#038 防衛戦 vs略奪者(ピリジャー)
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vs【略奪者】★★★★★★☆☆☆☆
・一定以上の群れを作って村や町を襲う魔獣。世界各地に存在し、群れの統率者に手を出した者に『呪い』をかける。『呪い』がかかった者が村や町に入るのをきっかけにして襲撃を行う。隠れながらのクロスボウや弓による攻撃を主としており、姿を中々見せない。一度に集まる群れの数は10~20だが波状攻撃を仕掛ける癖があり、倒しきったと油断させたところを次の群れが襲う事もある。
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「戦えない者は向こうへ行くのじゃ! 近接戦ができる者は矢を防げ! 魔術を扱える者は後方で待機! 無闇やたらに攻撃を仕掛けてはならんぞ!」
町の入口、略奪者の襲来に対応し指揮を取るのはこの宿場町の長である【フォグ】だ。イルナの紹介によりこの町長とも何度か顔を合わせている。
入口では盾を持ち人々の退路を守る新進気鋭と言わんばかりの装備の心許ない若者達が怯えた表情で隊列を為す。遮蔽物に隠れ魔術発動の準備を進める魔術師達もどうやら石ランクのようだ。
「む、ラインとマインお嬢か! 良かったわい! こちらへ来とくれ!」
俺達は隠れながら町長の元へ駆け寄った。
「お前さん方がいて助かったわい、ワシ一人じゃあ住人の避難で手一杯じゃった。イルナは野望用で交易都市に出掛けたばかりじゃったからのぅ」
「何故略奪者が? 対策を怠ったか?」
「馬鹿言うでない。略奪者の厄介さは重々理解しとる、『解呪』は徹底しとったよ」
「………つまり、悪意を持ってこの町に来た奴がいる。『解呪』を逃れわざと呪いを振り撒いた奴が……そういうことか?」
「じゃろうて、じゃが詮索は後回しじゃ。今この町におるのは『石』か『鉄』ランクだけじゃ、何とかせんといかん」
ここ数日、町の利用者はめっぽう減った。というのも俺がこの町に蔓延していた『金』を取り払ったのが原因なのだが。
ギルドを酒場として利用していた帝国ギルドやエリーゼと結託していたミランダ配下の貴族達。そいつらが一切顔を見せなくなっていたからだ。ミランダ配下の金ランクはエリーゼとの連絡が途絶えた事により実験を一時中断しているのだろう。
つまりはこの町は初心者用狩場の休息処としての役割しかなくなってしまったのだ。そうなってくると平均推奨討伐ランク『金』以上である【略奪者】に対応できる者はいない。イルナもきっと『塔』への準備のために交易都市まで出掛けたのだろう。
(つまり間接的にといえど、俺が招いた事態でもあるわけか……)
曲がりなりとはいえ、そいつらが町に滞在していたことにより町が潤っていたのも事実だろう。それを俺が途絶えさせたのだ。
すると、それを察したかのようにフォグは言った。
「お前さんが来てからというもの……町には変化が起こってばかりじゃよ。『金』ランクは町から消え、騒がしいほどの客足もめっぽう減りおった。何をしたのかは知らんが……きっとお前さんが関係しておるのじゃろう……まったくーー」
「………」
それに反論するかのように、マインが怒り顔でフォグに抗議しようとする。しかし、それはすぐに遮られた。フォグの満面の笑みによって。
「ーーやるじゃないかのお前さん! ゴミ掃除してくれたおかげで町の景観が取り戻せて何よりじゃわい! 一体どうやったんじゃ? と、そんな事を話しとる場合でもないか」
「………なはは、疫病神扱いされんのかと思ったぜ」
「何故じゃ? あんな威勢だけの馬鹿共が仮にこの場におったとしてもなんの役にも立たんじゃろうて。寧ろ場を乱すだけじゃよ。じゃが、お前さんならば町を守ることなぞ造作もなかろう?」
フォグのその眼は真っ直ぐだった。この爺さんとは何度か話をしただけだし、力なんて見せた事が無いにも関わらず。まるで旧知の仲であるかのように信頼に満ちていた。
「………どいつもこいつもこの町の奴等はお人好しが過ぎるな、仕方ない。フォグ、避難誘導を頼む。マインはその警護にあたってくれ」
「ほっほっ、了解したわい」
「承知致しました、ラインさん。お気をつけて」
二人が遠ざかるのを見送り、俺は臨戦態勢に入る。味方にはビギナーの近接型が六人と魔術師が三人、弓使い(アーチャー)が二人。
【ジ・アーツ・オブ・ヴルド】
【箱庭】
俺は土魔術により周囲の敵の位置と特性を把握したのちにクラフトにより『盾』を作り、ビギナー達に渡しながら指示を出す。
「この位置で盾を構えてれば心配ない、襲撃してきたピリジャーの数は13、位置は1.2.11.12時の方向。ピリジャーはこちらから攻撃しない限り隠れている俺達の位置は掴めない、ジリジリと近づいてくるだけだ。近接型のお前らはこのまま盾で防御、この線まで侵入してきたところを弓と魔術で一掃しろ」
「は、はいっ!」
「緊張しなくていい、耐久力はないから簡単だ。俺は外へ出て厄介な奴を片付けてくる。ピリジャーを一掃しても次がやってくるから気を抜かないこと。大丈夫、ビギナーでも落ち着いてやれば勝てる相手だ」
「はい! わかりました!」
指示を出したのち、俺は矢を払いながら魔獣の方向へと走る。
(ピリジャー戦で一番気をつけるのは消耗による神経のすり減らしによる油断、いつ襲撃が終わるかは誰にも予測できないからな。早めに片付けてやるか)
すると、視界上部に見慣れない『バー』のようなものが表示されているのに気づく。地球でいうゲージ表示というやつだ。
(……何だこれ……? 土魔術を使ったら出てきた……なにかを知らせてくれているのか? ……もしかすると……まぁ、害はなさそうだし今はいい)
町を守るなんてのは今の俺には柄じゃないが、夢のためには町人を死なせるわけにはいかない。あいつらにはいずれ、俺の『楽園』に来てもらう人材なのだから。
「さて、呪いをばら蒔いたのはどいつか。復讐の復讐を始めるとするか」




