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チェケラの効果は抜群だった。
仕事中や帰りの道中でたまに起きていた能力を使いたい衝動が、簡単に抑えられるようになったのだ。チェケラを言えるか否か、そんな基準が出来たことで自然と力は家の中で使うものという認識に変化したようだった。
部屋の大掃除も終わり、外で勝手に発動する危険もある程度抑え込めたところで、勝也はこの能力を持て余し始めた。都会で周りの人間に不審に思われないようにするということは思っていた以上に制約が多く、はっきり言って普通に過ごすしかない。ごみ屋敷のような物件を安く買い取って、きれいにして住もうかなどと考えてインターネットで探してみてはいるが、なかなかいい物件には出会わない。不動産屋や競売物件なども考えたが、そのごみをどう処分するのか問われたときにいいごまかし方を思いつかないでいた。
そんな時、東日本大震災のことを思い出し、当時の東京の混乱や、また新たな災害が起きたときに備えて、災害時の物資をそろえようと思い立つ。これまでは部屋が狭く、とても水や食料、災害対策グッズなどはおけなかったが、今なら常備できる。
思い立ったが吉日、勝也は休日を使い、ネットの災害対策マニュアルやブログを読み漁り、近所のスーパーからホームセンターを回って買い込み、家に持ち帰るとチェケラしていった。足りないものや重いものはネット注文して届いた先からチェケラしていく。
水道が止まった場合、電気が止まった場合、ガスが止まった場合、食料や飲料水が不足した場合、それぞれに合わせて買い込んでみると、思った以上に多くなってしまった。それに合わせて費用がかさむ。特に不安になったトイレ関係のグッズは一か月は持つというぐらい買ってしまった。下手に能力があると考えなしにモノを買ってしまうという失敗を初めて経験した勝也だった。
災害対策はできた。大掃除も終わった。世間にバレてはいけない。ここへきて本当に能力の使い道に悩んだ勝也は、少し寂しくなった自分の預金通帳を見ながら、なんとか金にできないものかと考え始めた。せっかくの能力、お金にしたいというのは若い勝也にとって当然の欲望だった。
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