ソーラス
どうやったら集中力って増すのだろう。
ツイッター➡︎飯倉九郎@E_cla_ss
目を覚ますと、そこは真っ白な部屋だった。
天井は高い。10畳ほどのスペースだろうか。真四角で、周囲の三辺が腰を下ろせるように椅子になっている。
だがそれ以外本当に何もない。
「えーっと」
自分の置かれた状況に理解が及ばず、声を漏らす。
すると、ある一辺にあった小窓が音を立てて開いた。
その奥からは、見知った顔が現れる。
「ファラさん?」
「目を覚ましたわね」
「あれ? ここは……今どういう状況ですか?」
「説明するわ。来て」
言われるがままにそちらに向かうと、扉が縦に開く。
恐る恐る外に出ると、そこは廊下だ。なんて茫然としていると、かしゃり、と首に何かをまかれた。
「え?」
首輪だ。冷たい武骨な鉄で作られた首輪がつき、その先から鎖が伸びている。
そしてその先には、ファラ。
「これは?」
「仕返し」
ニコリと笑われ、ぐっと引っ張られる。
抵抗する余地もなく引っ張られるように廊下を進むと、先から激しい轟音が鳴り響いてきた。
次第にそれは明確になる。
廊下を抜けた先に広がっていたのは、巨大な滝だった。
高く上空から降り注ぐ水が、吹き抜けの廊下を掠めるように下へと流れ、遙か下では海がそれを受け止めていた。
「ここがソーラス帝国よ」
「ここが……」
とてつもなく広い建物の一部にいることはわかる。
おそらく地下まで長く伸びた建造物の下層部にいるのだろう。
「いつの間にこんなところに……」
「木に縛り付けた程度なら簡単に壊せるわ。私を甘く見たわね」
「ゴリラだ。B型でしょう」
「状況が変わってもその感じは変わらないのね……普通慌てふためくのだと思うけど」
「自分を持ってるので」
「とにかく、拘束を外した後、貴方を眠らせてここまで運んできたのよ」
「え、でもソーラスまで馬で半日ですよね? さすがにそこまで寝坊助さんじゃないですよ」
「催眠効果のある香を焚いていたからね。それを定期的に嗅がせれば目を覚ますことは無いの。幸いあの国はそういった薬草が自生してたから、使わせてもらったわ」
どんつきまで行くと、そこでファラは立ち止まった。するとその正面の壁が開き、ファラは中に入って行く。
先ほどよりも数倍小さい真四角の部屋。
するとその部屋が動き出した。それは七海も慣れ親しんだ感覚だ。
「エレベーター……あるんですね」
「ミァンは小国も小国。貧しいが故に旧時代的な生活を余儀なくされている。まさかあの国がこの世界の標準だと思ったのかしら? だったらごめんなさい」
「中世ヨーロッパ的な文明レベルかと。って言っても僕もよく知らないんですけど」
「それがどこかはわからないけど、ソーラスは世界でも随一の科学が発展した国。世界一文明が進んでいるといってもいいわ。ここ数年では未知の領域だったフォトンの研究も進んでいて、一気に生活レベルが発展したわ。このフォトンリフトもその一つ」
十階程度は上がっただろうか。
エレベーターはそこで止まり、 扉が開く。
「おお」
つい感嘆の声が漏れ出た。
扉の先に広がるのは、白い建造物が立ち並ぶ壮大な光景。真ん中にぽっかり開いた巨大な穴には四方から滝が流れ込んでいて、穴の周囲に街が発展しているようだ。見下ろす街には色とりどりな服を来た人々があちこちを行きかっている。
「お~……正直、異世界舐めてました」
「こっちよ」
首輪を引っ張られ、一瞬息が止まる。
どうやら大人しく観光をさせてくれるわけではなさそうだ。
「あの、この首輪、痛いんですけど」
「私も痛かったわ」
「いや、あれはそうしないと危険だったから」
「貴方が危険じゃないという証拠は?」
「成績表の後ろに、先生から『七海君は優しい子です』って必ず書かれます」
「それは誉めるところがないからでしょう」
「なんだって……そうだったのか……」
今気づいたらしい衝撃の事実に、七海は驚きを隠せなかった。
そんな会話をしていると、警備の兵士が二人立つ荘厳な白い扉の前へと誘われた。
ファラがその扉を開けて中に入り、七海も中へと誘われる。
「ようこそ。異界の者よ」
広く真っ白な部屋に、老齢な女性の声が響き渡る。
部屋の奥、その中央には白いローブを纏った白髪交じりの女性が鎮座して七海を見つめていた。




