女だ。

 卵のようなフォルムをした小さな顔に、つぶらな瞳と通った鼻筋、小さく結んだ口がバランスよく配置されている。

 表情には愛嬌のかけらすらないが、美少女と言っても差し支えがない女の子だ。

 彼女は、ルルイエ=ルー


「どうした?」


 マルクルが尋ねとルーは可愛らしい声音とは裏腹にーーー、


「濃い魔素を感じる。近くにいる」


 平坦な口調で、そう口にした。


「は?近くにいるのは分かりきってるつーの?空を見ろよ。奴らがいる証拠だ」


 空を指差すグリント。

 まるで、空気を入れすぎた風船のように膨張しすぎた雨雲が空いっぱいに広がっている。

 時折、稲光が雲の闇を裂けて現れては・・・消える。

 今にも破裂して、雨や稲妻を大地にぶち撒けそうな様相だ。


「・・・分かってるなら、そこをどいた方がいい」

「あん?」


 次の瞬間、グリントとマルクルの背後にあった巨大な岩が割れた。

 いや、違う。

 動いたのだ。

 ズズズンッ、と 轟音を上げながら岩は起き上がった。

 爆発のように土埃が膨れ上がり、岩の破片が周囲に飛び散る。


「下がりなさいグリント!!!」


 マルクルが怒号を上げながらグリントを突き飛ばす。

 そのため、逃げ遅れたマルクルが津波のような土砂に巻き込まれてしまった。


「おい!マルクル!?」


 グリントが叫ぶが返事はない。

 数秒ののち、辺りを包む土埃が晴れていき、地中から這い出てきた“それ”は、姿を現した。

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