第三章、ゆらりと佇む亡霊屋敷 ③
【第三話、師と弟子】
[………………」
「………」
「………………」
「……怖じけたか?」
「!……せい!!」
男の懐に飛び込み縦に刀を振るう。
確実に殺すつもりで斬ったはず……なのに男は平然と立っている。
「浅いな、踏み込みも速さも気持ちも何もかもが僕を殺すようなものじゃない。
君は眠っている僕を殺すつもりだったのか?」
「……」
許せない。 私の覚悟を踏みにじるような言葉。
だが、そんな言葉が私を冷静にさせた。
男は構えてない、一見どこからでも斬りかかれそうだがそれは間違いだ。
構えてないからこそどの攻撃にも対処できる。
決まった形ではないからどう動くかも予測が出来ない。
それはこの男がどんな戦いをしてきたのかを物語っていた。
………………なら私はこの男を真似る。
せめてこの男から幽々子様をお守りするために。
妖夢は天才だ。
今日の稽古で痛いほどそれは伝わったしさっきの妖夢の一撃。
普通の人間なら反応できないほどの速さでとても13歳の少女とは思えない。
その証拠に油断していたとはいえ僕の手は斬られている。
だが、それでこそ僕の弟子、もう油断はできない。
「………なんで構えを解くんだ?
ひょっとしてもう終わりか?」
「……………私達にこれ以上おしゃべりは不要です」
「あぁ、そうだな。
殺す気でこい、殺されないためにな」
「はい、参ります!!」
妖夢は素早く僕に近づいてくる。
だが、僕の目には遅すぎて真面目にやってるのかと不安になる。
「おらぁ!!」
「!………ぐは!?」
妖夢は僕の心臓を貫こうとしていた。
それをかわし身体強化をした体で妖夢の腹を殴る。
「うぅ、くぅ………この程度……」
「…………ふん!」
「!!、あぶな……!?」
妖夢は屋敷の壁の方まで飛んだ。 腹を抑えて苦しんでるが
関係ない、妖夢に近づき頭を狙って蹴りを放つ。
「甘い!!」
「!?………こ、の………!?………ううううう………」
避けられたか、でも体制が崩れすぎだ。
避けた妖夢の手を掴み投げ飛ばす。
妖夢は最初の場所まで戻ったみたいだ。
「どうだ、まだ戦えるか?」
「…あたり、う!?……はぁ、はぁ、当たり前です……」
「そうか。 なら早く斬ってこい。
さもないと幽々子を守れないぞ?」
「くぅ!……ああああああ!!!」
妖夢はもう戦える状態ではないことはあきらかだ。
でも、それでも妖夢は斬りかかってくる。
妖夢はもう気づいてるだろう、自分が何のために戦いたいのか。
それが分かればもう十分だ、これ以上妖夢を傷つける必要はないだろう。
「妖夢、お疲れ………」
「な!?…………ゆ……ゆ…………こ…………さ…ま…」
斬りかかってくる妖夢を躱し器の力を吸い取る。
………………妖夢は強くなれる、それは戦う意味に気づけたからだ。
後は妖夢を鍛えて、鍛えて、鍛えまくるだけだ!
