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勝也はこれまでこの能力を使って収入を増やすことを考えていた。支出については、災害準備品を買ったりしたため一時的に増えたが、部屋の片づけの結果、無駄なものを買いすぎていたという反省から、必要最小限に抑えているため、削れるとは思っていなかった。
節約は固定費から。いろんなお金の節約術に書いてある一丁目一番地を忘れていた。その代表格、家賃。能力を使って大儲けして、家を買うなんて考えてきたが、それを世間にバレずにやり切るには、完全犯罪ができるような頭と、運が必要だった。だから考えてはいてもそこで思考は止まっていた。しかし、家賃を削ると考えれば、打てる手はいくつもある。現在の家賃は8万円。これでもかなり低目のアパートを見つけられたと喜んでいたが、もしかしたら毎月5万円を浮かすことができるかもしれない。可能性は十分にあった。
勝也は二人組の話を聞くのをやめると、スマホで近くの不動産屋を検索して、片っ端から保存していく。今まではネットの検索サイトで探すのみだったが、勝也の目的の通りの物件を探すには、不動産屋、特に昔からやっているような地域に根差した不動産屋が必要だった。一通り登録すると一番近いところから当たっていく。そこで勝也は条件として、片づけないといけないものがあればすべて勝也がきれいにする代わりに家賃3万円を目安で探してほしいと頼み、連絡先を置いていく。不動産屋の方も、そんなのないと言って5万円から6万円の溜まっているボロアパートを勧めてくるが、勝也はそれでも何か情報があればでいいからと言い切って店を後にしていった。
翌週、勝也は平日の仕事を終えた後も帰り道に不動産屋に寄ってから帰るという生活を繰り返していた。思い立った日からもう25件も回ると、何件かの不動産屋で手ごたえがあった。勝也の読み通り、古くからやっている不動産屋には、昔からのつながりのある大家や住民から不動産に関する困りごとを相談されることがあるようだった。「ちょっと聞いてみる、期待しないでね。」と言われることも数回あった。低い家賃で今より広い訳アリ物件に住めれば最高だなと想像しながら勝也はうきうきと過ごしていた。
そんな6月の晴れた日、昼休憩を過ごしていた勝也の携帯が鳴った。
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