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 一旦玄関まで出てきたあと、呼吸を整え、今度は二階への階段を恐る恐る上がっていく。一階は、北側の雨戸のない窓や、台所の窓からの明かりでうっすらと室内を確認できたが、二階への階段に窓はないのでほぼ真っ暗だ。とがったものを踏んだり、踏み外さないように、慎重に急な階段を上がっていくと、やっと窓からの光で明るくなってきた。


 二階にもトイレがあった。子供たちがいたころは便利だっただろう。いつか二世帯で住むことを想定していたのかもしれない。階段を上がり切った先にあったドアをとりあえず開けてみたら、小さな手洗いがある洋式トイレだった。水が残っており、緑色だったのですぐにドアを閉めた。急に具合が悪くなる。本能的な嫌悪感が体を覆う。何年水を流してこなかったんだ。ここへきて、くそオヤジへの怒りが頂点に達し、乱暴に窓を開けると大声で悪態をつきそうになったが、北側の家が目の前でやめた。ある日突然空き家の窓が開いて、マスク姿の男が怒り狂ってたら怖すぎる。


 通報の危機を脱した勝也は、さっさと終わらせて下りようと、一階よりも歩きずらい二階の廊下を進む。廊下は板張りだが、こんなところにも古いストーブや扇風機、掃除機などが置かれていて非常に狭い。西側の突き当りに窓があり、そこから光が差し込んでいた。


 二階西側の部屋もまた和室だった。南側にだけ窓があり雨戸が閉められている。段ボールが積まれた部屋の奥、薄暗い中で赤い着物を着た日本人形を見つけてしまった。いよいよ勝也の頭の中は、混乱を極め、先ほどのゴム手袋の経験から白手袋をしながら生活をするアイデアが頭をよぎっていたが、そこに日本人形が合わさり、「地獄先生ぬ~べ~」を思い出すに至った。ぬ~べ~は黒い皮手袋だったっけなどと考えながら振り向かないようにしながら今度は東側の部屋へ向かう。


 なんとか襖の引き戸を開けると、こっちはなかなか広いようだった。そのまま東側の壁が見える。南側と東側に窓があり、雨戸が閉められていたので非常に暗かった。勝也は一つだけ確認しようと、荷物をどけながら、奥に進み、なんとか東側の窓にたどりつく。掃き出し窓がなかったので心配はしてなかったが、雨戸をあけて、そこに屋根しかないことを確認すると、一安心した。昔の家によくある増築したベランダのようなものがあると片づける手間が大幅に増える。家周りの石垣もそうだが、いくら収納できるとはいえ、勝手に構築物や家屋に手を出すには、大家の許可も行政への手続きもありそうで嫌だったのだ。石垣はしょうがないとしても、ベランダまでついてこなくてよかった。


 



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