騙された
令和ももう馴染んだ。早い。
ツイッター➡︎飯倉九郎@E_cla_ss
店の外に出ても、賑やかな様相は変わってはいなかった。
むしろ、みな先程よりも愉快な表情に見える。
そう言われれば祭りなんかも夜の方が盛り上がるな、と思い至り、すぐに行ったことないけど、と自嘲する。
人混みを掻き分けてあの象の亜人が営むサンドイッチ店へと向かったが、しかしそこにはもうあの店はなかった。移動してしまったのだろうか。
周囲を見渡す。
軽快なリズムを奏でる音楽。
幻想的な光に包まれた街。
楽しそうに踊る人々。
だが七海が行くべきところなど、特にはない。
七海が話しかけるべき相手など、ここにはいない。
「帰ろ」
先程までの高揚感が一瞬にして沈んでしまった。
祭りというものは、誰かと楽しむものだとつくづく思い知った。
とぼとぼと歩き人混みを抜ける。繁華街から住宅街へと入り、七海に与えられた高層マンションが見えてきた。
と、その先を先ほど酒場で出会った大男とその友人らしきが歩いているのが見えた。彼らは喧騒から離れていく。その顔は先ほどのお酒を飲み緩みまくった表情とは違っている。
まるで今から強盗にでも入りそうに真剣な顔だ。
なんとなく気になって後をつける。
彼らはソーラスへの入り口となる門の傍にあった馬舎へと入っていく。そして少しすると中から馬にまたがった二人が飛び出てきて、街の外へと駆け抜けていった。
その背には巨大な武具を携えていた。
七海はそこにいた門番らしきに駆け寄り訪ねる。
「あの。今の人たちはどこに行ったんですか?」
「君は?」
「ファラさんの友達です」
「ファラ隊長に友達なんていたっけか?」
門番はもう一人の門番と顔を見合わせるが、もう片方も知らないな、という風に肩をすくめた。
「あいつらは、集合時間を間違えていたアホどもだよ」
門番は馬で走り去っていく二人を顎で指して言った。
「集合時間?」
「そ。北への進軍だよ」
「北……それって」
「ああ。魔都ミァンだ。少し前にアナム女王自ら率いた魔人討伐軍が出たところさ。あいつらはそれを追っかけたんだ」
「魔人、討伐」
「新しい兵器が導入されるらしくてな。それならあの魔人も滅することができるらしい。これでこの世界にも安寧が……って」
門番がもう一度顔を向けたとき、そこに七海の姿はなかった。
「あれ?」




