第三章、ゆらりと佇む亡霊屋敷 灯雷伝 ⑥
【第六話、長く悲しい昔話に寄り添い愛する灯なし】
...鬼怒が幻想郷に来るより前のこと
小さなこどもは地獄に落ちました。
そのこどもはいつの日か死ぬことを望み...
いつの間にか自分を見失い...
いつまでもある少女を探していたという........
これは一人のこどもの昔話
今を知るための 理由を知るための 思いを知るための
長く、悲しい昔話...
...【灯雷伝、復讐に寄り添う人影なし】
「灯雷ー待ってよー!」
「妖夢ー! 早く来いよ! もうすぐだぜ!」
俺の名前は【灯雷 ひらい】!
この前10歳になって子供の作り方を知ったんだ。
子供は神様と悪魔が作って、いい子供は神様が悪い子供は悪魔が作るらしい。
まぁ、俺はもちろん神様に作られたけどな!
後、俺と同い年のこいつの名前は妖夢!
いつ出会ったとかはあまり覚えてないけど昔に知り合ってからずっと友達のいいやつだ。
たまにどんくさいがそれでも良いところの方が多いと俺は思う。
そして今日! 俺と妖夢は大人たちが絶対に近づくなと言っていた洞穴に来ている。
なんでも昔に地底の化け物が開けた穴らしいが、そんな話に騙される俺じゃない。
もし本当だとしても関係ない! 俺は村一番の力持ちだからな!
鍛冶屋のおっちゃんが言ったんだから本当だ。
「妖夢! 早く来いって!
置いてくぞー!」
「そ、そんなー!
…………ん? ねぇ灯雷!
もしかしてあれじゃない?」
「え!? どこだって!?」
「ほら、あそこ!」
妖夢の指差したところにはでっかい穴があった。
きっとあれで間違いないんじゃないか!?
いや、あれで間違いない!
「おお! 妖夢よくやった!
ほら、早く行くぞ!」
「………………本当に行くの?
なんか…………怖いよ、あの穴……」
「いいから早くしろよ!
………………うわ! なんか変な感じがするな」
「はぁ………怖いなぁ………」
穴の中はこれだけ太陽が出てるのに真っ暗で………………
もしかすると洞穴じゃないのかも?
「………………灯雷? 行かないの?」
もしこの穴が洞穴じゃないのならこの穴はどれくらい深いんだ?
それにさっきから何か嫌な予感がする、何か取り返しのつかないような何かが起きるような...よし、今日はこのくらいで帰ってまた明日...!!!
「妖夢っ!!! 行くな!!!!」
「え?………あ…」
「!!」
くそ! 間に合え! 間に合え!! 間に合え!!!!
「ひ、灯雷………」
「よ……う…む……」
妖夢が穴に落ちる寸前で掴めた!
よし! あとは引っ張り上げるだけだ!
「妖夢!!!
俺が妖夢を上まで引っ張り上げるから、
妖夢は! 掴める岩があったら掴んで上がってくれ!!」
「う、うん! 分かった」
「よし! 行くぞ! おらぁ!!!!!!!」
「んっ!!...掴めたよ! 灯雷………灯雷!!!!!」
くそ! まずい、バランスを崩した!!
これじゃ穴に落ちる!!
「妖夢!! 手を伸ばせ!!!」
「灯雷!!!」
「.......うそ...だめだよ.....灯雷...落ちちゃだめ......灯雷.....なんで....ごめん...灯雷........ごめんね....」
………………あれ? なんで俺は落ちてるんだ?
妖夢?………………………………あぁ、そうか。
掴めなかったのか………………俺の手を……………。
俺は助けたのに妖夢は………………………………。
………………俺は死ぬのか……………このまま、下まで落ちて。
………………………………………………………………
………………………………………………
………………………………
………………
………
…
「!? い、痛い!?」
なんだ!? い、生きてるのか!? 俺は?
