第一章、何もかもが違う幻想郷 ⑥
今回オリキャラが登場します。
ご了承ください。
では、どうぞ!
【第六話、鬼と鬼(片方は名前だけ)】
何故、僕が夜中の12時なのにお腹が減っているのか。
何故、布団の中にいるのではなく僕の家の外にいるのか。
……まぁ、真実はいつも単純で紫を怒らせてしまったのだ。
僕が紫の晩御飯を作るためにスキマで家に落とされたときに聞いたんだが
どうやら二回目の吸収はそうとう効いたらしく、かなり怒っていた。
そのときに明日の朝ごはんまで飯抜きと徹夜の自主練が言い渡された。
…誰か僕の師匠とクーラーを交換してくれ。 いや本気で。
「はぁ、取り合えず、やれることはやってみるか。」
さて、【ドキドキ!なんとか修行】を始めよう。
まずは器の力を使って何が出来るかだがこれぐらいは紫に教えてほしかった。
「んー。 器の力をイメージするとわりと何でも出来そうな気がするんだよな、
よし! いっちょやってみるか。」
そして右の手のひらに器の力が集中するようにイメージしてみると、
なんと青白く輝く野球ボールぐらいの球体を出せた。
「おー。 まるで怖い話とかに出てくる火の玉の青い版って感じだな。」
だがこの火の玉。 出せたのはいいんだが、腕を振っても飛んでいかないわ、
触ろうとしても透けて触れないわで本当に手のひらに出せただけだった。
「…もしかして出すというイメージをしたから出たのか?
ということは…」
僕は手のひらにある火の玉を2メートルぐらい離れた木にぶつけるようにイメージしてみた。
…木を三本ぐらい貫通して火の玉は消えていた。
「…おいおい。 もしかして幻想郷の木は根性なしなのか?
ただの火の玉だぞ?」
僕の想像以上に器の力というものは強力みたいだ。
でもこれならクレイジーデーモンズにも勝てるかもしれないな。
「…よし。 じゃあ次は身体強化とかやってみるか。」
…器の力を自分の身体全体の血液に混ざるイメージをしてみる。
「おー。 なんか体が軽くなった気がする。 試してみるか。」
さっきので火の玉のイメージは掴めたから今度は限界まで力を込めるようにイメージする。
…なんか赤いんだけど。 それに湯気みたいなものも出てるし。
「……飛んでけええええええ!!、 えええええええ!?」
直後、目をおもわずつぶりたくなるような光と体を焼くような熱風に襲われた。
今度は30メートルぐらい離れたところにある木にぶつかるようにイメージしたんだが
ぶつかった周囲20メートルぐらいが大爆発をおこした。
それも普通の爆発の仕方ではなく、爆発した瞬間に爆発した中央は白く周りが赤く輝いていた。
「…器の力すげー!」
やばい。 男なら誰しも一度は爆発というものにかっこよさを感じるだろう。
僕はそれを自分で生み出したんだ。 興奮しないわけがない。
「すごいな。 身体強化をするだけでこれだけ違うのか。
…ん? なんだ? なんかき、気持ち悪い。」
考えてみたら当然だった。 紫は器の力を全て吸い取ったとき倒れていた。
今僕の器の力は紫から二回、吸い取った分しかない。
それで身体強化といういかにも力を消費しそうなことをしたうえでの
限界まで力を込めた一撃を放った。
…ようするに燃料切れである。
「う、や、やばい。 意識が……。」
…………。
「…ん? なんだー? こいつ。 うわ! 地面がえぐれてる…。
もしかしてこいつが? …強そうには見えないけどいいか!戦えばわかることだし。
でも姉ちゃんたちにとられるのはやだなー。 …んー。 よし!」
…………。
「……閻魔様に会えなかった。何故だ。 僕は嫌われてしまったのか?
いやいやそうしたら僕は生きていけない……?」
「なにいってるんだ? お前。」
…おいおい。 勘弁してくれ。 また幼女か? 幻想郷は幼女しかいないのか?
ならわりとマジで閻魔様に会いに行くことを考えだした方がいいかもしれない。
さて僕に声をかけてきたこの幼女だが、僕が布団で寝かされていることから
この子が倒れた僕をここまで運んできてくれたのだろう。
見たところ歳は11歳ぐらいに見えるがよくできた子だ、どこかの、
人を誘拐してそのうえ怒ったら家から追い出すくせに自分のご飯は作らせる
ポンコツ幼女スキマ妖怪とは大違いだ。
「ああ、ごめん。 そこにいると気付かなかったんだ。
君が僕を助けてくれたのかい?」
「そうだ! 威様がお前を助けてやったんだ! 感謝しろ!」
…いやいや、この子はまだ幼女なんだ。
可愛いもんじゃないか、このくらい元気な方がこっちも嬉しくなる。
でも、この子は変わった見た目をしてるな、
髪はおかっぱというよりは自由に伸びている感じだが、髪が青くなっている。
紫によると幻想郷というのは僕が元居た世界と歴史は同じらしい。
違うのは幻想郷ができたか、できなかったかだけだそうだ。
ちなみに今僕が生きている時代は江戸時代らしいが紫がいうには人間が住んでる【人里】はこれ以上発展することがないように隔離しているらしい。
ようするに幻想郷という世界は【妖怪と人間が共存できる世界】で、
幻想郷は元の世界から切り離されたもう一つの世界ということだそうだ。
…だからこそこの子は不思議だ。
髪は青いし、胸の所にはさらしみたいなのを巻いてるし、
腰には布を後ろから腰に巻いてちょうちょ結びしてるだけだ。
服を買う金もないのだろうか。
なのに見ず知らずの僕を助けてくれて…本当にいい子だ。
「ああ、助けてくれてありがとう。
ところで僕は鬼怒って言うんだけど君の名前はなんていうのかな。
よかったら教えてくれないか?」
「いいぞ! 性は花堂、名は威様。
みんなからは【威風堂々の花堂威様】って呼ばれてる!」
「そうか、威様ちゃんか、いい名前だな」
「当たり前だ! お前よりいいぞ!」
「…そうだな。」
さすがに少し傷つく。 しかも悪意とかはまったく無く、
純粋にそう思ってることが伝わるから何とも言えない気持ちになる。
「よし! 鬼怒! お前元気になったか?」
「? ああ、もう大丈夫だ。 いろいろとありがとうな。」
「気にするな! じゃあ鬼怒! 外に出るぞ!」
…ああ、なるほど。 お見送りまでしてくれるなんて本当にいい子だ。
「…そうだ。 威様ちゃん、ご両親はどこにいるのかな?」
僕は威様ちゃんについていきながら訪ねる。
この子はこんなにいい子なんだ。 となると親がどういう人なのか気になる。
それにお礼もまだ出来ていない。
…それにしてもやけに広い家だな。
なんでこんなに大きい家の娘があんなに貧相な格好をしてるんだろうか。
「? 親のことかー? それなら100年前に食ったぞ。」
「…え?」
「威様の姉ちゃん達と一緒に食べたんだ。
だからどこにもいないぞ?」
…思わず足が止まる。
目の前の威様ちゃんの言ったことが理解できず固まってしまう。
それを不思議に思ったのか威様ちゃんが近づいてくる。
「……威様ちゃん」
「なんだ? 鬼怒?」
「…君は人間かい?」
僕は知らなかった。
鬼がこんなに小さくて
こんなに可愛らしいのに
一本の角が現れると共に笑う表情が、
「…ふふふ、」
………こんなに残酷ことを。
オリキャラの読み方は「花堂威様 はなどういさま」です。
いやー可愛いですね。 ね?