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魔人さんは動かない  作者: 色川玉彩
エピローグ
32/36

遊園地を作ろう

10万字行きたいけど、あと少しだけど、すこぶるやる気が出ない。

ツイッター➡︎飯倉九郎@E_cla_ss


「して、どうする?」


 半壊し七割近くが崩落したミァン城の、同じく七割近くが欠け落ちた玉座の間に、魔人イヴィドギがふんぞり返っていた。

 その様子は以前と変わらず高慢ちきで、ふてぶてしい。


「どうしましょう?」

「なにも考えがないのか? 共に国を作ろうと言ったのに?」

「考えなしのテンションだけで言いました」

「最低か。貴様人生苦労するタイプだな」

「もうしてます」

「しかし言ったからには責任を取ってもらわねばな」

「頑張ります!」

「気持ちだけは買おう」


 言ってイヴィドギはその椅子をキィと鳴らす。

 イヴィドギはいつもと同じだが、その椅子が以前と違う。

 石造りの立派な玉座と違い、それは木でできた粗末な椅子だ。今にも壊れてしまいそうな程に。


「その椅子、座り心地はどうですか?」

「うむ。最悪だな」

「気遣いを知らないんですか」

「言い訳するか?」

「させてください。初めて作ったんで、改良の余地しかないですね。伸び白ですよ」

「手作りというよりは、その辺の木々を寄せ集めて縛っただけだろう」

「言葉にするとそれだけですが、言葉にできない部分で絶妙な細工が()らしてあるんです」

「貴様は自分の非を認めるということを知らんな。逆に感心するわ」

痴漢(ちかん)冤罪(えんざい)にあったら決して非は認めず、毅然(きぜん)とした態度でその場を去れとテレビで言っていたので」

「なんの話だ」

「痴漢冤罪の話です」

「そんな話はしとらん」


 イヴィドギはゆっくりと立ち上がり、入り口の壁にもたれ掛かるように国を見渡した。

 滅びた国を。


「しかし、どこから始めようか。まずは人が集まらないと、二人ではどうにもならん」

「大丈夫。魚がいます」

「海の中に国を築く気か」

「アトランティスですね。いけますよそれ」

「適当か。海中で生活できる種族は多くない。貴様とて無理であろう」

「浦島太郎でいけたんで、ギリいける気がします」

「だれじゃそいつ」

「異世界漂流者の走りですね」

「貴様の世界の人間はよく異世界に行っているのだな」

「異世界旅行のバーゲンセールですよ。うちは40人ツアーです」

「はた迷惑だ」

「確かに。あ、また変身すれば、海の中でもいけるかも? 試してないですけど」

「また腹を切るのか?」

「そうでした。あれめちゃくちゃ痛かったですからね。変身して誤魔化(ごまか)されてますけど、腹自体はちゃんと切ってますから。痛みに気を失うかと思いましたよ。もう二度とごめんです」

「気を失っていたではないか」

「あれは血を流し過ぎたんです。3日寝たら治りました」

「私に看病させおって」

「え! そうなんですか!? 全然知りませんでしたよ!! ワンモアプリーズ!」

「ではもう一度腹を()け」

「絶対嫌です。今後は魔人さん一人で乗り気ってください」

「なんだ。私を守ってくれないのか?」

「守りますけど」


 けど、のあとは続かない。

 イヴィドギは鼻でくすりと笑う。


「人は、どうすれば集まるのだ」

「前はどうやって集めたんですか?」

「勝手により集まった。(こころざし)同じくする者がいてな」

「じゃあ移住する人を捜してきましょうか」

「魔都と揶揄(やゆ)されるこの地に、移住したい存在がいるか? 一度民が全員死んだ呪われた地に?」

「事故物件ですね、わかります。一度自分が住んでるので、開示義務はなくなります」

「なにか、この国に住みたくなる魅力があればよいのだが」

「魔人さんがいます」

「うむ。それもそうだな」

「あと、魔人さんを好きな物好きがいます」

「それは私が見て楽しむ」

「ん~他にはなにもないですね」

「諦めるのが早いな。他にもあるだろ。星が綺麗とか、海が綺麗とか」

「文明的でないこの世界だと、自然は観光資源になりませんからねー。お、じゃあ肝試しツアーとか開きませんか? 題して、死人の洋館。部屋のあちこちには死に抵抗した爪痕(つめあと)と、大量の血がこびりつき、無念にも死にさらした美少女の亡霊が」

「不謹慎にもほどがある。たまに貴様の神経を疑う時がある」

「使えるものは使わないと」

「もはやサイコパスだな。思いついた。フカと遊泳できる、とか?」

「嫌ですって。その度に腹切って変身しなきゃいけないじゃないですか。こないだ我が物顔で海入ったら普通にあいつらに襲われましたからね。変身してないと意思疏通できないんです」

「腹を切ればいい。減るもんじゃあるまいし」

「あの痛み、絶対寿命減ってますから。ていうか死んでますからあれ」

「また看病してやるぞ」

「魅惑的なお誘いですが、あれだけは勘弁です」

「では代替案を出せ。否定だけなら誰でもできる」

「えー。えっと、そうだ、あれだ、遊園地作りましょう」

「ユウエンチ? なんだそれは」

「テーマパークですよ。アトラクションとか、着ぐるみとか、レストランとか、お土産売り場とか、いろいろあるとこです」

「遊ぶところか」

「そうですね。そこに入場すれば、普段の生活では味わえない非日常の世界に連れていってあげるんです。ショーやパレードも人気が出ます」

「ユウエンチか……なるほど。それは面白いかもしれんな。それで、民はなんの仕事に従事するのだ?」

「民ではなく、キャストですね。一緒に園内で働いてもらいます。用具やアトラクションの管理とか、お客さんの案内とか、あとは園内の食事の提供とか」

「ほう。ではそのアトラクションとやらは誰が作るのだ?」

「任せてください。手作りには自信があります」

「……食事はどうする?」

「それも任せてください。()でるのは得意です」

「そのショーやらダンスやらは?」

「練習しましょう」

「つまるところ、どれも一から考えねばならんのだな?」

「国をひとつ作るってそんなに簡単なことじゃないんですよ!?」

「それは私の台詞(せりふ)ではないか?」


 今度は呆れたように息を吐き、


「結局、ユウエンチとやらを作るための人手は必要なわけだな」

「まあそこは二人でこつこつやっていきましょう。それもきっと楽しいですよ」

「……そうだな。そもそも、まずは壊れた町を綺麗にせねば」


 するとその時、遠い広野の向こうから、なにかが近づいて来るのが見えた。

 一瞬警戒を見せたイヴィドギだったが、近づいてくるそれが一台の馬車だとわかると警戒を解いた。

 そして側まで寄ってきたその馬車を注視すると、


「あ!」


 気づいたように七海が声をあげた。


「サンドイッチ屋さん!」


 それはソーラスで七海が初めて声を掛けた相手。

 象のような長い鼻を持った亜人だ。


「ハイ」


 いつものようにそう片言で言って、その亜人は馬車を降りた。


「なんじゃ貴様は?」

「その人はこの国を求めて来たのだそうよ」


 答えたのは、その亜人ではなかった。

 それは第三者の声――。

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