第二章、訪れるは孤独な地底世界 ②
【第二話、鬼怒君 ストーカにあう】
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
…何かデジャブみたいなのを感じる。
「…よし追ってきてないな」
まさか地底で最初に出会うのが人食い妖怪とは思わなかった。
…まぁ、幻想郷で最初に会ったのも人食いの鬼だったけど。
それにしても、ヤマメは嘘をついたな。
旧都っていうからには建物があると思うんだが、
何もない空間が広がっているだけだ。
まぁ、行く当てもないし、とりあえず進んでみるか。
「…」
……背中に視線を感じる…。
正確に言うと、今日の晩御飯を逃がすまいと追ってきた人食い妖怪の視線だ。
「…ヤマメ、そこにいるんだろ?」
後ろに振り向きながら声をかける。
…ヤマメが天井に張り付いていた。
「ふふ、見つかっちゃった」
「…それはこっちのセリフだ」
「たしか、鬼怒っていったわね?
貴方に提案があるんだけど聞く?」
「…ああ、聞かせてくれ」
「まず、貴方の行きたい旧都だけどこの空間を真っ直ぐずっと奥までいけば橋があるわ。
それでその橋を渡らないと旧都には行けないようになっているの。
ただ、その橋には【橋姫】っていう妖怪がいて
なにかとちょっかいをだしてくるのよねぇ。
だから貴方が橋姫にお願いしてほしいの」
「お願い?」
「ええ、そうよ。 黒谷ヤマメのことをこれから先、妬まないって」
「断ったら?」
「貴方を食べるまで追いかけるわ。
蜘蛛のように静かに、ねっとりとね」
「…分かったよ。 そのお願いを叶えれば追いかけるのはやめるんだな?」
「ええ。 私は上から見てるから」
そういうとヤマメは天井を伝い、先に行ってしまった。
頭に血がのぼらないのだろうか?
「…さて、行くか」
歩き始めてから1時間ぐらい経って、
前の方に明かりが見えてきた。
それにヤマメの言っていた橋も見えてきたから
あそこが旧都なのだろう。
「…さて、あー、あの子かな?」
橋の真ん中に変な服を着た緑色の髪の女の子が立っている。
まぁ、間違ってたら失礼だし一応確認するか。
「…こんにちは。 いい天気ですね」
「…いい天気も何も地底に空はないわ。
ああ、空がある地上が妬ましい」
ああ、ヤマメが言ってた妬まないようにして、というのはこれか。
「あー、ところで名前はなんて言うんだ?
僕は鬼怒っていうんだけど」
さすがに橋姫が名前ってことはないだろうし、
名前ぐらいは知っといた方がいいだろう。
「水橋パルスィよ。 橋姫とも言われているわ。
それにしても貴方は名前に鬼が入っているのね、
ああ、妬ましい」
この子は喋るとき一回は妬むのか?
たしかにこれはなんというか……面倒くさい。
「あー、パルスィ? 僕がここに来たのはお願いがあるからなんだ」
「お願いがあるなんて妬ましいわね。 何?」
「え、えっと黒谷ヤマメって知ってるか?」
「ええ、妬ましいわね」
「そのヤマメからのお願いでな、
もうこの先、妬むのをやめてほしいっていうお願いなんだが
きいてくれるか?」
「…いやよ」
「それは何でなんだ?」
「それは貴方には言えないわ。
でも妬むのをやめるというのはできないの」
「…」
どうしよう、交渉決裂だ。
「…やっぱりね」
「うわ!」
上からヤマメが横に降りてきた。
すごく僕のpretty heartによくない。
「…ヤマメ、驚かさないでくれよ」
「ああ、ごめんなさい。
それより、パルシィ、なんで鬼怒に理由が明かせないの?」
「…」
「…私はあのさとり妖怪が地霊殿を作り、元は地獄だったここを
旧都に変えた後に地底に来たわ。
でもパルシィが私よりも前にここにいたことも知ってるし
あのさとり妖怪と会ってることも知ってるの。
…パルシィ、何を隠してるの?」
「……理由は話せないわ ヤマメ、分かって。
でも貴方のことを嫌っているからとかじゃないの。
…私だって貴方と妬まず話し合いたい。
…でもできないの」
「…鬼怒、行っていいわよ」
「…いいのか?」
「ええ。 お願いを変えるからね」
「…ヤマメ?」
「鬼怒は地霊殿に向かうのよね?
ならそこにいるさとり妖怪を
殺してちょうだい。 それが新しいお願いよ」
少しずつ謎は明らかになっていきます。




