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#017 課金をしよう


◇〈宿場町カルデア〉→→〈町外れの洞窟〉


 イルナに町周辺にある『石ランク』向けの狩り場の居場所を聞いたソウルとマインは金を稼いだ翌日、すぐにそこへ向かった。

 初級者を出迎えるように、比較的町から近い場に存在しているダンジョンで道のりに時間も体力も奪われることもなく、二人は徒歩でも簡単に辿り着いた。

 歴史的に説明するならばここはかつて、オーバーワールドでの生活に今や欠かせなくなっている『マナ』の事象(せいれい)【雷】の『電気』という力を含む鉱石『レッドストーン』が採掘されていた鉱山である。


 しかし『電気』の力が人間の必需品となって以来、それらは取り尽くされ廃棄された炭鉱場となった。

 その後は魔獣を産み出すというわけもなく、単にランクの低い魔獣や害獣達の棲み処となっているだけのようだ。


「着きましたね、ソウル様……いえラインさん。こちらで【課金】してその力を確かめるというわけですね」

「あぁ、ビギナー向けなら死ぬような事もないだろう。金や財宝をギルドや宿に置いていくわけにはいかねえからインベントリに収納したままだ。万が一死んだら全て失っちまうからな」


 そう、ネザーで手に入れた物を全て失ってしまう──死んでも五分後に復活できるソウルが唯一恐れているのはそれだった。


(ネザー要塞の魔獣を相手どれた俺達なら魔獣に殺されるようなことはないと思うが……ダンジョンには旧文明の罠や仕掛けがある事も多い。更には他の冒険者達の存在もある……何が起きるかはこの世界じゃあいつだって予測不能だ。そう考えると……確かなセキュリティを誇るような『拠点』と『チェスト(宝箱)』を早いとこ作るべきだな)


 これまで他に誰もいない島での生活を送っていたため、仮宿にそのままアイテムを放っておいても何も心配いらなかった。が、外の世界で確実に信用できるものなど何も無い。住み処を賊や魔獣に荒らされる可能性があるのだ。


(とりあえず安全な『土地購入費』と『拠点を造るための素材費用』も残しておかなきゃならないか……ワヲンには建前で財宝はまだまだあるとは言ったが……全て売り払ってももう5億がいいところだ……土地などの購入費を考えると残り総資産は10億ほど……【課金】がなければ余裕で暮らしていける額なんだが……)

 

 『白銀の羽根』時代に探査や斥候役をやっていた故の処世術なのかアイテムやカネの使用に関して慎重になる癖がソウルを悩ませた。マインに対して好きなだけ使えと言った手前、カネが足りないなんて事態は絶対に避けなければならない──と。


「? どうかされましたか? ソッ、ラインさん」

「……なはは、なんでもねぇさ。さ、入るとしよう」


 先のことを憂慮(ういりょ)していても仕方がないと、不安を振り切るようにソウル達は鉱山洞窟へと足を踏み入れた。


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〈レッドストン鉱山内部〉


 洞窟内部は採掘場であった名残(なごり)からか割と整備されており、マナを含む『樹鉱石』やランタンがなくても明るかった。歩きにくいといった事もなく、ソウルとマインは気楽に会話しながらでも闊歩(かっぽ)できていた。


「大丈夫か? マイン。怖くないか?」

「もちろん平気です。ソウル……ラインさまんと一緒ならばマインは何も怖くなんか…………いえ、やはり怖いです。よろしければ手……手を繋いでいただいてもよろしいでしょうか?」

「あぁ、勿論だ。ほら」


 手を繋ぐとマインは紅くなりながらも微笑んだ。

 

「ラインさんが【課金】で更にお強くなられるのがマインも楽しみで仕方ありません。その力を手に入れた暁には……とうとう【白銀の羽根】のメンバーの情報を探すのですね」

「ああ、ここにはその情報の調査も兼ねてきた。気になる事があってな、もしかしたら『アイツ』の情報を掴めるかもしれない。まぁそう上手くはいかねえだろうが……さ、それよりさっさと【課金】しちまおうか」


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〈鉱石入口通路〉→→〈第一採掘場〉


 通路を進むこと数分、広い場所に出る。積み重なった砂の山、棄てられた採掘道具、そしてトロッコを導くレールとそれに繋がる無数の点在する壁に開けられた穴。さながら中は蟻の巣のような様相だ。


「誰もいませんね……魔獣も……」

「どうやら狩り場としてもここは用済みらしいな、魔獣も狩り尽くされりゃあ冒険者も来ないだろう。ま、まだほんの入口だしな……さ、始めるか」


 ソウルはスキルボックスを視界に拡げる。

 数ある透明の箱と、それを繋ぐ無数のルートはやがて最奥に見える最大の箱へと終結している。

 だが今は、目的の『あの箱』に辿り着くために──その箱と光の道のように繋がっている最初の箱に必要な額のコインを挿入した。


パァァァァァァッ!!


 光の箱は開封と同時に更なる光を耀(かがや)かせ、洞窟全土を照らさんばかりの温かな輝きを以て祝福するかのようにソウルへと降り注いだ。

 どんな効果かを確かめる前に、ソウルは使用予定課金額を次々と箱につぎ込んでいった。



 全部で4800万コインほどを【課金】し終える。課金した光の箱は役目を終えて光が消えたり、更に大きくなったり、色が変わったりと様々ではあったが……感極まった彼の気にはならなかった。


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□{スキル【エンチャント】が使用可能となりました。

□{スキル【アーティファクト作成】が使用可能となりました。

□{スキル【インベントリ】の収納上限数がアップしました。

□{スキル【マナクラフト】が使用可能となりました。

□{スキル【シンザシス】の合成可能素材がプラスされました。

□{スキル【経験値使用】が可能となりました。

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視界のクラフト用ステータスには使用可能になった多くの新たなスキルが表示された。同時にその使用方法、概要がソウルの頭に流れ込んでくる。


 そして──辿り着く、目的の箱へと。


「なはは………ははははははははっ!!!」


 ソウルは目的の箱に課金必要額5000万コインを躊躇(ためら)わず払い、思い描いていた復讐劇の始まりを実感して声高に笑った。


 


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