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リスティリア救世譚  作者: ともざわ きよあき
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贖いしカイオディウム 第四話② 整えられた運命の中で

 総司とリシアにとって、王家の屋敷の「反対側」は未知の世界だった。ティタニエラに行く前に訪れた時も、その後ミスティルを連れてきた時も、首都ディフェーレスをくまなく探索するような余裕はなかった。大聖堂だけでも巨大に過ぎて、限られた場所にしか入ったことがないのだ。


 特別な場所ではない。高位の聖職者は大聖堂の中に自分の住居を持てるが、そうでない者はここに住む。一般民衆は『下』に。それがカイオディウムの構造だ。総司とリシアが辿り着いたのはつまり、美しく整えられた小綺麗な「街」そのもの。


 大聖堂デミエル・ダリアを模したように、暗い灰色の外壁を持つ家屋で整えられた街並みだった。魔法の光が灯る街灯が街をいくら照らしても、どこかほの暗い印象を受ける。


 総司が訪れたリラウフの街は、カイオディウムの構造からすれば『下』に位置づけられる田舎街だった。ただでさえ外交的な繋がりが希薄なリスティリアにあって、カイオディウムは更に国内でも物理的な分断が激しい国だ。生まれた場所以外のことをほとんど何も知らないまま一生を終える者がたくさんいる。


 『下』に位置づけられているからといって、リラウフの街は決して暗くはなかった。平穏で、一言で表してしまえば「つまらない」街だったのかもしれないが、そこにはごく一般的な幸福があふれかえっていた。ティタニエラにいた頃のミスティルが最も嫉妬するような、当たり前の小さな幸せがそこら中にあったように見えた。


 けれど、“ここ”は違う。誰もいない街を見て、総司は直感的にそう思った。


 間違いなく『上』にあるのに、この街はとても寂しそうだった。ディフェーレス直下、大聖堂へ続く「光のゆりかご」を要する『下』の街よりも物悲しく、どこか悲哀を感じさせるのは、単にヒトがいないからというだけなのだろうか。


 夕日に照らされて、ホラー映画のような不気味さも醸し出しながら佇む「一般聖職者」の居住区。すばしっこく動く小さな影を追って辿り着いたのは、入り組んだ街並みの奥深くにあった、無機質な公園だった。


 この街並みの不気味さを助長させるのは、あまりにも「整えられ過ぎた」構造だ。直線的で、入り組んだ通路の構造も効率を求めた結果であって、家屋のデザインひとつ取ってみてもおよそ遊び心はなく、住まう者のセンスや希望が反映されているとはとても思えない。機能的で効率的で、暖かみのない街。ヒトの気配がしないからではない。この街そのものが、多種多様な人格と思考を持った“ヒト”が住まうために造られていないのだ。この街は女神教を信仰する者を格納するためだけのもの。「小さな幸せ」になんの価値も見出していない場所だ。


 小さな影は公園に辿り着くと、申し訳程度に植えられた大きな木の根元に座り込み、膝を抱えた。その姿を見間違えるはずもなかった。


「ベルか……」


 リシアがぽつりとつぶやく。幼き日のベル・スティンゴルド。年の頃は10歳にも達していないだろう。総司とリシアは、幼いベルがそこから動きそうもないのを確認し、遠巻きにその姿を見守っていた。


「過去の光景だろうな……声を掛けても無駄とは思うが、さて……」


 腕を組み、リシアは冷静に現状を考察して、ふと総司を見た。


 そして、目を丸くする。


 総司の表情は驚くほど険しく、何かに対して憤慨しているように厳しかった。明らかに不機嫌で、怒っている。リシアと同じように腕を組み、幼いベルに視線を向ける彼の横顔から、この場で感じるのは不自然なぐらいの怒りの感情が発散されていて、リシアはしばし言葉を失った。


