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「もしもし、田中です。」
そう言って電話に出ると、相手は文京区の不動産屋だった。夫婦でやっていたが旦那さんが数年前に亡くなってからは奥さん一人でやっているという話を聞きながら、何とか自分の希望を伝えて退散したところだった。文京区は南の千代田区程開発されきってなく、古い住宅街もちらほら残っているので、そういう期待を込めて何件か回ったのだった。
店を訪れた時と同様いろんな世間話をされてしまい、昼休憩の残り時間を気にしながらなんとか話を促すと、勝也の希望するような物件が見つかったとのことだった。勝也は後日話を聞きに行くことを伝えて電話を切ると、自分の狙いが当たったと小さくガッツポーズをした。アイテムボックスの能力をせっかく手に入れたのに使う場面は最初だけでその後ほとんどなかったので、家賃が下がるかもしれないよりもやっと能力を使えることを喜んだ。引っ越しどうしようと考えたところで、自分はもう業者に頼む必要はないんだと気づき、こんなところでも節約ができるとニマニマしながら仕事に戻っていった。
その週末の土曜日、勝也ははやる気持ちを抑えながら電車に乗って文京区にある不動産屋へ向かった。10時過ぎごろに店に入ると、書類の積もった机の向こうでテレビを見ているおばあさんがいる。こんにちは、と大きめの声で二回ほど呼びかけるとやっとこちらに気づいた。そこから勝也をまるで初対面のように扱うので、勝也は少し不安になりながら電話で聞いた希望にぴったしの物件の話を振ると、おばあさんもああ、と思い出したようで、奥の机の上にあった物件情報の紙をもってきた。
勝也の条件は家賃三万円、その代わりどんなに汚くても、物がたくさんあっても自分で片づけるというものだった。おばあさんが出してきた物件は、一戸建てでしかも小さいながらも庭があるというものだった。勝也は驚いた。そんな物件が都内、23区内にあるものなのかと思った。どれほどぼろいのかと思い見てみると1980年代に建てられていて、そんなに古くない。なんどかリフォームもされていて、水回りやエアコンなど、最新とはいかないが普通の賃貸アパートと同じぐらい新しいというような話だった。ますますどうしてこんなに安いのかと思ったが、それはその家の持ち主や親類との話を聞いてわかった。
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