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番外編.#045【マインside】


〈砂漠の町 郊外〉


 ソウル様とマイン、イルナさんとワヲンさんは【塔】への調査隊に加わる為ーー近くにある砂漠の町に滞在する事となりました。

 

 しかし、町では汚い貴族達の方策により宿が占領されていて冒険者の方々は途方に暮れていました。

 そんな中で出逢ったのが冒険者の【ネイア】さんと【リン】さんです。お二人は宿で絡まれていたところをソウル様に救われ、どうしてもお礼がしたいとソウル様を尾行していました。

 イルナさんも仰っていましたが、復讐に心身を捧げ悪魔に魂を委ねようとソウル様の心根は優しくーーマインと出逢った時から何らお変わりはありません。

 そのどちらもソウル様には変わりありませんが……隠しきれない心の温かさが良心的な方々を惹き付けておられるのでしょう。


 ネイアさんとリンさんと一時期にパーティーを組むのを了承されたのも、【箱庭】にて造る宿にて休ませてあげようという心持ちに違いありません。なんと慈悲深き御方……そんなソウル様をこの上なく誇りに思います。

 ソウル様は仮宿創作のために、場を一旦離れています。マインとイルナさんはお二人に怪しまれないようーー【箱庭】の業を見られぬように岩陰で注意を引きます。


「なぁ……彼は一体何処行ったんや? こないな美少女達を置き去りにして……」

「ラインさんは宿の手配をされております。なんでもこの辺りにラインさんしか知らない宿があるとかーー」

「あるわけないやん! 砂漠のど真ん中やん!?」

「ふふ、彼があると言ったのならあるのさ。このパーティーのリーダーは彼だ、私達は信じて待つだけさ」

「………信頼されているのですね。私達を救ってくださったお方がそう言うのであれば座して待ちましょう」

「はぁ~……ひ……ネイアは真面目すぎるで。まぁ、ここいらは他に町もあらへん。砂漠を抜けるには一日以上かかる……待つしかないやんな~……」


 お二人はソウル様を信じてくれたようで、座ってマイン達と他愛ない話に興じます。


「時に……そちらのイルナ様……と申しましたでしょうか? 失礼かと存じますが……何処かでお会いした事がおありでしょうか?」


 突然、ネイアさんがイルナさんに尋ねます。先ほどからネイアさんがイルナさんを横目で気にしていたのはマインにもわかりましたが……イルナさんの素知らぬ様な態度からは旧知の仲には到底見えませんでした。


「ふふ、君のような美少女に口説かれるのは光栄だが勘違いだろう。私はしがない宿場町の住人に過ぎないよ、他所の冒険者と顔を合わせる機会も滅多に無い」

「……大変失礼致しました」

「なぁなぁ、マインちゃんってラインの事好きなん?」

「ぶふっ……!」


 意識外からの予想外の質問に思わず口にしていた水を吹き出してしまいます。リンさんが興味津々といった表情でマインに詰問し始めたのです。


「リン、いきなり何ですか? 失礼ですよ」

「いやぁ~ウチって色恋沙汰には敏感なんや、マインちゃんのラインを見つめる眼ぇが思いきりそれやってんな。凄いわかりやすかったで?」


 ネイアさんに諌められても止める事はないといった様子でマインに詰め寄ります。隠す事ではなく、迷う事でもないその質問にマインは堂々と答えます。


「すっ………す……すす……す……好きですよよっ?」

「あっはははなんこれっ? めっちゃ可愛いやん! キョドりまくりやんか! 愛らしわぁ~、お姉さんに全部聞かせてやラインとのこと」

「リン、お止めなさい」


 堂々としたつもりが、ソウル様のお顔が頭に浮かび真っ赤になってしまいました。完全にリンさんにペースを握られます。

 ソウル様がいない間、マインがお二人の素性を少しでも明かしてソウル様にご報告するつもりだったのが逆に手玉に取られてしまいました。

 

(ソウル様はまだ完全にお二人を信用してはおられません……ならば、マインにとってもまだお二人は信用に値しません。決して悪人ではないとは思いますが……)


 やはり、マインはまだまだです。このままではリンさんに場の主導権を譲ることになりかねません。それはもしかしたらソウル様に不利に働くかもしれないーーそう感じたマインは眼でイルナさんに助けを求めます。


「ふふ、年端もいかない少女を利用して情報を引き出そうという行為はあまり関心しないよ」

「え~、そんなつもりないんやけどな~。お堅いなぁ、単なる好奇心やんか」

「では、私の好奇心もぶつけてみようか……こんな話がある。とある国の王家では代々【水の事象】を神として崇め奉り、その加護を心身に受ける習わしがあるそうだ。それは代々受け継がれ、身体の何処かに顕現すると言われている。丁度ーーネイアのその透き通る淡青色の髪のように。そしてその箇所により次の王座に誰が座るか決定する一風変わった継承制度だそうだよ」

「「……………」」


 イルナさんが言を発した途端に、お二人は一転して口を閉ざしました。マインにはイルナさんのお話がなにを指し示しているのかわかりませんでしたが……場の主導権が誰に移ったかは火を見るより明らかでした。


「ふふ……安心したまえ、他言するつもりはないさ。うちのリーダーもそれは同じだ、ああ見えて根っからの善人で秘密は必ず守る。だが、素性すら明かさない人間には決して心は開かない。パーティーを組みたいのであれば『踏み入らない』のか『打ち明ける』のかどちらかにした方が良いと忠告しておくよ」

「……ご忠告、痛み入ります。仰る通りですね……大変な不義を働きました。ライン様が戻られましたらお話します、リン、貴女も謝罪なさい」

「……ちぇ、やりにくいなぁ~。堪忍なマインちゃん、確かに少し利用しようと思っとったわ、ホンマにごめん」

「……いえ」


 お二人はマイン達に関しての情報を探るのをやめ、他愛ない世間話に興じます。誠実で真っ直ぐなネイアさん、意地は悪いけどきちんと謝罪してくれたリンさん。やはり悪い方には見えませんが、それを判ずるのはソウル様ーーマインは余計な情報を漏らさぬよう、会話に相槌を打つだけにします。


「……ふふ、自分を棚に上げて一体どの口が言っているのだろうか……済まないな、ライン、マイン」

「……?」


 その中で、イルナさんは珍しくーー何か思い詰めた表情を垣間見せていました。

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