「ソウシ……? どうした? 何かまずいことでもあったか?」


 リシアが聞くが、総司は答えない。リシアの言葉に対して、なんのリアクションも返して寄越さなかった。リシアは仕方なく、総司から視線を外してベルの方へ――――


「あっ……」

「ここにいましたか、ベル。帰りましょう」

「やだ!」


 幼き日のフロル・ウェルゼミットが公園に現れて、優しくベルに声を掛けていた。ベルは首を振り、抱えた膝に顔をうずめてフロルに反抗を示す。フロルは困ったように笑って、ゆっくりとベルに歩み寄った。


 ベルの見た目の年齢から察するに、ざっと10年前後は昔の光景なのだろう。フロルも当然幼さの残る姿かたちだ。しかしその立ち居振る舞いは年相応のものではない。10代前半の少女とはとても思えない、大人の余裕と気品を醸し出す雰囲気だ。


 ベルの隣に腰かけて、フロルはそっと彼女の頭を撫でた。ベルは抵抗しなかったが、顔をあげようとはしなかった。


「そろそろ夕飯の時間だとか。おばあさまを困らせてはいけません」

「……帰りたくない」

「どうして? 美味しそうな料理がもうすぐ出来上がりそうでしたよ」

「フロルも食べていくなら帰る」

「……それは、少し難しいですね。戻らなければ」

「じゃあ帰らない」

「ベル」


 会話の流れを追えば、子供らしいベルの駄々っ子が類推できる。何のことはない、ベルは、自分のもとへ遊びに来てくれたフロルが、大聖堂に帰ってしまうのが嫌なのだ。


「では、明日はあなたが遊びに来てくれたら良い。礼拝が終わったら、大司教に“フロルに会いたい”と言ってください。私が話を通しておきましょう。どうです?」


 ベルは首を振る。幼いベルに対しても丁寧な口調で話すフロルはどうやら、小さな子どもは好きだが扱いが苦手なようで、どうしたものかと困り果てていた。


「ベルは絶対に大聖堂には遊びに来ませんね。私が外に出られる機会は限られているので、ベルが来てくれたらもっと会えるのに」


 ぴくり、とベルが謎めいた反応を示した。フロルはそれに気づかず言葉を続ける。


「大聖堂は怖い場所ですか? とても美しい場所がいくつもあるんですよ。あなたにも見てほしい景色が、たくさんあるのですけど……」

「……おばあちゃんが、大聖堂には入っちゃダメって」

「……え?」

「あたしは大聖堂に入るべきじゃないから、絶対に行くなって言われてる」


 フロルにとっては初耳だったようだ。目を丸くして驚き、みるみる表情が険しくなった。


「……ラティアンヌと話さなければ」


 フロルはすくっと立ち上がった。少し怒った表情だ。ラティアンヌとはベルの祖母の名前なのだろう。


 女神教の国であるカイオディウムの中にあって、大聖堂デミエル・ダリアでの礼拝を孫に禁ずるとは、フロルからしてみればとんでもない悪徳である。フロルはてっきりベル自身が女神教か、それとも大聖堂の雰囲気かを嫌っているから礼拝に来ないのだと思い、幼い子のわがままを強くとがめるのも憚られ――――個人的にベルのことを可愛がっているのもあって、彼女の成長に合わせて説得していこうと考えていた。しかし、ベルにとっては親代わりである祖母の命によってベルが大聖堂に入れないのだとしたら、それは看過できない。


「おばあさまのところに戻りましょう。大丈夫、私がついていますから。どのような事情があるのかはわかりませんが、話せばきっと――――」

「知ってる。何で行っちゃダメなのか」

「……そうなんですか?」

「あたしは“スティンゴルド”の力を千年ぶりに受け継いでるから、行ったらバレる。だから、行かない」


 ざあっと、風が吹いた。


 一連の会話を聞いていたリシアが、すうっと目を細め、眉根をひそめて目を閉じた。総司の話を聞き、フロルの心中をある程度知ったリシアにとって――――調子を取り戻し、普段の察しの良さを取り戻したリシアにとっては、この会話だけで情報としては十分だった。沈痛な面持ちのまま、リシアには、ここから先の二人を直視することが出来なかった。


