11
とある休日、勝也は家を出て東武東上線に乗ると池袋まで出てきた。この能力を使って金を稼げる何かを考えようとしたが、平日は仕事を済まして生活を送ることでエネルギーを使い果たすため、休みの日にじっくり考えようと散歩がてら街を見て歩くことにしたのだ。
駅から出て人通りの多い繁華街を歩いていく。休日ともあって多くの人たちが歩いていた。この一人一人に何かしらの収入源があるんだよなぁなどと考えているうちに繁華街も通り過ぎマンションや住宅が増えてきた。パッと思いついたのは宅配業だった。荷物をいくらでも抱えられる自分は、歩く2tトラック、いやもっと積載できるという非常に有利な条件だが、どうやれば人にバレずにできるのか。こうして世の中を見渡してみれば、現代社会はあらゆる需要に応える仕事があり、そこに従事している人たちがいる。同業他社と戦うために、一円単位でコストを抑え競争している。そこにいきなりとんでもない量をさばく人間が現れれば、どんな方法で行っているのか、消費者側にはわからなくても、そういった情報は同業者にはすぐ伝わる。勝也の起こす大いなる違和感にもすぐに気づかれるだろう。
古本屋の前で立ち止まる。昔の売れそうな本を仕入れ、ネットで販売するという副業は最近特にサラリーマン向けのビジネス誌などでも取り上げられている。勝也の能力は、歩く巨大倉庫。売れそうなものを片っ端から仕入れて、アイテムボックスにとりあえずしまっておく。それをネットで売りに出して、注文がくれば梱包して発送するだけだ。仕入れ時には持ち帰る手間があるが、それ以外はすべて家の中で済む。これはいけるかもしれない。ネットで売られてる商品がどこで保管されているのかなんて気にする人はほとんどいない。欲しいものがちゃんと届けばいいのだ。チケットや限定品などは価格も高くなるが、その分注目もされてしまう。やはり中古本ぐらいがちょうどよいのかもしれない。
そんなことを考えながら街を歩いていると丁度いいところにカフェがあった。おしゃれで緑多めのカフェ。少し休憩と勝也はアイスコーヒーを頼んで隅っこの席で落ち着いた。考えることは能力発現からこれまでのことだ。部屋のモノが整理できただけでもなんだか生活の質が上がった気がする。必要なものだけしかない部屋は機能性に満ちて、何をするにもスムーズだ。掃除も行き届き常に清潔な部屋に帰ってこれる。仕事帰り、ドアを開け部屋の明かりをつけると、そこに満足感と充実感を感じていた。いい気持で過ごした夜が明け、朝出社前にいい気持でコーヒーでも飲んでゆったり過ごすと、やはりいいリズムで仕事にも取り掛かれる。他者から見れば変化はわかりづらいかもしれないが、勝也的にはかなり仕事がはかどるようになってきた。
分けることは解かること。いつだか読んだビジネス書に書いてあったそんな言葉を思い出す。取捨選択が意識づいた結果、仕事のほとんどは最初の判断次第で進むことに気づいた。これはこの流れ、あれはあの流れ。そして簡単に判断つかないことを後回しにして後で期限に焦るというのがこれまでのパターンだった。後回しにしそうなことにもとりあえずの判断で進め、すぐ修正するという考えてみれば当たり前の行動も億劫に感じてできないでいたが、身にあふれる充実感の為せる業か最近ではそれもスムーズにできるようになっていた。もちろんデスク周りの整理整頓も済んでいる。
副業、小遣い稼ぎにそんなに焦っていないのは、この本業での充実感もあったせいかもしれない。アイテムボックスという能力を手に入れたおかげで小市民勝也の生活満足度は上昇し、幸福感を自覚できる程度には調子に乗っていた。
そんなことをつらつらと考えていた時、隣の席の女性たちの会話が耳に入ってきた。
週一投稿予定です




