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#050 SSS迷宮【黒耀石の尖塔】へ入ろう ⑧


 俺は意識絶え絶えなギルド員の女をまるで守るかのようにレイシェルと対峙する。


「……なんのつもりですか? 確か……Eランクギルド『エレクトロブレイブ』の方でしたね? 審査に異議申し立てでもおありでしょうか?」

「なはは、いやなに……格下と思い込んでるギルド員相手に随分余裕が無ぇなと思ってな。せっかくの美人が台無しだぜ」

「……『思い込んでいる』とは含みのある言い方をされますね……烏合の衆であるあなた方が国に仕える騎士や宮廷魔術団に(まさ)っているとでも?」

「さてな、気になるなら試してみりゃあいい」


 俺の挑発する台詞を皮切りに、レイシェルは口を閉じ──魔術(マナ)を練る。その心の内を代弁するかのようにもう一人の試験官であるバルザックがグラーフに問う。


「グラーフ様、宜しいのですかな?」

「ほほ、威勢の良さそうな小僧じゃな……構わんよ、早いか遅いかの違いじゃろう」

「……では、Eランクギルド『エレクトロブレイブ』頭領【イリュリョナー・ルゥンラタリア】、共に前へ出よ」

「ふふ、仕方ないなキミは全く……私のギルドの輝かしい経歴に傷をつけるような真似をして」


 微塵もそんな風には思っていないと──この展開が面白くてしょうがないと、そんなあからさまな笑みを浮かべながらイルナも俺の横に並んだ。


「イリュリョナー・ルゥンラタリア…………大型魔獣討伐数………0……? ……ハイエルフ種で高い能力(ステータス)を有するにも関わらずS級以上のクエスト経験無し……どうやらあなたも生半可な気概で来た輩の類のようですね……いいでしょう。それがどのような結果を産むか……塔に入らずともこの場でわからせてあげましょう」

「ふふふ、お手柔らかに頼むよ。なにせこちらはEランクギルドである上にこちらはまだ新人の石ランク、本気など出されたらひとたまりもない」

「ご安心を、一瞬で終わりにしてさしあげますから」


 イルナの言葉を額面通りに受け取ったのかそうでないのかは知らないが……すぐにでも魔術発動しそうなレイシェルを余所に、ギルド員の女達に声をかけた。


「つーわけだ、聞こえてるか知らねえが……死ぬ前にとっとと下がりな」

「わ……わた……しはっ……まだっ……」

「安心しな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()理解したら身体を休めろ、それ以上消耗すると回復しきれない」

「えっ……? あっ……」

「こちらへ」


 ネレイスとリンが女達に肩を貸して、この場から連れ去った。予定外の出来事(イベント)に口出ししないところを見るに、どうやら二人も俺がこれからしようとしている事を理解までせずとも肌で感じ取ったようだ。


「ライン・ハコザキと言いましたか……どうやらレア魔術である【マナドレイン】を扱うようですが……それだけで余裕ぶっていられるのも今のうちですよ」

「御託を並べるのが得意技か? とっとと始めたらどうだ?」

「──っ!! では……お言葉に甘えてっ!!」


【ヴォルフェルノ・ラナ・マグナ】


 先ほどとは違い、無数の炎の蛇が対象を補食せんと瞬時に俺へと(はし)った。更に容赦なく、レイシェルは次の魔術を隙なく発動する。


【スカイレイ・オン・バグス(飛来する雷撃)】

【テフヌト・テン・ゴッド(浸食する光)】


 成程、宮廷魔術師の称号は伊達じゃない──雷と光、そして炎……一挙に三事象もの魔術を繰り出し同時に使役している。

 飛来する雷撃、そして蒸気のように俺を包む光……逃げ場は何処にもなかった。


「なはは、こりゃあ参ったな──」


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「──っ……はぁっ……はぁっ……!!」


 ──だが、息が上がり膝をついたのはレイシェルだった。

 俺に(ことごと)く魔術を吸収され、躍起になったレイシェルは魔術を乱発した。それにより人体に在るマナ総量を限界水準近くまで使用し枯渇(MP切れ)したのだ。体内にあるマナは水分と同じでそれを失うと動悸が激しくなり、やがて様々な症状を引き起こす。


「はぁっ……あり得ない……マナドレインは事象魔術を体内へと吸収する魔術……それはいわば……異なる血液を取り込むようなもの……こんなにも多事象を(さば)ける筈がない……」

「なははは、上位魔術の供給ありがとよ。まさかこんなにご馳走してくれるとは参ったぜ」


 レイシェルが【マナドレイン】と見紛っているもの──それは決して魔術などではなく……マナクラフトの能力。進化(アップデート)により上位魔術すらもクラフトする事が可能となった、それを素早くインベントリに収納しているだけ。【箱庭(クラフト)】の存在を知らなければ魔術を吸収されていると勘違いしても無理はない。


「さて、まさかこれで終わりじゃねえだろ? 何やら苦しそうだが……言い訳にはならねぇ、『体調管理の徹底くらいできて当然だからな』」

「まっ……待ちなさっ……!」


 ──弁明しようと焦るレイシェルに構う事なく、俺は魔術を発動させた。


【複合魔術 ヴォルテクス・ハイレーザー】


 放たれた光線は──レイシェルの顔を(かす)め……すぐ横の地面を(えぐ)り、穴を空けた。


「──っ……はぁっ……はぁっ……!」

「冗談だよ、まぁこれに懲りたら足下にも注意を払ったほうがいい……いつ(すく)われるかわからねぇからな」


 呆気に取られる観衆と化したギルド員達、呆然とする騎士団や魔術団の中で……唯一、事態を把握したであろうグラーフが顔をしかめながら俺に聞いた。


「……小僧、おぬし……一体何者だ?」

「なははは、遥か格下のギルド員の下っ端さ」


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□{【マナクラフトUPDATE】……上位魔術のクラフトが可能になりました。

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