「……スティンゴルド、とは何でしょう?」

「あたしの本当の名前。ベル・スティンゴルドって言うの」


 考えてみれば当然のことで、レスディールに連なる家系は、千年前にカイオディウムの支配体制が大きく変わってから、名を偽って過ごしてきたのだ。


 いつの日かウェルゼミット教団とエルテミナの真実を糾弾し、真の歴史を明らかにするためには、カイオディウムに残る必要があった。リスティリアにおける各国の繋がりの薄さを考えれば、他国に逃げてしまえば情報が入りづらくなってしまう。そのための方策として、エルテミナもまた新体制の中で余裕がない間に別の名を騙り、国内に溶け込んだのだ。


 一体この日、この公園に来るまでの間にどのような出来事があったのかはわからないが、ベルはそこから先も止まらなかった。それはフロルのことを心から信じているから、でもあっただろうが、ベルはウェルゼミットの正統後継者であるフロルに、ベルが知る全てを話してしまった。


 フロルが悲愴な覚悟を決める一つのきっかけ――――フロルにとっては美しくも非情な思い出。リシアはあまりにもいたたまれなくて、隣にいる総司に視線をやった。


 総司は拳を握り固めて、二人をじっと見ていた。目を逸らしていなかったが、しかしリシアには、やはり総司の憤慨の理由がわからない。


 やがて、二人の姿が黒い影となり、霞のように消え去った。


「……フロル枢機卿がベルのために死のうとしているのは、“これ”がきっかけか」


 不気味な物悲しい静寂の中で、リシアが呟いた。


 総司は答えない。リシアの方を見ようともしない。ベルとフロルの姿が消えた虚空を睨みつけ、何かを考えてはいるようだ。


「ッ……なんだ!?」


 異常な気配を察知して、リシアが身構えた。レヴァンクロスを抜き放って、総司に警告するように叫んだ。


「何か来るぞ!」

「わかってる」


 ビキリ、と空間に亀裂が走った。公園の入り口付近に、何もない空間に黒いヒビが入り、やがて青白い光が漏れ出してくる。


 続いて、ズン、とヒトの手が突き出てきた。リシアはいよいよ本気で警戒を露わにして、いつでも斬りかかれるように足に力を込めた。


 だが総司は動じない。ヒトの腕と共に空間の裂け目から突き出してくる「天女の衣のような布」を見て、ただ険しい顔のまま睨みつけるだけだ。


「よぉいしょぉ!!」


 卵の殻を破るようにバリン、とヒビを突き破って、レスディール・スティンゴルドが転がり出てきた。リシアはぎらりと目を光らせて飛び出したが、総司がその肩を掴んだ。


「良い。さっき話したレスディールだ」

「……あの方が……?」

「あー! やってみるもんだねマジで! なんで入れたのかわかんないけど……ええナニコレ! 居住区じゃん! アレ? 外出ちゃったの!?」

「いいや、出てない。大聖堂の中、“核”の中だと思う」


 大聖堂デミエル・ダリアの“核”に入ったレスディールからすれば、その正体が今首都ディフェーレスを模した空間だということは予想外だったようだ。目をぱちくりして驚きを露わにしながらも、総司とリシアを見つけて目を輝かせる。


「そっか、まだ中か……久しぶりだね!」

「さっき別れたばっかだよ」


 総司は首を振りながら言う。レスディールは陽気に笑いながら、


「キミの感覚ではそうかもしれないけど、実はそれなりに時間が経ってるんだよ。“ここ”と“ここ以外”じゃいろいろ勝手が違うわけ。あたしがどんだけ苦労してここへ来たか! 時間が許せば上下巻の小説に綴って読み聞かせたいところさ!」