楽しみだなぁ~~。
「鬼怒~? 妖夢は大丈夫?」
「あぁ、もちろん。
明日は安静にした方がいいが明後日には稽古ができると思う」
「そう、じゃあ妖夢をこっち連れてきて~。
お布団敷いといたから~」
「あぁ、じゃあ僕は寝させてもらうよ」
「えぇ、おやすみ~」
「あぁ、おやすみ」
「………………………………うーん………………は!」
気づけば私は布団で寝ていた。
部屋の障子からは相変わらず暗い光が差し込むだけだが、
きっとあの男との戦いから数時間は経っているだろう。
いや………………あれは戦いですらなかった。
………………私は負けた……………幽々子様をお守りすると誓ったはずなのに………自分を信じた結果がこれだ。 勝つどころかこうして情けまで…………かけられてる。
「………………う、うううう………私は………何をしてるんだ……。
………………いや、何も………できなかったんだ………………私は」
「………………う~ん、妖夢?」
「え? 幽々子……様?」
「妖夢、ケガはもう大丈夫~?」
「は、はい! まだ少し痛みますが問題ありません」
「そう~それはよかったわ~」
「………………幽々子様、私はあの男に戦いを挑みました。
結果として私は一撃も当てられないどころか情けまでかけられてます。
なによりも………………幽々子様に…………期待して…………いただけたのに
………………私は………………」
「………………妖夢」
「え?」
…………幽々子様に抱きしめられた。
幽々子様は私が失敗したときは昔もこうして抱きしめてくれた。
でも、最近は私も失敗が少なくなりこうして抱きしめられることはなくなった。
………………幽々子様の体に体温はない。
なのに…………暖かいものが伝わり、涙が出てくる。
「妖夢、今は喋らず聞きなさい。
………………あなたはまだ幼い、
それなのにこうして私のために命を張ってくれた。
それはとてもすごいことなのよ?」
「………………それに妖夢は鬼怒を勘違いしてるわ。
彼は強い、なのに優しい………………妖夢、一つ教えてあげる。
強さというのは求めるほど手に入るわ………………でもね………………強さを求め手に入れた者はみな一人になるの………………そして………………やがては自分がどこにいるのかも分からなくなって………………一人きりで死んでいく………………。
でも、鬼怒は違う。 人間とは思えない力を持っているのに紫とも仲良さそうに話してたし、貴方に対しても亡霊の私に対しても優しく接してくれた………………だから、妖夢。
鬼怒を頼りなさい…………彼の元でなら貴方は強くなれる」
「………………」
………………あの男は強い………………それこそ今の私ごとき相手にすらならない強さ。
………………なりたい………………私もあの男のように強くなりたい。
幽々子様をお守りするために………………強くなりたい!!
「………………幽々子様」
「なぁに? 妖夢」
「………………少し、私に時間をください。
強くなるための時間…………強くなりたいんです」
「うふふ、だそうよ? 鬼怒」
「え!?」
「……当たり前だ、僕はそのために来たんだから。
………………妖夢、これが最後だ。
【妖夢、君は何のために戦うんだ?】」
………………負ける自分が嫌いだ。
………………愚かな自分が嫌いだ。
………………強くない自分が嫌いだ。
……………………だけど、強くしてくれると言った。
なら、理由は一つだけだ。
「………………【強くなるため】です!」
「………そうだ!、その通り!
幽々子を守るには強くなくちゃいけない!
なら戦いとはなんだ?…………それは強くなるための近道だ!
よくそこに気づいたな! 妖夢!
先生は嬉しいよ!」
「いえ、先生がいなかったら気づくことはできませんでした。
………………そんな先生に今までの許されがたい無礼の数々、
本当に申し訳ございません」
「はは! そんなこと気にしなくていいよ。
僕は今最高の気分なんだ!
よし! 妖夢強くなるぞ!!」
「はい!!」
私は強くなる。
幽々子様をお守りするために。
私は着いていく。
先生に少しでも近づくために。
「い~~~~っい返事だ! 妖夢!
さぁ!! 道場へいくぞ~!!」
「えぇ、行きましょう!」
そうだ 妖夢
妖夢は今の自分の話し方をどう思う?
え? そうですね………………
誰にでも通じる便利な喋り方だと
あぁ それは確かにそうなんだが………………
もう少し友達みたいに話せないか?
僕と妖夢は師と弟子だが稽古以外の時間くらいは
友達として接してほしいんだ。
………………こ、こんな感じかな?
えへへ………………
ばかもん! 今は稽古中だぞ!
え、えーーーー!?
ひ、ひどいよ! 先生!!
あ! また言ったな!
先生は怒ったぞ!
し、知らないもん!
意地悪する先生は嫌い!
な!?………今の言葉はどんな攻撃よりも効いたよ
流石僕の弟子だ
? よく分かんないこと言わないで行こうよ、先生
あぁ、そうするか
「………………うふふ、楽しくなりそうねぇ~」




