妹忘年会 ─妹(偽物)との饗宴─
妹忘年会。
このパワーワードに心沸き立つ諸兄には申し訳ないが、妹に理想の女性像を重ねるのはムダなことだ。
優しくていつも兄を立ててくれるのが妹だって?
お前の中では、そうなんだろうな、お前の中ではな。
いいぜ、だったらその幻想をぶち壊す。
「流石、お兄様です」
なんて言ってくれる妹は物語の中だけだ。
「バカ兄貴、死ね」
これが現実だ。人生相談に乗っている間に恋愛関係に入るなんてキモイ妄想は、妄想に留めておけ。
血の繋がらない妹という話も古典的だし、ましてや恋愛感情を持つなんてのも使い古された筋書きだ。
そもそも数百年も生きている地獄の悪魔から『神にーさま』と呼ばれる僕の立場が分かるか?
本当にいい加減にしておけよ。
外では優等生ぶる美人の妹も、玄関を潜ればぐうたらな「喰う寝る遊ぶ」の三連コンボを炸裂させる。
実妹なんて、理想を壊す存在でしかない。
だったら、他人の妹だって?
よせ、妹キャラのメイドが接客する喫茶店に行ったら、大学の先輩が妹キャラのメイドだった時の絶望感が理解できるか?
可愛い妹だと思ったら、男の娘だった時の絶望感が理解できるか?
三姉妹の末妹だし、姉さん女房でも構わないからって結婚したら、気の強い嫉妬の塊で、ずっと恐妻家だった男も実在した。
妹に理想を求めるなんて不毛だ。
さんざん可愛がって来た妹が反抗期に入って口も聞いてくれない時の悲しみが理解できるか?
「お兄、お兄」と懐いていた妹が竹筒を咥えていた時の気持ち、分かるか?
妹なんて……
妹なんて……
取り敢えず忘年会の参加申し込みをしておこう。
まだ早いかな?
いや待てよ、もしかしたら芋煮会の変換ミスかもしれないじゃないか。
ひとまず確認の電話だ。
「もうお兄ちゃんったら、レナに意地悪しないで」
胸を撃ち抜かれた。
全ての予定を変更して絶対に参加する。
今から中止なんて、もう遅いからな。