「ご苦労なこった」

「そしてようやく会えた、キミの相棒にも。良く知ってるよ、リシア・アリンティアス。会えてうれしいよ」

「ハッ……光栄です」


 千年前の人物の思念、残滓。目上と言えばそうなるので、リシアはひとまず礼を欠かないよう挨拶する。レスディールは相変わらず笑ったままだが、その声には真剣みがあった。


「さて、言った通り積もる話は時間が許してくれないもんでね。そろそろヤバいんだ、外が。いよいよ激突だ。大聖堂デミエル・ダリアは今、オーランドの狙い通りに“ラーゼアディウム”に引き寄せられてる」

「お待ちください」


 リシアは慌ててレスディールの言葉を遮った。


「どういう意味です? オーランドの狙い通りに……何に? 引き寄せられて……?」

「“ラーゼアディウム”だよ。あたしもすっかり思慮の外でびっくりしてる」


 レスディールはふわふわと浮かんで総司とリシアの傍に寄り、二人に話して聞かせた。


「言い換えるなら“断罪の聖域”。大聖堂の中に聖域の最深部が移されてるのは知ってるでしょ?」

「ええ、さっきソウシから聞きましたが……」

「要はその“残りの部分”だよ。天空聖殿“ラーゼアディウム”。かつて“空に浮かんでいたカイオディウムの聖域”の残骸だ」


 レスディール曰く。


 カイオディウム最強の軍事力であるそれの正体は、天に浮かぶ “断罪の聖域”の内、大聖堂に移されたかつての聖域の最深部を除いた領域全てである。


 カイオディウムの首都ディフェーレスは、かつて女神の領域と接続できたカイオディウムにおける“聖域”の魔力と、大聖堂デミエル・ダリアに移された聖域にとって最も重要な最深部の魔力によって浮かぶ都市。首都ディフェーレスは大聖堂デミエル・ダリアを中心として、王家の住まう場所をはじめとするいくつかの街が衛星のように周囲に点在する構造に見えるが、実際には違う。大聖堂デミエル・ダリアが存在する場所そのものも、まさしく惑星の引力に囚われてその周囲を回る衛星の如く、“断罪の聖域”の魔力によって浮かんでいるのだ。


 最深部を除いた聖域にウェルゼミット教団が手を加えて創り出したラーゼアディウムは、先代枢機卿の時代に本格運用が可能な状態になった。今なお聖域に残り続ける莫大な魔力を用いて、大聖堂の権能である魔法による転移をラーゼアディウム丸ごと行える上に、魔法の力を増幅させる砲台としての役割も持っている。リラウフでミスティルが感じ取った「ミスティル自身の同質」の力の正体は、この転移の機能だった。そしてオーランド・アリンティアスは、現カイオディウムで最も効果的にその力を使える魔法使いだ。増幅器としての機能を十全に使って、伝承魔法“ゼファルス”による破壊的な魔法を放つことが出来る。


 だが、先代枢機卿の執政時の末期に完成と運用開始に至ったラーゼアディウムは、フロル枢機卿に代替わりすると同時に、強烈な縛りが設けられた。


 大聖堂デミエル・ダリアが擁する聖域の最深部は、ラーゼアディウムの物理的な面積と比較すれば非常に小さい。故に魔力としてのパワーバランスはラーゼアディウム側が圧倒的に上位なのだが、最深部は聖域の機能を統括する場所でもあった。大聖堂の主、ひいては聖域の最深部の主でもあるフロルによって、ラーゼアディウムはカイオディウム国外へ決して出られず、また攻撃出来ないという制約を課せられることとなった。フロル枢機卿はラーゼアディウムの力を国防以外に用いることを許さなかった。つまり、万が一カイオディウムの領域内まで他国の侵略があった場合や、国内において活性化した魔獣の活動をはじめとする非常事態が発生し、聖騎士団では対応しきれない場合にのみ運用可能な状態にしたのである。


