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人間をハカるモノサシ

作者: マボロショ

人の評価の仕方、いろいろ、ありますよね。

国葬にすべきだ、とか、イヤ、とんでもないことだ、とか。

魯の国の王子を拘禁して、権勢をほしいままにしていた陽貨にとって、「人としての生き方」を説き続ける、在野の孔子は、目障りな存在であった。

一度呼びつけて、ビシッと灸を据えてやろうと思って、作戦を立てた。

孔子の留守時をねらって、大きな豚肉料理を届けさせたのだ。

当時のしきたりで、こんな場合、孔子は、必ず、陽貨の所に出向いて、謝礼の言葉を述べなければならない。

さーて、どうすべきか。あんな生き方をしている奴に会いたくもない。

相手の作戦を、こちらも使おう。

相手が留守の時に行って、礼の言葉を託してくれば、会わずに済む。

次の日、陽貨の留守が確認出来たので、孔子は、作戦通り、陽貨の家に行き、豚肉料理の御礼の言葉を託して、引き揚げた。


途中で、陽貨が、急いで帰ろうとしているのに、ぶつかった。逃げようもない。


路上での、対面というか、対決というか、それが始まった。

ここまでは、陽貨の作戦勝ちである。

「多分、おいで下さると思って、急いで帰って来ましたのに、少し遅れてしまいました。御免なさいねえ。せっかくですから、もう一度、拙宅まで」

連れ戻された。

陽貨は言った。

「あなたは、徳の高い方だと聞いています。国の役職に就いて、働こうとなさらないのは、人としての生き方で、それでいいのでしょうか」

オレの家来になれという言い方だった。

「そうですねえ。何か任務を果たすべきでしょうねえ」

「むなしく時を過ごさずに、すぐ、思い切られたらどうでしょう」

今すぐ、ここで、オレの家来になれ、という言い方。

それに対して、孔子の答えは、するどかった。

「ハイ、なるべく早く、徳の高い(あるじ)を見つけて、お仕えしましょう」

言葉は、礼儀にかなっているけれども、真意は、「オマエのような悪徳漢には、絶対に仕えん」という感じ。


後の世の人は、孔子を高く評価した。しかし、豚肉料理を差し入れしてやろうというほど、貧しい生活ぶりだったということも、うかがわれる。

当時の人の目から見たら、悪どいながらも、権勢を振り回す陽貨の方が、エラく見えたのかも知れない。………


参考資料 「論語物語」 下村湖人 旺文社文庫 の83ページ

     「呪の思想」 対談・白川静・梅原猛 平凡社 の106ページ

何千年も経てば、評価は、安定すると思いますか?


文化大革命のころ、孔子も儒教も、破壊の対象でしたよ。


「孔子学院」を利用して、今、情報宣伝活動をしているらしいですよ、中国は。

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