!! だめだ! 動こうとしても足が痛くて動かない、というか俺の足.....暗くてよく見えないな。
どこか明るいところは....。
「………あ、あそこ………少しだけ明かりが見える………。
よし…………!?……ぐ………歩けない………這っていくしか……」
……血の匂いがする。
それに俺の足からは這うたびになんか変な感触がする。
まるで………………。
「………………よし…………うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!
な、なんなんだ!? これ!?」
あ、足が変な方向に曲がってる!?
それにほ、骨が…見えて………………。
「だ、誰か……………誰かいないのか!?
誰か!! 助けてくれ!! 足が変な方向に曲がってるんだ!
……………おい…………誰かいないのかよ!!!!!」
だめだ、冷静になれ。
………………そういえばさっきから微かに音が聞こえる。
歩くことはできないけど音の聞こえる方向に向かおう。
それにこのままここに居ても死ぬだけだ。
「!!………………痛い………足だけじゃない………のか?」
這うために使う腕ですら動こうとすると痛み、満足に動けない。
………………だけど、死ぬよりはましだ。
「ううっ………………ぐっ!………………あぁ………………………………はぁ、はぁ………………
………………………………………………!!!!………………くそっ………………………………
……よし、近づいてきたな…………あれは………………ま、まさか!?」
う、嘘だろ!? あれはどう見ても人間じゃない!
白い爪をもつ熊みたいなやつと人間のような見た目だけど目が赤く牙があるやつが戦ってる………………
あいつらが村の大人たちが言ってた【妖怪】なのか?
「おらぁ!!……………ふぅ、てこずらせやがって。
お前みたいな弱い妖怪が俺に勝てるわけないだろ。
さて………………ははは! 今日はいい日だなぁ!!!
まさかここで………………人間に出会えるなんて」
「!! くそ! 逃げないと!」
まずい! あいつは俺がここにいることに気づいているんだ!
早く逃げないと!
「おいおい! 逃げるなよ。
人間は久しぶりなんだ、じっくりと食ってやるからよ」
「!!! や、やめろ!! 離せ!!」
「お? なんだお前、足が折れてるのか?
んーーーまぁいいか、ガキでケガしてる人間なんかいつもは殺すんだが、
今回は特別だ、食ってやる」
「うわ!! !!!! 痛てぇ………」
あいつ、俺を投げやがったな!
………………なんだ? 下に水?
「!? な、なんだこれ!?」
「お前みたいなガキは初めて見るか。
お前の下にあるのは肉、血、脳みそ、内臓、骨、まぁ要するに、
ご馳走がお前の下にあるってことだ。
そしてお前の中にも同じものが入ってる。
ということは俺にとってお前はご馳走なんだよ」
「ふざけるな!! お前なんかに食われてたまるか!!」
「なんだ、以外と元気じゃないか。
これは予想以上にうまそうだなぁ!!!」
「く、くそ!!! どこか……何かないのか」
「おーい、逃げるなぁ 人間」
あいつは多分俺のことをなめてる。
俺が這って逃げてるから捕まえることなんて簡単なはずなのに。
ぶん殴ってやりたいほどむかつくやつだが今は逃げないと。
? あれはもしかして………………穴か?
………………そうだ、どうせこのまま逃げても食われるだけだ。
なら………………自分で死んでやるよ!!
「おーい、いつまで逃げるんだぁ 人間。
もう諦め………………おい!!!!! 待て人間!!!!!」
「ははは! じゃあな!」
「………………あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!
ああああああああああああああああああああああああああ!!!!
ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
ははは、いい気味だ。
誰がお前に食われてやるか。
………………今度こそ俺は死ぬのか。
………………………………悔しいなぁ。
もっと生きたかった………………もっと………………生きたかった。
「じゃあな父ちゃん、母ちゃん、村のみんな。
………………妖夢」
………………………………………………………………
………………………………………………
………………………………
………………
………
……
…
「………………!!!!!………はぁ、はぁ、はぁ。
い、生きてるのか? な、なんで……………いや、今はそれよりも……………………最初の穴はまだ見えないわけじゃなかったけどここは全く何も見えない、どこかに明かりは無いのか?