 つまるところ、オーランドの狙いは「ここ」にあったのではないか、というのがレスディールの見立てだ。


「フロルは未だに大聖堂の主ではあるものの、権能を操る力自体が弱まってる。まあ、ちょっと前から母の力の継承者ですらなくなったうえに、キミたちのお仲間によってフロル自身の護りも削られちゃったしね。要はこの機に、オーランドは“断罪の聖域”を完全復活させるつもりなんだろう」

「……そして枢機卿を殺し、大聖堂デミエル・ダリアの権能を掌握して……フロル枢機卿が課した制約を消すのが狙いか!」

「と、思うんだよね、あたしは」


 オーランドの狙いがそこにあるのだとすれば、その先にあるのは下手をすれば「戦争」、他国に対する侵略だ。


 聖域に残された莫大な魔力で、聖域ごと自在に転移する機能を有し、街一つを容易く消し去る威力の魔法を実現する武力。


 リスティリアで“力在る者たち”を何人か見てきた総司も、「制限のないラーゼアディウム」を何とか出来る者は知らない。総司が出会ってきた中で最も強い存在と言えば、本気のミスティルか本気のアレインかといったところだが、オーランド個人と相対するならともかく、ラーゼアディウムの脅威を単独で止めろとなると流石に分が悪いと言わざるを得ないだろう。


「聖域の復活はフロルを殺した後でも良かったんだろうけど……うちの子孫とエルフの子が予定外の行動をしたことで、オーランドの予定も多少変わったんだろうね。多分、まだもうちょっと先だったんでしょ?」

「ええ、まあ……少し早まったようですね。そしてそれすらも、オーランドに……或いは、王女ルテアに読まれた」


 ヒトの心の機微に聡い王女ルテアにしてみれば、ベルが今回の作戦に歯がゆい思いを抱いていて、どこかで抜け駆けするような行動を起こすことなどお見通しだったのだろう。


 ラーゼアディウムは動き出し、大聖堂デミエル・ダリアを引き寄せて、大聖堂が内包する聖域の最深部と結合しようとしている。


 聖域としての本来の力を完全に取り戻したラーゼアディウムが、オーランドによって掌握されてしまうのは最悪の事態だ。初めからそれが狙いだったのなら、ただ聖域を復活させただけで終わるはずがない。そうでなければ、王女ルテアに協力する「利」がない。


「だから言った通り、何はともあれオーランドを止めなきゃ話にならないってわけ。少なくともあっちはもう止まる気がないからね。キミたちがなにもしなければ、大聖堂はオーランドの手に落ちて、その先は……まあ、いろいろ良くないことが起こるんだろうね」

「すぐに戻ります。外へ出る手段はご存じではないのですか?」

「ご存じじゃなかったんだけど、ほら!」


 レスディールは何もない空間に手を翳し、ぐぐぐぐっと重い扉を開くような動作をした。


 空間に再びヒビが入り、亀裂が少しずつ大きくなっていく。


「ここにも入って来れたし、よくわかんないけどいけるみたいなんだよ! だから任せて!」

「それはありがたい……! ソウシ、急いで外へ――――ソウシ?」


 総司はてくてくと、ベルが先ほどまで座っていた木の根元に歩み寄ると、リバース・オーダーを土の地面にガン、と突き刺し、その場に座ってあぐらを掻いた。


「何をしているんだ? 間に合わなくなるぞ!」

「いいや」


 リシアの焦った叫びに、総司は冷静に首を振った。


「多分な……間に合わねえなんてことはないんだよ、リシア」

「……ソウシ……?」

「ぐぬぬぬ……おりゃ!」


 レスディールが亀裂をこじ開けて、ヒトが通れるぐらいにまで、青白い光の漏れる穴を開ける。だが、総司はその場から動こうとしなかった。


「お前の言いたいことがわからない……一体、何を……?」

「俺達は多分間に合う。“そうなるように出来てる”んだ。全部……アイツが整えた筋書き通りに、事は進んでる。アイツが敷いたレールに乗っかってる……!」


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