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僕だけの幻想郷  作者: 鬼怒
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第二.五章、あぁ 日常 ②

【第二話、





今の季節は夏だが妖怪の山の中は森だからか少し寒いと感じるほど気温が低い。

僕は器の力を使って飛ぶことも出来るんだが、自分の足で歩くことが旅の醍醐味というものだと思い、家から今まで歩いている。


なんというか今までが戦ったりしていたからなのかこの妖怪の山がすごく静かに感じる。 

まるで幽霊でも……でそうな………………。



{おはよ、鬼怒君。 昨日ぶりだね}



「…………頼むから、木の陰にうつむいて立つのはやめてくれ。

次は心臓が止まるぞ」



{あはは、ごめんね? 僕も幽霊だから人を驚かせるのはもう癖なんだ}



「このままじゃ本当に心臓が止まるかもな。

ところでなんで雫はこんなところにいるんだ?

昨日も気づいたらいなかったし、君はいったい………」



{……………え? なにか言った?}



「いや、思いっきり僕と目が合ってるんだけど」



{まぁまぁ、そんなことより鬼怒君。

僕、すごくきれいな花畑を見つけたんだ、

ちょっと行ってみない?}



…………すごくはぐらかされた気がするが。



「………はぁ、分かった。

行く当てができて助かったよ」



{それはよかったよ。 

じゃあ、僕が案内するから着いてきて}



「あぁ、分かった」



………………多分だが雫は何かを隠してる。

その隠しているものが何なのかは分からないが、

少なくとも気軽に話すことはできないような秘密だろう。


それに普通に雫は着いてきているが雫が何者なのかも僕はまだ分かっていない。 雫は自分のことを幽霊だと言っていたがそれが本当なのか、はたまた嘘なのか。

なにはともあれまだ信用はしないほうがいいだろう。



{どうしたの? 鬼怒君。 難しそうな顔して}



「…………いや、なんでもない。

つまんないことを考えてただけだよ」



{………………鬼怒君はさ、後悔とかしたことある?

もう取返しがつかないのを後から気づいてさ、

どれだけ後悔してももうどうしようもないような後悔}



「………………いや、ないな。

どうしたんだ? 急にそんなこと」



{…………んーーん、何でもないんだ。 気にしないで}



雫はまた動き出す。

…………旅のお供が幽霊なんて、松尾芭蕉もドン引きするな。
















…………妖怪の山を下り、15分ほど雫に着いていっている。

道中に色々雫の秘密を聞きだそうとはしてるが、

肝心な部分はいつもはぐらかされてしまった。



{…………鬼怒君、もうすぐだよ}



「ん? あぁ、そうか。

……それにしても花畑なんて一回も行ったことないな」



{なら楽しみにしとくといいよ。 

僕は花が好きなんだ、鬼怒君もきっと気に入るよ}



「あぁ、楽しみだよ」



………………草木が道を塞いでる。

これじゃあ通れないが雫はどうするつもりなのだろう。


…………!? 雫が進むとまるで歓迎するかのように草木が曲がった。

ひと際大きい木はその太く重い体を使ってアーチを作り、道に生えてる草たちはいつのまにかいなくなっており、生い茂る細い幹は周りの古い木に合わせるこのようにその細く儚い体を一生懸命に伸ばした。



「………………まるで魔法みたいだ」



{どの花も草も木もみんな生きてるんだよ。

この子たちは僕たちを歓迎してくれているんだ。

………………この子たちの主もそんな人だったなぁ}



「…………そうか」



草木のアーチを通りながら雫は話した。

僕はふと雫の横顔を覗いたが、雫は俯いていて見ることはできなかった。

だが、雫の持つ雰囲気は今までとは違い、なにかを求めてるような…………そのためだけにいるというようなものを見ることのできない雫の横顔から感じていた。


………………雫の目的が何なのかは分からない。

だが、この草木のアーチを歩くその瞬間に草木たちが持つ思いが僕に話した。

【忘れて……でも覚えていて】

…………これが雫の目的なのか?

それともただの幻聴なのか?

多分だがその答えは花畑にある気がする。

そんな曖昧だが確かなことを草木が教えてくれたとき雫が俯いていた顔を上げた。



{………………あ、鬼怒君! ほら、見て!}



「ん? …………あぁ、これはすごいな」



…………夏、真っただ中の幻想郷の空に顔を向けた向日葵が見渡す限りに埋め尽くされてる。

だが、どの向日葵も見事に成長していて思わず目を奪われてしまう。

花には全く詳しくないがこの向日葵はきっとどんな花よりも生き生きとしてるだろう。

そんな柄にもないことを考えるくらい見惚れていた。



「………すごく、すごく綺麗だ」



「あら、嬉しいわね。

この子たちも喜んでるわ」



「!?」


{…まったく、相変わらず隠れるのがうまいね}



「え? 誰か知ってるのか?」



{いやいや! 知らないよ。 独り言だよ、気にしないで}



「………ねぇ、あなた。 誰と話してるの?

それに私相手に無視するなんていい度胸だわ。

ねぇ、おかしな人。 名前を聞いてもいいかしら?」



「……さっきのは独り言だよ、気にしないでくれ。

{ああー! 僕のパクった!}………。

………あぁ、それと、おかしな人っていうのはやめてくれ、誰かが真似すると困る。

僕は鬼怒だ。 君の名前も聞いていいかな?」



「そう。 【風見幽香】よ。 

それでおかしな人、あなたはここがどういう場所か知ってる?」


{あはは! おかしな人って!

ははは! 鬼怒君………あはははは!}



「……だからその呼び方はやめてくれ。

もう悪い影響が出てる。

あと、ここは花畑なんじゃないのか?」



「えぇ、それは正解よ。

でも、こんなうわさ聞いたことない?」



「…?」



【美しいものには必ず毒があるって】



瞬間、僕は爆発的に膨れ上がる力に気づき、身体強化をかけ、

それとほぼ同時に幽香の回し蹴りが僕の顔まで迫っていた………。




あと、雫はいなくなっていた。

…………誠に遺憾だ。



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