足は……………さっきよりはましだな、よし……………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………………………………
……………………!? なんだ? なんか右足が痛い………さっきまでは痛くなかったのに………………
………………………………」
「………………!!!!!!!!!!!!!!!!
痛い! 痛い! 痛い!!!
なんだ!? いったいなんなんだよ!!!」
右足の痛みがどんどん大きくなってきてる。
それに何か………………俺の中に入ってきているような………………俺はどうなるんだ?
「!!!! くそ!! なんでこんな痛いんだよ!?
さっきまでは痛くなかったのに………………これならあいつに食べられたほうがましだったかもな。
………………!? だ、だめだ……耐えられない!!
何か……………何かないのか!!!!
このままじゃ………………」
まるで自分の中のなにかに嫌いで汚いものが入ってくるみたいだ。
それに右足が………………ここに落ちる前よりぐちゃぐちゃになってる。
………………あれ? なんで俺………………見えてるんだ?
それに………………ここってどこだっけ?
………………俺………………どこに住んでたっけ?
………………俺………………人間だっけ?
…………あれ?………………俺………………誰だっけ?
「………………俺は灯雷………………俺は穴に落ちた。
………………誰に落とされたんだっけ?
………………………………そうだ………………妖夢だ。
………………妖夢があの時助けてくれなかったからだ。
………………………………むかつく」
【【【おい】】】
「!?……え?」
誰だ? こいつ?………………女?
歳は17……くらいか?
でも…………なんでこんなところに?
「お主、どこから入ってきた?」
「……穴に落ちたんだ。
それでお前は?」
「穴じゃと?……そんなものはないはずじゃが。
まぁ、わしにもお主にも関係ないことじゃな」
「!!!! な、なんだ………その………炎は!?」
「運が悪かったなぁお主。
わしも長らく殺しをしてないんだ。
だからなぁ、この炎がわしの中で疼いてたまらんのじゃ!
この炎で生き物を燃やし尽くすとき!
この炎で大地を焦がすとき!
この炎は何も照らすことはない!!
この炎が照らすのは黒じゃ!!!
わしの黒い炎でお主を抱きしめてやろう!!
さぁ、さぁ!!!!」
「くそ、やめろ! 頭おかしい女!!」
この女、さっきまで右腕が無かったのにこの女が言う
【黒い炎】とかいうやつで腕を作り出しやがった。
まさか、この女………抱きしめるって…………!?
「お前何をする気だ!?」
「おいおい、もう分かるじゃろ!?
わしは久しぶりにこの炎で生き物を抱くのじゃ!!
ここはつまらないところじゃったが今日だけは
今までの退屈をも燃やし尽くしてやるわ!!」
「くそ! やめろ! やめろ!」
なんなんだこの女は!?
女の右腕の炎が近づくたびに体が溶けるみたいに熱くなる。
これ以上はまずい!!
「やめろ! くそっ!!
いい加減にしろ!!」
「そんなつまらない事言うなよ!?
ほら、もっと燃やしてやろう…………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
「………………」
なんだ、この女? 急に止まって俺の顔をじっと見てくる。
いったい何を見てるんだ? それに右腕の炎も消して片腕に戻ってる。
「おい! 近けぇよ!!
いったいなんなんだ!?」
「お主………………何者じゃ?」
「は? どういう意味だよ」
「そのままの意味じゃ、お主の中にある混ざってるものは何かと聞いている。
まるで………そう、わしのように最初から混ざっていたわけじゃなく………………ついさっき混ざり始めた………………お主は何者なんじゃ?」
「だから言ってる意味が分からねぇんだよ!
混ざってるって何のことだ!?
俺は…………………………俺は灯雷だ。
名前は灯雷。 魂魄妖夢によってこの穴に落とされて………………あんたに今こうして殺されかけてる。
俺が覚えてるのはそんだけだ」
「………………そうか。
お主、灯雷と言ったな?」
「あぁ、そうだ」
「ならわしの名前も教えておこう。
長い付き合いになりそうだしな………
わしは【朧䵷道 おぼろあみち】。
この【朧獄 おぼろごく】に封印された、
神の時代を終わらせた張本人じゃ」




