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#020 課金をしよう ~③不審な死体


「ラインさん……どうでしょうか……?」

「まるで獣に(もてあそ)ばれたような傷痕だ……服装から察するに冒険者か何かだろう」


 ソウルがあらかた死体を調べ終え、マインが声を若干震わせながら聞く。

 打ち棄てられたような死体はまだ若い男──マインより数歳くらい上で好青年といった感じの見た目だった。命を灯していたら……の話だが。

 述べた通りに格好は革素材の手足甲、鉄のプレートメイル、下着には鎖帷子。新進気鋭の冒険者であったとソウルは推測する。

 

 だが、その全てが傷だらけで見る影もなくなっていた。装備だけではなく……顔や首、剥き出しになっている肌も全てがまるで拷問でもあっかのように。

 一部は骨すらも剥き出しになり皮膚というものが一切機能していなかった。鋭利な刃物でズタズタに切り裂かれており……辺りが薄暗くなければ凄惨な光景に誰もが目を背けていただろう。


「魔獣にやられた冒険者の方というわけではないんですよね?」

「ああ。魔獣が人を襲うのはマナを取り込むのが目的なんだがこの死体には『器そのものが無くなっている』。取り出されていると言うべきか……魔獣はそこまで器用な真似はしない。ここまで人体を破壊することも(まれ)だ」


 マインも死体を見て疑問を感じていたようでソウルと同じ考えに至っていた。獣型の魔獣に襲われたり、長い激戦のうえ倒れたなど考えられる可能性もなくはなかったが……この死体はそれらではないとソウルはそう直感する。

 それは彼等がここに来る直前にイルナと交わした会話が原因だった。


【「最近、この町の近辺で余所から来た冒険者たちの行方不明者が増加傾向にある、君等ならば心配いらないだろうが……十分気をつけてほしい」】

 

 イルナは二人にそう告げていた。

 無論、危険なダンジョンに入るという冒険者達が多いこの世界の性質上……行方知れずになる奴が多いのはなにも珍しい事ではない。行方がわからなくなった冒険者たちを『地へと魂が還り、新たな(みち)武器(ちから)となった』といって片付けてしまうことも多かった。

 イルナの話によれば行方不明になっているのは決まって新米である石クラスらしく、そこまでならよくある話だと気にも留めていなかっただろう。

 

「その御方は……どうなのでしょうか?」

「身分紋証は身に付けていないようだが、装備からするとこの死体のやつも新人だったんだろうな」

「…………ということは」

「ああ、『何者かが新米狩りをしている』。その可能性が高い」

 

 だが、ソウルの考えは違っていた。

 この死体もその犠牲者だろう……これは人の手によって造られたものだ、と。


 苦悶を訴えるような死に顔、装備品以外は身に付けておらず鑑定のスキルがなければどこの誰かも判然としない。身元がわからないようにするために遊び半分に破壊された体。

 ダンジョンで行方不明にした挙げ句、仮に発見されても被害者の特定を困難にする事で……殺った奴も誰かわからないよう濁らせている。


(俺もイルナの話と……『昨日の女達』に会っていなければ魔獣にやられた線を捨てきれていなかっただろう)


チャキッ……


 ソウルは黒耀剣を取りだし、死体の首に当てた。


「な……なにをされるのですか? ラインさん……」

「このままじゃいずれ魔獣化するかもしれない。【腐者】か【スケルトン】あたりにな。それを防ぐには首を斬り落とすしかない、これ以上……彼の命を(はずか)しめるわけにはいかない。埋葬するからマインは向こうに行っててくれ」

「……お手伝いさせてください。ラインさんだけにそのような辛い事をさせるわけにはいきません、マインも一緒に背負います」

「……そうか」


 クラフトで墓穴を作り、死体を埋めて二人は祈った。

 マインは真剣に、弄ばれた命に想いを馳せ、いつまでも眼を閉じながら両の手を合わせた。

 無論、ソウルもこの犠牲者には同情の念を禁じえなかった。『一歩間違えば自分もこの犠牲者のようになっていたから』だ、と。


「!」


 すると、静かだった空間に足音が響いた。音は空間を抜けた先の通路から聞こえてくるようだ。まだ近距離の反響の仕方ではないが確実に二人の元へ迫っていた。

 ソウルはマインを後方に下がらせ、迎撃の体勢を取る。


「気を抜くなマイン、要塞と違って魔獣とは限らない」

「はい、承知致しております」


 足音は近づき、二人は薄暗い中にその主を視界にうっすらと捉えた。

 魔獣ではなく、人のようだった。だが、その様子は普通ではなかった。

 着ているローブのようなものはボロボロに破れ、肌のほとんどが露出している。長い髪は乱れ、その色白い綺麗な肌とは全く調和していなかった。まるで赤ん坊に無理矢理着せかえられた後の人形のようだ。

 光が完全に人影を照らし現れたのは若い女性だった。その表情は悲壮そのものであり、大粒の涙を後方に流しながら救いを求めるようにソウル達の元へ走ってくる。


 女性は、ソウルを視界に捉えて直ぐに第一声を放った。


「たっ……助けてっ……!! 」


 


 

 

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